[変更済]MISSION 1 :意外な弔問客







 



 ─────キェェェェェェェェェイ!!



「んぁ‪……‬!」



 その日は、奇声で起きた傭兵系美少女の大鳥ホノカちゃんでした。


 場所はお墓のあるお寺、の一個隣の『とある知り合い』のいる神社の社務所兼自宅であるらしいここに泊めさせてもらっていた所、

 聞き慣れた奇声が響いて、起きた私とルキちゃんだった。

 まぁ私は誰の声かは分かったのだった。




「‪……‬何この声‪……‬」


「あー、気にしないで。古い知り合いだよ多分」


 そう、この奇声は、ちょっとマッコイさんが私が他所でパーツ手に入れたらあげそうな奴、じゃない。


 この声は、私の古い知り合い‪……‬



 というより、

 おばあちゃんの古い知り合──────




「キェェェェェェェェェイ!!!」



 スタッ!



 ────うん、知り合い2人がまさかのジャンプして神社のあの石畳の道の所に降り立っていた。


 泊めて貰った部屋がちょうどそっち側で、昨日もなんか霊的な現象見えていたけど、それより怖い光景だね。



 1人はお婆さんだぞ!?


 ってビビるのはそのお婆さんとツレを知らないからである。




「あ、どもお久し‪……‬」




「その前に!!」



 そのお婆さんと、ツレの子、90度回転して本殿に深々と土下座。



「「早朝よりお騒がせして申し訳ございません」」



 神様に向かって謝罪。ちゃんとしているね相変わらず!


 そして、カラカラと社務所の扉が開いて、1人の褐色モデル体型美人さん────そう、私の傭兵スワンの先輩兼、なんとこの神社の巫女さんだか神主さんのキリィちゃん登場。



「おうウチの神さんにまず頭下げるとはええ心掛けじゃのぉ?

 じゃ次は奇声で叩き起こされたワシん謝罪して貰おかコラァ?」



 いつものヤ◯ザ口調、もとい広島弁で凄むネグリジェ姿の褐色なモデル体型なのであった。



          ***



 てなわけで、全員和室に集合して座ってました。




「どうも、お騒がせしました。

 わたくし、渡辺わたなべウタヌと申します‪……‬

 神様のお家でこのような騒動‪……‬お恥ずかしい限りで‪……‬」



 着物姿の案外シャンとした所作の、古風な感じの綺麗なお婆さん。

 おばあちゃんと知り合いのウタヌお婆さんは相変わらず普段はね、物腰柔らかな人であった‪……‬


「まぁ、多分神さんも許すと思うけどのぉ。

 なんじゃ婆さん朝から猿叫とは、剣術でも習っとんのか?」


「キリィちゃん分かるんだ。

 なんだっけ、じげ‪……‬なんだっけウタヌお婆さん?」


示現流じげんりゅうよホノカちゃん!

 もぉ、昔から物覚えが悪いんだから!おまけに気が付いたらお墓はあのバリアのお外だなんて、落ち着きがないし唐突に消えるのは相変わらずねぇ‪……‬もっとまめに連絡しなさいな!」


 テシっとお婆さんから手刀食らいましたー。

 ごめんて‪……‬たしかに御歳68のお婆さんを動かすのは酷だよね‪……‬相変わらず木を飛び越えるすごい身体能力だけど。



「‪……‬‪……‬示現流、この火星でテレビ以外で生き残っとったのん?

 かーっ、珍しい‪……‬ちゅーか、そっちのも弟子かなんかの?」



 と言ってキリィちゃんが指差すもう1人は、


 上下白の可愛いブラウスとスカートに大きな帽子、

 そんなモジモジしながら恥ずかしそうにはにかみながらモジモジ正座している、ロングヘアな清楚そうな美少女が1人。


 いや本当‪……‬いつ見てもお人形さんみたいで、私より美少女じゃないか!!


 ひさびさに見たけど相変わらず恥ずかしがり屋だね‪……‬




「‪……‬‪……‬ドモデス」


「声ちっちゃのう?」


「きぇっ!?!ご、ごめんなさいッ!?

 あ‪……‬‪……‬ゴメンナサイ‪……‬」


 と、言って、慌ててて口を閉じるこの子。


 名前は、渡辺ツナコちゃん。

 見ての通りハイパー恥ずかしがり屋人見知り美少ちゃんである。


「なんじゃ、随分あざといのが来たのう?」


「優しくしてあげてキリィちゃん。


 おひさだなツナちゃんや、連絡もしばらく無しでごめんね。


 私の隣の静かな銀髪の子は、色々あって死んだお母さんの関係者のルキちゃんだよ。


 で、今話しているこっちの黒い怖い人はキリィちゃん」


「誰が黒い怖い人じゃ。

 ワシが、黒くて優しい美人のキリィさんじゃ、よろしゅう」


「よ、よろしくお願いしまスゥ‪……‬‪……‬」


 キリィちゃんというヤクザ巫女に握手をせがまれ、超小刻みに震える全身でなんとか応じる。


 頑張った‪……‬相変わらずの人見知りなのに頑張ったよ、ツナコちゃん!


「意外な奴だったのう?

 見た目と、か、怖いのは」


「そうなんだよ‪……‬ん?肩書き?」


「ま、お前は知らんけぇ」


「‪……‬そうですか、流石は現在のランク13の傭兵スワンという訳なのね‪……‬」


「え、まって、ウタヌお婆さん!!

 私、キリィちゃんも傭兵なこと言ってたって言うか、なんでそんな詳しいの!?」


 なんならキリィちゃんランク上がったばっかり!!


「‪……‬‪……‬あなたに言ってなかったのは、あなたのお婆さんの願いもあったの。


 アンジェさんも、私も、元傭兵スワンなのよ」


「‪……‬え?」


 まさかそんな‪……‬私も隣のルキちゃんも驚いた顔隠せないよ‪……‬!


「まさかそんな‪……‬!」


「‪……‬ツナコとたまに道場の掃除やら、門下生の炊き出しの手伝いをしてくれていたわねホノカちゃん。

 剣術の道場、としか今も思っていないでしょうし、

 すでに1人、いえあなたも覚えていないでしょうけど幾人もあなたに倒されているのですから」



 門下生‪……‬?


 あれ‪……‬あれ、なーんかこう‪……‬思い出しそう‪……‬!!


 剣術の道場。傭兵。このワードで括られてる面々‪……‬


 そうだな、一番印象に残ってるのは‪……‬愛機の一つティタニスの試しに、アリーナで戦った子‪……‬!!


剣機道けんきどう、だったっけ?》


 それだ!

 今、部屋の壁際で声を出したのは、私の相棒である30cmサイズのデフォルメ三頭身ボディAIロボ『ウェザーリポーター』の頼れるけど厳しい相棒、コトリちゃんである。


「それだコトリちゃん!!」


「ええ、そこのウェザーリポーターの言う通り。

 かつては『マサクニ』と呼ばれた私が作り上げた、人型兵器による剣術体系、そしてそれを教えた門下生達の総称が、剣機道です。


 今は、私もこの通りすっかり衰えたので、

 孫であり、今の所私より強い剣とパイロットの腕を持つ、ツナコ‪……‬


 eX-W『童子切どうじきり』を操る、剣機道最高段位、師範である傭兵『ヤスツナ』。


 その子に継がせていますが」


「やはりランク3のヤスツナじゃったか。

 見たことある面じゃ思うとったが」



 え、ツナコちゃん‪……‬そんな、すごい子だったの‪……‬!?





 今部屋の角で背中向けて顔を両手で隠している子が!?




「‪……‬‪……‬ヤメテ‪……‬ハズカシイ‪……‬‪……‬」


 相変わらず声ちっさ‪……‬


「‪……‬‪……‬ツナコちゃん、大丈夫??」


「‪……‬‪……‬引いたよねホノカちゃん‪……‬」


 とりあえず駆け寄る私であったけど、耳をすませばそんな言葉である。


「え?どう言うこと?」


「私‪……‬中学の頃からね‪……‬傭兵だったんだけど‪……‬

 ずっと‪……‬‪……‬アンジェお婆さんの事も知ってて黙ってたの‪……‬‪……それとは別にね‪……‬ホノカちゃん|傭兵になった時から‪……‬‪……‬私、なんでかランク高くって‪……‬」


「ほーん‪……‬」


「アッアッ!!今私、マウント取ったとかじゃないよッ!?!

 違うの、違うの!!!わた、私、先輩だけど先輩風とか吹かしたいんじゃなくて!!?!?


 ただ、ただね‪……‬‪……‬私、ホノカちゃんとは普通のお友達でいたかったから、私、ただ‪……‬


 うぅ‪……‬傭兵になるのは、別に良かったけどそんなランカーとかになりとかじゃなくって‪……‬‪……‬ましてやホノカちゃんより上とかなんか似合わないよぉ‪……‬

 私、そんなすごい子でも無いのにぃ‪……‬!」


 えぐえぐと泣いて壁へ向かって顔を擦り付けるようにしながら言うツナコちゃん。


 なので、私は無理矢理ツナコちゃんフェイスを壁から引き剥がす。


「ぶぇ!?」


「‪……‬‪……‬ひでぇ話だなぁ、ツナコちゃん。

 私がそんなこと気にするような頭の回る子だと思う?」


 ちょうど手で持ったのけぞりツナコちゃんの泣き顔見ながら、相変わらずというか何度目なやりとりをするのだ。


「‪……‬‪……‬んーん」


「でしょー?

 中学の休みの時の『家の事情』の正体がそれと言っても、休んだ日のプリント持ってたり、課題見せに行ったのにツナコちゃんよりテストの点が圧倒的下の私の脳みそが、


 やれランク上だのなんだので一々態度変えられるような出来がいいと思う???


 思わないでしょみんなも!!」



『もうちょっと思え』



 みんなひどーい!!


「‪……‬まぁ、この通りなのだツナコちゃん」


「‪……‬‪……‬ホノカちゃん‪……‬うぅぅぅ、いいのぉ?まだ私達お友達でぇ‪……‬!!!」


 えぐえぐ泣くツナコちゃん。

 良いんだって、もーすぐ泣くー。


「良いんだって。むしろ悪いね、連絡もしないで。

 ‪……‬‪……心配かけたね。ごめん。


 ‪……‬ウタヌお婆さんも、ごめんね」



 改めて、知り合いでもあるのに一切そう言った知らせをしなかった事を謝る私。



「‪……‬‪……‬私が死んで、ツナコが同じことをしたら、当然叱るつもりで化けて出ますとも。


 しかし‪……‬こればかりは、アンジェさんは叱れないでしょうね‪……‬


 ‪……‬‪……‬でもまさか、ホノカちゃんは傭兵スワンとなって、タマコちゃんまで、死ぬなんてね‪……‬!」



「‪……‬‪……‬ウタヌお婆さん、教えて。

 おばあちゃんは、何でお母さんのことも、自分の事も‪……‬何も教えなかったまま死んだのか‪を」



 泣いているツナコちゃんをなだめて、改めてウタヌお婆さんに尋ねる。



「‪……‬‪……‬あなたには、知る権利があるものね」


「私にもあるんだけど。

 仮にも、タマコと最後近くまで過ごしたんだし」


 と、言うルキちゃん。そうだよね。


「‪……‬ワシは外にでも出とくか?」


「いえ、今は少し話すのには速いでしょう。

 何せ‪……‬この話は、後2人、アンジェを知る人間を呼ばないといけない‪……‬」


 ピンポーン、とふとこの社務所のチャイムがなった。



「‪……‬2人とやらでも来たかのぉ。

 あーい、今出るけぇー!!」



 と言って、一応この家主のキリィちゃんが玄関に‪……‬




「うおっ!?

 ホノカぁ!!とんでもない人来とるぞぉ!?」


「え?」


 何なに?行った方がいい系?








「あれ、クオンさん!?」


 そうだよ、私の機体パーツを作っている『AI社』の社長で、いつも世話になっているマッコイ商店のマッコイさん (本名キツネさん)の妹さんで、火星テラフォーミングのために生み出された人工生命体『火星人マージアン』の1人、


 新美クオンさん、300歳!

 キツネ顔の白髪美人さん、まさかの喪服で登場!!



「‪……‬‪……‬苗字でそんな気はしていたが、今まであえて素性は深く調べなかった。

 そうか‪……‬‪……‬お前、やはりアンジェの孫か」


「‪……‬おばあちゃんと知り合いだったんなら‪……‬言って欲しかったなぁ‪……‬!」


「‪……‬‪……‬思い出の中だったのさ、アイツとは。


 そうだろう?ウォースパイト」


 ふと、後ろの人‪……‬


 今まで、ずっと静かに立っていた、柔和な表情のブロンドメガネ美人さんが、こっちを見つめていたのに気づいた。


「ウォースパイト‪……‬あ、あなたが‪……‬!!」


「‪……‬‪……‬不思議ですね。

 表情、全体の雰囲気、それは違うはずなのに‪……‬


 近くで見ると、アンジェそっくり‪……‬」



 その言葉は、なんと言うか直感だけど‪……‬おばあちゃんと相当親しい事を感じていた。



「‪……‬きっと、アンジェは話していないでしょうね。


 エリザベス・クィンビー。コールサイン『ウォースパイト』。


 そう、私がウォースパイトです。


 アンジェとは、傭兵の先輩後輩‪……‬と言っても、1歳違いで、傭兵スワンになったのは全く同時期の‪……‬戦友でした」


 手を差し出されて、握手を求められた。

 握手をして‪……‬やっぱりと言うか、人間に見えるけど確実に強化人間プラスアルファ特有の機械義手の感触を感じた。


 つまり、全身機械化した見た目は若いけどお婆さんって事だ。


 私もこの、ウォースパイトさんと同じ歳まで戦い続けてたら、そうなるのかな?



「‪……‬‪……‬どうも、大鳥ホノカです」


「‪……‬‪……‬所で、その廊下の奥から見ている銀髪の子?」



 と、玄関の方へ顔を出して見ていたルキちゃんを、なぜかウォースパイトさんは呼ぶ。



「私に何か用?」


「あなたがルキですね?

 タマコと共に最後を過ごしたシンギュラ・デザインドの子は」


「え?」


 まって、お母さんの名前も言った!?


「なんで知ってるの!?

 アンタ‪……‬アンタ何者!?」


「心を読める上で尋ねるなら答えます。


 私はアンジェの戦友、そして‪……‬‪……‬一度はあの違法傭兵ブラックスワンである『バレットガール』を操るタマコを捕まえたことのある人間ですよ」



「お母さんを‪……‬知ってるんですか?」


「ええ。

 アンジェが何故あなたにも過去を教えなかったかも、

 タマコが違法傭兵ブラックスワンになったのかも全てを知っています」



 なんだって‪……‬!?



「‪……‬‪……‬初耳だが?」


「クオン社長も断片的にしか知らない事でしょう。

 まぁ、些事に捉われないようなあなたらしい『ガバガバ情報網』ですけども?」


「耳が痛い。つい最近それで失敗を2回やったが。

 ‪……‬‪……‬あのアンジェが、傭兵スワンを黙って辞める理由には興味があったがな」


「‪……‬‪……‬どう言う、事なんですか?」



 私の問いにウォースパイトさんは、少し表情を曇らせる。



「‪……‬‪……‬長くなります。

 同期の後輩、そして悲しい道に進んだその娘さんのお話ですから。


 ‪……‬‪……‬その2人に、手を合わせてからでも遅くはない‪……でしょうか?」


「‪……‬‪……‬そうですね。うん、そっちが先だ‪……‬!」


 色々知りたい事が、ようやく知れる。


 でも‪……‬‪……‬その前に、まずは納骨式だな‪……‬


 お葬式でもあるから、ある意味で。ちゃんとやらないとね‪……‬



          ***

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