[変更済]MISSION RESULT : これでまだ着かない目的地
ごぼぼぼぼ、ごぼ、ごぼごぼ
いや冗談抜きで、今なんかの液体に浸けられてる傭兵系美少女の大鳥ホノカちゃんです。
脳と女の子の臓器とかぐらいしか残ってない強化ボディ、それがまぁ片腕に片方の顔も吹き飛んで大変アレな状態です。
あれから、2時間。
私はこのカプセルの中で安静にしていたところ、この潜水輸送艦は別の船────こちらがある意味本命な潜水艦と横付けして通路をつなげたのです。
そんな訳でカプセルごと運ばれて……
『わー、悪の組織に改造されるー』
《大昔も手術中そんなこと言うやついたよ》
胴体も首と切り離されて、人工毛髪も抜かれた頭を謎の液体の中で機器のマニピュレーターで修復中。
久々に、私
『でもさー、コトリちゃん。マジでありがとうね。
人間辞めるのは躊躇いあったけど、強化手術してなきゃ確実に死んでたよ……』
《出来れば、もっと別の形でお礼言われたかったって前も言った気がするよ。
アレ、こっちの船に乗ってるO.W.S.の医師にも言ってるけど、次は負けないように調整してくれるって》
脳は外と繋がってるので、いや便利ね本当……ともかくコトリちゃんとは会話できたので、まぁ手術中やること少ないし、麻酔で寝るわけにもちょっと行かないらしいので話してる。
はぁ…………丁度いいかな。一人でいたらなんかさって気分だし。
『…………正直さ、今回はものすごく怖かったよ。
忘れてたよ、この仕事が命懸けだって言うの』
コトリちゃんには言っておこう。今日感じたこと。
『私がすぐそこで、おばあちゃんにじいちゃんの顔まで見えたよ。
来ちゃうのか、って頭抱えてた』
《…………心中察するよ。経験あるし》
『生きてた頃?
…………ねぇ、コトリちゃん前に、死ぬとき悔いはなかったって言ってたけど……本当に怖くなかった?』
ちょっと、あの小さな先輩に聞きたくなってしまった。
《…………最後だけだよ。私は今日の君みたいに追い詰められた時は、舌打ちするし口悪くなるし、なんなら妹とお父さんにお母さん、家族の顔浮かんだよ。
ついでに言えば、憧れの先輩はやっちまったなお前って顔してたよ三途の川の先で。
機械化された記憶の不便なところなのか、それとも脳の奥にあって消えたはずの魂の残り滓の中にあったのか、全部覚えてる。
嫌だよね、死にかけるの。
死にたく無いよ、そりゃあね》
『…………そっか…………』
全く……その通りだ。
死にたく無い。でも殺してくるから殺すために戦う。
そして、そんな戦場が嫌だからこそ、戦場を離れるための金を戦場で稼ぐ。
私は、高尚な理由で戦ってなんかいない。
根底は、なんてカッコつけて言ってみるけど、要するに戦いから早く遠ざかりたい。
────恐怖だ。あんな殺す気のまま向かってくる敵達が。
《……いいじゃ無いか。恐怖を知らないイノシシじゃないだけさ。
…………でももうeX-Wに乗りたく無いかい?》
『…………それがさ、恐怖だけだったら良かったんだけど……変な感じでさ……』
私の心にはもう一つ、恐怖と同じぐらい大きな感情がある。
自分でも意外なんだけどさー……
『…………次は勝ちたいな……
負けっぱなしだと、ちょっと気分悪いよ』
…………悔しいんだよね。
結局、私が倒しましたって言えるの、一機だけ。
ハロウィンスコードロンとか言うみなさんは……強かったよ。
でも、勝てたかもしれないとか、怖かったから2度と会いたくないって感情と同じぐらい湧き上がってくる。
《…………じゃあ、まだ戦いを続けるんだね》
『じゃなきゃ、辞めるに辞められないでしょ。
ダラダラ続けるのが一番ダメなんだよ……怖いなら、さっさと終わらせたいんだ。
まだ、2機残ってる』
────私の身体の、修復が終わった。
例の謎の液体が引いて、私はフグみたく口から肺とかに溜まってたその水を出して、カプセルから出る。
なくなった腕もすぐ元通り!
なーんか、たしかに強化前の身体の方が治りにくいって言う点もあって、結局便利さは上だなぁ……複雑な気持ち。
なんて思ってたら、隣からそっと差し出されるタオル。
見るといつもの優秀アンドロイドちゃんの顔!
「ありがとうカモメちゃん。
もしかしてずっといた?」
「はい。ちょっと、コトリさんとの会話に割り込みするのも躊躇ってしまって」
《遠慮しないでよねって思うけどね》
「同感」
カモメちゃんの左肩に、コアラみたいに掴まるヒナちゃんの言う通りだよ。
別に、カモメちゃんが遠慮する理由なんてなし!
もう長い付き合いなんだしさ……
「先ほどの戦闘は、オペレーターとして力を発揮できずごめんなさい。
やはり、上空から至近距離で見る必要がありますので……」
「ヘリが出せないししょうがないじゃん。
通信機も届きにくい範囲だし」
「……かつては、衛星軌道上に我々が使える人工衛星があったそうですが、もはやそれも敵の物ですから……」
あー、歴史で習ったなー。
昔は、じーぴーえす?っていうのなんかがあって、道に迷うことも少なかったって……300年前の話だけどさー。
「ま、次戦う相手、ハロウィンスコードロンの残り二人が基本だろうし。
流石に、もう相手の増援来ても大丈────」
「ハロウィンスコードロンは一人も欠けていません」
………………
……え?
「カモメちゃん?」
「……ハロウィンスコードロンの『正体』は本来トラスト内部以外は話せませんが、すでにこの作戦に参加しているホノカさんは機密事項開示の権利があります。
故に、教えておかなければいけませんが、
ハロウィンスコードロンは、誰も死んでおりません。
いえ、そもそも機体を破壊した程度で彼女達は死ぬことなどあり得ません」
「何を……?」
体拭きながら聞く話じゃ無いけど……どう言うこと?
「…………ホノカさん、自立兵器、と我々が読んでいる存在、
その正体が彼女達の不死性と関係しているのです」
「ますます意味わかんないけど?」
《話すのか。今、ここで?》
「……コトリちゃんまでなにさ。
一体何を話していなかったワケ?」
ま、難しすぎて理解できないからって理由かなとは思うけど。
「……自立兵器。人類から自立した自我を持った兵器達。
そんなの嘘です。彼らは自立してもいなければ、そもそも本来の自律制御された兵器ですら無い。
その正体は、この火星の『
人というある環境にしか適応できない身体を捨てた、人類そのものなのです」
「…………」
…………いや、いやいやいやいや、まって?
「まるで意味がわかんないんだけど?」
じゃあ何?最近ご無沙汰だけど、あの虫みたいな機械とか、そういうのって……
私たちと同じ人間?今そう言った?
《身体は人間じゃないさ。
でもまさか…………PLシステムみたいなのを自力で開発して、そんな使い方するだなんてさ》
あ。
いたね……すぐ近くに、元人間のロボちゃんが。
「じゃあ……私が、さっき倒したのって……!?」
「…………姿は人ですよ。そういうボディなのです。
潜り込むのは分かっていましたし、あえて今までずっと彼女達には潜入を許していました。
おかげで目的も、今回の事態も、今のところはトラストと、オーダーの予想通りです」
「なんでオーダーの名前が?」
「…………かの『オーダー』の管理者の正体も、自立兵器とよぶ物と同じだからですよ。
元は、あの存在たちから離反した者……と言う立場です」
「…………」
嘘じゃないのはわかるけど、だいぶ混乱してきた。
一体……何が起こっているの?
「…………ホノカさん、私たちの任務は何も変わってはいません。
ユニオンと、その提携先となった自立兵器群より先に、
ここまでは分かりますね?」
「うん……」
「その上で、重要なのは敵となったハロウィンスコードロン。
彼女達は、まだ生きている。
4機とも生きているんです」
「…………そこだけ覚えれば充分ってことか。
そこが一番嫌な情報だなぁ……」
要するにこうだ。
まだ、アイツらと死闘を繰り広げる必要が……あるってこと。
…………難しい話はわかんないし、分かる話は分かりたくない話だな……!
***
─────ユニオン部隊を運ぶ、トラスト所属
『────我々、ユニオンには自由を勝ち取る義務がある!
諸君、この戦いのダメージは決して浅くはないが────』
「演説だけは勇ましいんだよなぁ。
オイ、一等航海士くんどう思う?」
「そうですね。昼寝のBGMにはちょうどいい」
「たしかに」
艦長であるエドワードは、部下にそんな軽口を叩きながら、目的の場所へ辿り着く。
空母自慢のガレージの前には───なんどか戦った事もある虫のような自立兵器が少しと、目的の女性達が二人いた。
「こっぴどくやられたみたいだな。
しかし、雇われどうしの潰し合いか。世の中世知辛いと思わないかね?」
「───手加減してないで良く言うよな。
艦長、アンタら人間の悪い所の全部乗せセットってやつだよ。涼しい顔でアタシらをぶつけるのに動いた辺りは、まさに冷血ってやつだ」
一人、一瞬小学生か、中学生のような背丈の目つきが悪い少女が、口の悪い言葉でそう評価する。
悪くない。とはエドワード談である彼女が、ウィル・オ・ウィスプ。
八式武蔵フレームベースの狙撃型『ジャック・オー・ランタン』を操る
「あいにく、傭兵なんぞそいうもんだ。
金さえ払えば、親兄弟でも殺し合うのだよ。
まぁ、まともな死に方はできんねぇ」
「死んじゃわないようにわたしたちみたいになったらー?
面倒なことならないよー?」
と、近くでこれまたベイビィフェイスに似合わない大きな物を胸にぶら下げた少女が適当に置いたソファーに寝転んでいる。
身体がいい。というのがエドワード評価の彼女が、フランシィ。重火力重量2脚の『フリッケライモンスター』を操る
「まぁ、今の生活が嫌になったら頼ろうか。
それより、『復活の儀式』は順調かね、
へ、とウィルが鼻を鳴らすと、何か作業をしていた自立兵器が退く。
棺桶に似たケースに横たわる女性が二人。
黒髪ロングに健康的な肌のと、白髪ショートにやや白い肌の、計二人。
役得な裸に、男としてエドワードは手を合わせて祈った。最高のボディであった。
「わざわざ、手まで合わせてくれるとは信心深いんだな」
「神は必要さ。感謝したい時とギャンブルで負けている時は特に」
「……アタシら『クラウド』は、祈って届くのか分かんないけどな」
自立兵器が、横たわる二人のこめかみにマニピュレーターを触れさせ何か放電のようなものを一瞬放つ。
「──ハッ!?」
「!?!」
途端、跳ね上がるように起きて、息を荒げて自分を見る。
「お目覚めかね?」
そして、エドワードを見た瞬間、当然殴った。
裸を見た代金には充分だ、とそのまま笑ってエドワードは意識を失うのだった。
「…………ウィル。私はどのぐらい死んでいた?」
「6時間だ、ジェーン」
黒髪ロングの女性───ジェーン・ドゥの質問に答えながら、ウィルは服を渡した。
「そうか……久々だな、リセットするのは。
200年近くこんなことは無かった」
「私もです、ジェーン。
いの一番にやられてしまうとは、情けない話ですね」
隣で同じくウィルから服を受け取る白髪ショートの女性───エリザ・Bはそう謝罪を口にする。
「あの鳥のフロートの子強かったよねー?
なーんか、戦いたくないなー……面倒臭そう」
「ハッ!マグレだマグレ!
次はキッチリこのアタシが殺してやるよ、あんなラッキー女」
「侮るな、ウィル。ソイツを仕留めきれなかった私はじゃあなんだという話じゃないか」
「アンタも調子が悪かっただけだろ。
次はそうもいかないさ、なんせ全員アイツとの情報は共有してるんだろ」
たしかに、とジェーンは、いやこの場のハロウィンスコードロン全員は、頭の中の各々の『大鳥ホノカと戦った記憶』を共有した映像を思い浮かべる。
「……いや、やはり強い。
次は確実に潰しておかねばな。
…………それでも、勝てるかどうか」
「随分買うなアンタも。
アイツに何を感じた?」
ふむ、ジェーンは考える。
「…………私は、『クラウド』の総意に違を唱えるつもりはないが、
それでも、ひとつだけ、
共有され、電子化した人格をいくら共有しようとも、ひとつだけ認めたくはないことがある」
「またか……いるわけないだろ、『イレギュラー』なんてものが。
1/250万の確率で?異常に戦闘が上手い生物が生まれる????
ありえないだろ……信じてるのは、トラストの一部だけだろ、そんな都市伝説」
「いないならいないと証明したい。
私は、戦いたいんだ。
本物のイレギュラーと」
「もしいたとして、あの雑魚がそれだって言いたいのかよ?」
「分からないが……どのみち再戦する筈だ。
近いうちに……かならず」
ジェーンの言葉には、しかし皆思うところはある反面、それが確実なのは分かってしまっていた。
「準備はしよう。
せっかく、我々の作る身体よりも質の良い身体があるんだ。
eX-W、一体地球はなぜこれほどの物を作れたのか……」
***
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