MISSION 3 :ぶっちゃけ状況は最悪である









 傭兵系美少女な私こと大鳥ホノカちゃんwith新人傭兵ちゃん生き残り4人組+歴戦お婆ちゃんeX-W乗り3人集、というなんとも濃いメンツは今!



 自ら青い重逆eX-Wを操る領主様に連れられて、やってきたのは!



「野戦基地ってヤツかねコレ?」



 広場に、MWが無数に、トラックにテント!

 人、メカ、混然。そんな場所。



<地上誘導兵>

『eX-Wはマーカー七番へ移動してくれ!!

 ルート情報に気をつけろ!ようやく通常戦力が出るんだ!!ブーストは蒸すなよ!?』


 りょーかーい、って返事しながら、オルニメガロニクスをガシャガシャ道路を4つの足で移動移動させる私〜。


 そんな脇を通る、通常戦力『マシンウォーカーMW』、2脚型で頭が胴体に埋まってるようなヤツ達。


 ────腕とか脚だけ塗装が違ったり、片側の装甲だけ激しく削れたその姿。


 つぎはぎ。


 そんな印象を通りすがりに受けた。




<カモメ>

『ホノカさんお待たせしました!

 オルニメガロニクスへの補給を開始しますね』



 とまぁ、上からやってきたカモメちゃんのいつもの大型ヘリが機体の後ろに降下してくれる。


 まずは‪……‬一回機体をでて補給でもしますかね、手短に。









「────おェェェ‪……‬!!うぅ、ヒグッ‪……‬もうヤダァ‪……‬!!」



 弾薬用の3Dプリント液を入れてたら、近くですんごいオエオエ吐いては泣いてる声が響いていたのであった。


 チラッとそっちを見たら、派手で明るい青と黄色の1001Bの前で、ゲーゲー吐いている女の子と背中をさするお友達っぽい子の姿があったのだった。



「‪……‬おーい!生きてたら返事してー!」



 とりあえず声をかけてみたところ、吐いてる黒髪に青メッシュなんていう派手な髪の子と、背中さすってた小柄なちょっと地毛ブラウンなお団子ヘアーの子がこっちを向く。


「あ、あんた誰‪……‬」


「そこの4脚ことオルニメガロニクス乗ってた傭兵系な美少女でーす」


「自分で言うんですか!?

 というかおっぱいおっきい‪……‬」


 うん、まさかの自分で言っちゃうしー。

 いや私がおっぱいデカいのは事実だけどねお団子ヘアーちゃん。


「というか、そこの派手な髪色の子は随分ゲーゲー吐くねぇ。お昼食べ過ぎじゃない?」


「仕方ないじゃん!

 あんな、あんな怖い目に遭ったんだもん!!」


「いや悪いって言ってないから安心しなよ。

 ただアレ、未強化だと吐きやすいらしいしさ、ほれスポドリあげるから落ち着きなさいな」


 とりあえず、私のまだ封を開けてないスポドリをあげておこう。


「‪……‬‪……‬うぅ‪……‬あざます‪……‬」


 意外と可愛いちびちび飲む姿が、逆にそのギャルちゃんがものすごく『消耗している感』を私に感じさせてきた。

 震えてるし、今もチワワみたいに。





 これが普通か。

 逆に私って、こんな震えてたっけ最初は?

 ‪……‬‪……‬思い出せないぐらい、こんな場所が日常になってる。




 パァン!キュンキュンッ!


「ひっ!?」


「今の近い!?」


 近かったけどまぁ会えてるほどじゃない砲の音。

 いや、普通はこのぐらい怯えるか‪……‬



「弾薬の補充、アセン変更、全部早くしないとなぁ」


「な、なんでそんなのんびりした感じで言えるんです!?

 いまものすごく近いところに落ちたんですよ、攻撃が!?」


「いやいや、慌てて出てもやられるだけだっておチビちゃんや。

 まずは、機体を弄らないと。パーツ使っていいらしいしね?」


「おチビちゃ‪……‬!?

 これでももう、高校卒業してますッ!!

 18歳です!!」



 ‪……‬え?


「3つも年上??」


 このお団子ヘアーちゃん、こんなぷにぷにほっぺの可愛い顔とちっちゃい背で、お団子ヘアーお姉さん??キリィちゃんとタメ??


「3つ‪……‬!?

 まってアンタいくつだし!?」


「え、15で‪……‬もうちょっとしたら16?」


「いっこ下ァ!?そのおっぱいで一個下ぁ!?」


 まってギャルちゃんもギャルお姉さん??

 歳上後輩??

 あと二人揃ってぽよぽよすんのかーい、もう慣れたけどさー!

 同棲すら羨むかこの膨らみは‪……なんならまだ成長期なのに。



「────ちょっと!そこの人ら、危ないよ!!」



 と、なにやら大声を出しながら誰かが走ってきたんだけ───────



「「「うぉデッカ!?」」」



 私と同じタイプのパイロットスーツの、私と同じぐらい胸の薄いけど頑丈なプレートアーマーが浮かんでるし、私と同じぐらいバルンバルン揺らす子がやってきた!!



「はぁ、どこ見てんのs‪……‬うわ、デッカ!?」


「そっちもでっかいよ!」


「いやアンタもデカいでしょ!?」


「「‪……‬‪……‬デッカ‪……‬」」


 つい、お互い片手でお互いのデッカいのを持ち上げて‪……‬すげぇ、他人と思えない重量感‪……‬!!



「‪……‬ハッ!

 じゃなくて、良い加減に皆真面目に機体構築しなよ!!

 周りがもうしっちゃかめっちゃかなの分かってるの!?」


 あらためて、ボブカットなオッパイでっかい子は大声でそう言い放つのだった。


「そうしたいけど、このギャルちゃんに深呼吸ぐらいはさせなよ。

 頭働かないと、この先生き残れないぜ?」


「まって、まだ戦うの!?もう嫌なんだけどあーし!!」


「まだ依頼終わってないんだよ、ギャル子ちゃんや」


「ギャル子っていうなし!!ハルナだしあーし!!

 てか歳下なのに指図す───」


「───なら同い年ぐらいだったら指図して言い訳なのね‪……‬!?」



 と、カリャリと中々嫌〜〜な音と一緒に、あのボインボインちゃんの横から、黒光りする銃口が生えてきた。


「ひっ!?」


「マジか!?」


 見ると、めっちゃ震えた手と目が座った感じの笑みを浮かべた、典型的な委員長みたいなメガネの三つ編みの子がいた。そんな手で銃を持って欲しくなーい。


「アンタ!?」


「ちゃんと顔を合わせて名乗るのは初めてねみんな‪……‬!

 私は、派手じゃない方の青い機体にいた、三枝フミカよ‪……‬うふふ、こんな状況だけどよろしくね」


「ま、まって‪……‬何で銃を‪……‬!?」


「逃さないって言ってるのよ!!

 アンタたちが逃亡したら、私が死ぬ確率が上がるじゃない!!!」


 カチカチ、ってもう何度か引き金引いてる。

 安全装置外してないの誰も気づいてないけど‪……‬黙っておこう。


「ハァ!?!?!じゃあアンタのために死ねって事!?!」


「私は死ぬわけには行かないのよ!!でも逃げることもできない!!!

 お金がいるの‪……‬沢山のお金が!!!


 そうよ、こんなクソみたいな場所に来たのも!!

 学校を中退したのもお金のためよ!!!」


 肩で息を切らして、そう撃てない銃を周りに向けて叫ぶ。


「そんなの関係ないし!!あーしは知らない!!

 聞きたくない!!!もう嫌!!」


「‪……‬ええと、ハルナちゃんだっけ?

 関係はあるし、もう知っちゃったじゃん。

 諦めて、任務果たす以外道は無いよもう」


「はぁ!?!アンタこの頭のおかしくなったメガネ根暗女に同意するわけ!?」


「じゃあ、頭がおかしくなる戦場に来たのはなんでかな?ハールナちゃーん♪」


 は、と言うギャル子改めハルナちゃんの方を見て、まずはゆっくり私は口を開く。


「そこのお団子ヘアーのチビお姉さんも、

 そこのおっきなオッパイの子も、」


「アンタが言う?」


「言うさ。このおっぱい割と自慢な私も、傭兵の世界に踏み入れた理由なんて、大半がお金絡み。

 なにかしら首が回らなくてここに来てる。

 つまり、撃ったことない銃口突きつけてるそこの委員長っぽい人‪……‬フミカちゃんだっけ?


 言ってることは、狂ってるけど正しい。

 人数減ったところで報酬が上がるわけじゃないんだ‪……‬人がいた方がリスク少なく、任務がこなせる」



 ハァ、とまさかの銃持ってる本人までそんな声を出す。



「この仕事は、生きて金稼いで黒字だったら大正義。

 死線の先に金がある。莫大なね。

 狂った場所が嫌ならいいさ。

 抜け出すにもお金がいる。


 知ってるかい?この傭兵試験、途中リタイアは死ぬしかない。

 そして、試験という名の戦場を生き抜いたら、傭兵の足抜けには500万cnかかる」


 は、と今初めて知りましたけどって顔。

 アレ言ってなかったっけ?言ったけど忘れちゃうか。


「つまり、悲しいけど選択肢は二つ。

 死ぬか、依頼をこなして地獄を生きるか。

 私、もう直ぐ誕生日になるまでに、色々やばい任務こなした1年だったけど、大体今日のレベルが普通の難易度の依頼で、200か、少なくとも150こなしたけど‪……‬

 まだ、500万までちょっと遠いな」


 はっはー、って笑った瞬間、あのお団子ヘアーチビ姉さんがへたり込む。


「そんな‪……‬私、ただ就職をミスってここに来ただけなのに‪……‬!

 あは、あは‪……‬!大学には入れなかっただけなのに‪……‬!」


「‪……‬あ、あ‪……‬!!



 ああああああああああァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!?!!!??



 ふざけんなしィィィィィィィ!!!


 あーしだって!!!ただ家出して、お金欲しかったから、簡単にお金手に入る仕事って来ただけだしィィィィィィィッ!!!


 知らなかった!!!!知らなかっただけだしィィィィィィィ!!!!


 許して、許してぇ‪……‬!!!!」



 そして頭を抱えて泣き叫ぶハルナちゃん。



「‪……‬ぷっ、あは、あはは‪……‬!!

 なによ‪……‬じゃあまだ私の方がマシじゃない‪……‬あはははは‪……‬!」


 と、あのフミカちゃんが笑い出す。


「‪……‬家族の事業が失敗して‪……‬お先真っ暗、莫大な借金‪……‬

 あはは、ならまだ返すために、私が体売るのは間違いじゃないのね‪……‬」


「ヤダァ!!!あーしそんな理由ないもん!!!

 ねぇ、なんとかならないの!?!なんかもっと楽な方法は‪……‬」




「聞いたよね、アンタ。

 無いって、そこの人は言ってんだよ」




 と、あのおっぱいデカい子が口を開く。



「‪……‬‪……‬‪……‬私は、今心の底から戦う理由ができた」


 と、俯いていたおっぱいデカい子が顔を上げる。

 ‪……‬ちょっと涙が流れていた。


「ねぇ、アンタ‪……‬そこのベテラン傭兵のアンタ、名前は?」


「言ったじゃん、大鳥ホノカ」


「顔合わせては初めてだよ。私が如月ミコト。

 アンタ地獄に慣れてるって話だけど、何年戦ってるの?」


「1年」


「あっそ‪……‬で、歳下先輩さん。実際どうなの勝てるの?」


「さぁね。

 なんせ、報酬は2倍、弾薬費持ち、武器も貰える。

 割りのいい仕事に見える依頼は、大抵が悲惨なんだよね」




「────流石はランク9。史上最速で1ケタまで傭兵のランクを上げた天才の分析ですよ。嫌味にもならないほどの完璧な推測です」




 と‪……‬‪……‬またおっぱいでっか!?

 おっと、つまり水色の傷だらけのパイスーのオッパイでっかい女の人が歩いてきたのだ。


 削れた紫陽花のエンブレムがそのおっきなおっぱいで押し出されてるプレートアーマーに書いてある。



「‪……‬その色とエンブレム、あの逆脚の領主様で?」



「その通り。

 私がヴィオラ・ハンナヴァルト7世。あなたの依頼主です」



 す、とそのお姉さんに片手を差し出される。

 握手を返すと、深々と頭を下げてくる。



「正直、割に合わない依頼をしている自覚はあります。

 それでもよく受けてくれました‪……‬感謝を」


「‪……‬感謝は、依頼料で表してくれれば良いよ。

 でもまぁ、なら教えて欲しいんだけど、



 ────インペリアルのeX-W部隊、いったいどこに行ったの?」



 やっぱりというか、すごい苦虫を潰した顔になる領主様。



「‪……‬‪……‬壊滅です」


「‪……‬なににやられたか聞くべき?」


「‪……‬そうね、今も信じられない。

 たった「1機」に翻弄された事実を」



 え、今なんて!?


 たった、1機!?




「‪……‬‪……‬数日前の戦いでこちらの損害が多かったのも事実です。

 ですが、それでも立て直しを図るだけの余裕はまだありました。

 ですがそれも‪……‬今朝現れた一機の敵が‪……‬!!」



 いやはや‪……‬通常戦力であるMWもツギハギだらけだったけど、じゃあeX-Wほぼ見かけないのは‪……‬!



「‪……‬パーツをくれるってのも、まさかもう使う人間が‪……‬?」



「‪……‬‪……‬後想像通りです‪……‬!!!」



 まさかそんな!?

 正規軍のeX-W乗りが、壊滅!?

 いやもはや消滅じゃないかそれ!!」



「‪……‬‪……‬で、敵は?」


「また来るはずです。

 ‪……‬‪……‬今すぐにでも」







『どうも今すぐって今みたいよ?』





 と、パイスーの無線機に聞こえる私の義妹のルキちゃんの声!



「ちょっとルキちゃん、思考盗み聞き?」


『悪かったわね、シンギュラ・デザインドの力なの。


 それより上!!来るわよ!』





 ビュン、と風が通り過ぎる。

 周りのみんなが悲鳴を上げる中、私は通り過ぎた風の正体を見ていて。



 まるで、天使のガイコツ。

 そんな感じがするほど細い、四脚型機動兵器が4つの脚のブースターを蒸せて空を対空していた。


 天使のガイコツって言いたくなるような、光る輪っかの二つの目を持った頭部がこちらにカメラアイを向けてくる。




「まだ用意もできてないんだけど、最悪な状況じゃない?」



 多分これ、



 2秒後死ぬかも。






          ***

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