[変更済]MISSION 2 :そこに4つのジェネレーターがあるじゃろ?






 どうも、傭兵辞めるために傭兵頑張ってお金を稼ぐ捻れた生き方する少女こと大鳥ホノカです。


 機体のジェネレーター買おうとショップであーだこーだしてたら、何故か傭兵スワンランク1で企業の社長の偉い人、新美にいみクオン氏がやってきました。




「そうか、お前が噂の大鳥ホノカか」



 でもってなんでか、ショップの整備ガレージの待合用ソファーでお互い隣に座ってました。

 お互い、コーラの缶片手という何とも言えない状態で。


「え、私噂になってるんですか?」


「始まりから無茶なミッションを生き残り、最速のランクB昇格、アリーナでも勢いの強かった期待の新星フレイムブレイカーを無様な姿に変えた勝利、そして先日の未確認自立兵器の撃破」


「最後のは‪……‬ほとんどすごい先輩がやってくれたのですが‪……‬」


「最後の?

 大型自立兵器、シーサーペントは共同撃破だが、あのガチタンもどきが変形した奴をほぼ単騎倒したのだろう?」


「そこまで‪……‬?」


「あまり偉い人間が下のことを知らないと思わない方がいい。

 いや、違うな。

 自分を過小評価するべきではない。

 私のような立場の人間にも情報は届くほどお前は注目されているよ」


 そうなんですか‪……‬意外ですわー


「にしても悪いタイミングだったな。

 姉様のところに世話になるとは‪……‬未だにパーツを他所で購入させまいとしているのか?」


「あっ‪……‬はい」


「まったく‪、あの姉様は。

 商売人としては私より悪くはない才能なのにな。

 なんなら、面倒なトラストの理事会やら社長やら押し付けたいぐらいだ」


 あらまぁ、偉い人もそんなこと言うんだなー。

 スタイル良すぎる美しすぎるランク1の新美クオンさん、そんなこと言いながらグデーっとこのソファーに背を預けてる。



「あら。ワタクシはおサボりばかりの愚妹のために働いてあげるほど優しくはありませんわよ?」


 と、そんなタイミングで登場したマッコイさん。

 マッコイさんの方が呼びやすいなやっぱ私は。


「姉様」


「マッコイさん」


「ごめんなさい、ホノカさん。

 こんな愚妹の相手をさせてしまって」


「ランク1を愚妹なんですか」


「どうせ立場が偉くなっても、この子はサボリか仕事しないかのどちらかですもの。ね?」


「姉様、私だって成長した。

 ちゃんと有能な秘書と共同経営者でもあるAIユニットに仕事は任せてるし、責任のために頭を下げて記者会見する練習は毎日やっているぞ?

 傭兵業の片手間にちゃんと」


 経営しているとは、言ってないなさては。

 ほらね、って顔のマッコイさん。なんかこの人地味に残念な美人なのは、姉妹なんだなって感じ。


「まぁ、そんな愚妹のためにも、今日はこちらのホノカさんのご注文の品定めをしていきましょうか。

 1/4の確率で、貴女の会社の物に決まりますもの」


「え?」


「そうか。

 お前、こんなにも早く20万cnカネー価格帯のジェネレーターを買うのか」


 まって、なんで今の会話で私の買う物が分かったの!?


《あんまり分かった風で話進めると、この子バカだから理解しきれないぞ、今の社長?》


 と、マッコイさんの背後からひょっこり顔を出すコトリちゃんが、なかなか酷い事実を言ってくる。


「なるほどな。

 見学しても良いか、大鳥ホノカ。

 新人の目利きに興味がある」


「えぇ‪……‬まぁ良いか」


「ではどうせですから、現物を見ながら解説もしてしまいましょう?

 eX-Wのジェネレーターにまつわる、ちょっとした企業の事情の話も」


 とりあえずマッコイさんからコトリちゃんを受けとって、その事情とやらを確認しに行くことにしましたー。








 ガレージの一角、台車の上に乗せられた4つのエンジンみたいな形の奴。


 ジェネレーターなのは、見て分かった。




「大鳥ホノカ、お前は知らないだろうから少し説明しておこう。

 今現在、トラスト所属の企業は無数にあるが、その中でも中心に位置する企業だけがeX-Wパーツを製造し販売している。

 そして、eX-Wのパーツは各企業事に無数に作られている。

 ところで、そんなeX-Wパーツ販売を行う企業はいくつあるかは知っているか?」


「いえ、そういえばAI社とか、O.W.S.とかバーンズとかは使ってるんで聞きますが後は忘れちゃって‪……‬」


「まぁ、今ではトラストという巨大な枠組みで動いているからな。かつて企業は地球の支配者として、3つの陣営に分かれて対立していたらしい。


 今も、内部で大人しく仲良くはしているが、派閥がある程度にはまだそこそこの対立があるし、それぞれシェアを分けるために製品も違う。


 トラストの内部の中枢となると企業は全部で12社存在する。


 まずは『バーンズアーマメンツ』か。

 eX-Wのパーツとしては実弾兵器と実体弾防御に重きを置いた堅牢で確実なフレームが売りの企業だな。

 実体武器のライフル類といえばここだ。

 あまりジェネレーターをはじめとした内装はよろしくないがな。


 その傘下であり盟友、『リボルバーリバティー』。

 大火力・一撃必殺のグレネードやスナイパーキャノンなどが有名で、そのフレームもとにかくタフだ。

 内装は作っていないが、そこは他社製品に頼っても問題はない。


 上記の2社とも関わりが深いのが『アヤナミマテリアル』。

 レーザーブレードやパルスレーザーウェポンで有名だ。内装がそれらに対応するよう強力で、フレームは防御面が不安だが、超高速戦や近接線を念頭に置いた高運動戦フレームが特徴だ。

 少しブースター出力がやりすぎだがな。



 次に『シンセイスペーステクノロジー』。

 ミサイルとブースター関連では最大手だ。

 元は宇宙活動用の有害放射線に対応した、エネルギー防御に優れた4脚型フレームも中々良い代物だ。

 ただ、自社のジェネレーターでは少し出力不足感があるのが玉に瑕だが。



 おっと、忘れてはいけないのが『デプス』社だな。

 我がO.W.S.とも多少苦い関係のある社で、変形型武器腕をはじめとしたクセの強い武器が多い。

 ちなみに無人型MWなども取り扱っているが、そこらへんの特許で我が社と少し揉めた過去もある。少し問題児だな。



 以上5社が、バーンズアーマメンツ派閥だ」



 たった5社ですごい濃いメンツだな‪……‬!

 素直にそう思うけど、それ以上にまだ7社あるの?



「次に語るべきがもう一つの派閥だな



 『レイシュトローム』。

 レーザー兵器、エネルギー兵器の老舗だな。

 高性能なフレーム、高性能な内装、高級パーツなeX-Wパーツが多い。

 ただ、高価なのとそのフレーム性能が自社の内装パーツでないと存分に発揮できないところが玉に瑕だが。


 レイシュトロームとは腐れ縁の『エクレールメカニクス』という問題児がいる。

 eX-Wの性能を上げるオプションパーツ類や、強力な内装のパーツ類で有名だ。

 ただそのフレームというか武器というか‪……‬コイツらは『浮世離れした変態技術者集団』と言われるぐらいクセが強くてな‪……‬

 とくにNGウェポンという、eX-Wに何をさせる気かしれない物がある。話すと長くなるから解説はしないぞ。


 『カチューシャクラート』は、安価ながらそこそこ使える軽量型の空中戦向けフレームと、ロケットをはじめとした安価な武器が有名だな。

 同社主力兵装のHEATライフルなどはやや高いが‪……‬基本的に安価でそれなりに使える武器が売りの会社だ。やはり業績は輝かしくはないがなんとか生き残っている。


 『エンフィールドラボラトリー』は、企業としてはかなり大きな規模と資産を持つのだが、eX-W技術がやや劣っているせいか、武器腕やタンク型、フロート型といった非人型フレームや性能はいいが重い内装が特徴だな。

 本人たちは「人型に囚われていないだけ」と言うが。


 この4社が、レイシュトローム派閥だ」



 こっちも濃いな‪……‬

 地味に見たことある奴たちはこの会社だったのかって言うのが多い‪……‬!




「そして、我が派閥か。

 我らが『オートマティックAインダストリアルI』。

 無人自立型のPLeX-Wプレックスダブルを最初に開発した場所でも有名だが、高出力型の割には低燃費なブースターや低エネルギー消費のフレームに主眼を置き、強力なプラズマ兵器を主体とした武装を撃っているのが特徴だな。

 ただ、実弾防御がやや弱い上に、あまり防御性能には自信がないな」


「いや結構苦しめられましたよ、そちらのeX-Wに最初の任務で殺されかけましたもん」


「だったな。資料で見た。

 そんなお前を苦しめたAI社と歴史的にも仲がいいのが、」



オーグリスO.ウェポンW.サービスS.だね》


 ヒナちゃん、ひょっこり参戦??


《元は、地球環境再生のための機関『オーグリス機関』が、その一環で行っていた強化人間プラスアルファへの人間拡張技術。それ専用に作っていたeX-Wフレームを作る部署が、いろいろあって独立して企業になった場所。

 とにかく強化人間が動かすことを前提にしたフレームと高精度で高性能なな武器が売り》


「あと最近は、色々と新製品の準備をしているらしいな」


《楽しみだね。生前は関わりがあったし》


 なんかそんなこと前に言ってた気がする。


「‪……‬そして最後に、『大和重工やまとじゅうこう』。

 かつてアヤナミマテリアルと喧嘩別れした工場群がAI社を創設した人間の援助を受けて生まれた企業だ。

 アヤナミマテリアルと基礎は似ているが、フレームは無骨で堅実な狙撃専用な機体たちで、近接のアヤナミに対して遠距離の大和と言われるぐらいの狙撃型機体が売りだ。

 武装もレールガンを主体としている。


 この3社で、AI派閥だ。


 この3つの派閥が、未だにトラストという枠組みの中でも存在している」


 へー‪……‬


 やっぱ多いな、企業。

 これが無数にパーツを作って売ってるんだ‪……‬



「さて、長くなったがここからが本題なんだ。

 お前に一つ問題を出すが、この12の企業で傭兵が20万cn手に入れたら買うようなジェネレーターを売る企業、何社ぐらいあると思う?」



 え?

 全部がジェネレーター売ってるんじゃないの‪……‬


 と思ったけど、考えても見たらバーンズアーマメンツの低出力なジェネレーターに泣いた記憶がある。

 あくまで高級なジェネレーターを売ってるのは‪……‬?


「7社、ぐらいですか?」


「正解は、たった『4社』だ」


 え!?

 4社だけ!?



「驚くのも無理はないな。

 最高品質のジェネレーターを売れるのは、現在4社だけだ。


 出力と容量のバランスが高い水準で整ったレイシュトローム、


 全企業最高出力の部類である代わりに少々容量が4社の中では低いエクレールメカニクス、


 トップ2に出力は譲るが、莫大なエネルギー容量プールを持つアヤナミマテリアル、


 そして、バランス型だが上3社にはあと一歩及ばない出力と容量だが、唯一リミッター解除前提に作られた我がオートマティックAインダストリアルI



 お前は、これからジェネレーターを買う場合は必ずこの4つの社のどれかから選ぶことになる」




「4つから‪……‬?」



 そうか‪……‬!

 この4つのジェネレーターは、もしや!



「では、商品の説明をしていきますわ」



 そして、マッコイさんが前に出て、4つのジェネレーターの右側から紹介を始める。



「こちらがレイシュトローム社、『フラウロス G-64』。


 レイシュトロームの標準型ジェネレーターながら、今ホノカさんのアルゲンタヴィスが使っているセラフィムの約2倍の出力、容量を持っていますわ。

 さすが悪魔の名前を持つレイシュトローム系ジェネレーターらしい性能です。


 ただし価格は230000cn。悪魔の力は少々お高いですが、お高いだけはあるレイシュトローム製らしい高級な高性能品ですの」



 まさに高級品!高くてもきっとそこまで言う性能なんだろうな。

 そして、と隣へ。


「こちら、エクレールメカニクス社、『MGN-01Z PHOTON POWER』。

 こちらのフラウロスの1.5倍の出力を持ちますわ‪……‬容量は2/3ですが、出力が高いので気になりませんわね。

 何より軽くてコンパクト。そこも魅力ですわ。


 価格も200000cnとピッタリですの」



 出力高いのに小さいのか!!

 変態技術者ってしゅごい‪……‬



「そして、こちらがアヤナミマテリアル社、『朝潮あさしお12型』。

 この中では少々大きめで重めですが、フラウロスよりもエネルギー容量は1.7倍程度高いですわ。

 出力も、フラウロスの0.8倍程度なので、断然セラフィムより使えますわ〜


 しかも、お値段驚異の150000cn!

 一番安いですわよ〜!」


 うぉ、いいなそれ!

 安い上に使えるんだ‪……‬!



「最後が、オートマティックAインダストリアルI社、『AIG-02 トルネード』。


 比較的に小型で、アヤナミ製の朝潮よりは出力が高く、エクレール製のこちらよりは容量が高いもののフラウロスよりはどちらも一歩及ばないバランス型ですわ。

 そう聞くと残念に思われますでしょうが、それでも他の社のジェネレーターよりはずっと高出力で良い容量のジェネレーターですし、


 何より最大の能力は、『リミッター解除前提』の設計がなされている数少ないジェネレーターですわ。

 もしもの時にリミッター解除を使用しても、ほんの少しの間出力が本来の65%辺りまで下がってしまうだけで済むのが魅力ですの。

 緊急時に大変強いジェネレーターですわ。


 価格は205000cn」



 マジか‪……‬あのリミッター解除が気兼ねなく使えるんだ。


 うわー、これは‪……‬!



「迷うなぁ〜〜〜!

 どうしよう、どれもたしかに聞く感じめっちゃいいジェネレーターばっかりじゃん!」


 価格で選ぶにしろ性能で選ぶにしろ、どれも正解に思えて大変迷う!


「うわー、うわー‪……‬うーん、

 もういっそ聞くんですけど、誰かコレにしときなよって意見あります??

 なんかこう‪……‬他の人の意見を聞きたいんですけど!」


 正直最後に選ぶのは私でも、ピシャリと選べる自信がない!


 と、そこで背中側の右腕を上げる、少し離れた場所にいたユナさん。


「ホノカちゃん、整備してる人間としての意見っすけど‪……‬

 朝潮ちゃんでいいと思うっす。

 ホノカちゃんのアルゲンタヴィス、頭以外はバーンズアーマメンツ製じゃないっすか。

 重いけど低燃費なフレームなんで、出力よりは短時間の間にブーストに回すエネルギー量が高い方が良いっすよ。

 朝潮ちゃん、安いし言うてそこまで出力低くねーっすしね」


 なるほど‪……‬!

 ユナさん、整備してるだけあって、フレームのこと詳しいからこその意見!


「あら、ワタクシはエクレールの『PHOTON POWER』の方が良いと思いますわよ?

 こう言う言い方は少々品がないですが‪……‬


 出力パワーは全てを解決する。


 実際容量があるかエネルギー出力が高いかなんて言うのは、見かけ上は大して違いはないですわ。

 回復力が高ければ、コンデンサ内のエネルギーが減る速度も遅いのですし。

 そういう意味でエネルギー出力が高ければどのような状況でも必ずパフォーマンスが発揮できる。

 ならば、出力特化にすべきかと思いますの」



 マッコイさんの言葉も一理あるなぁ‪……‬!

 やっぱ出力がないとさ‪……‬ってのは最初の任務から感じてたし。



《‪……‬私的には、AI社のトルネードにしたいんだよな》


「コトリちゃん?」


《正直それに頼る程度のスワンなら死ねとも思うけど、リミッター解除には私も生前大分助けられたしさ‪……‬

 いざって時の備えに、これにしといてほしいとも思うんだ》


 いつも辛辣ながら的確なアドバイスのコトリちゃんはそれを選ぶんだ‪……‬!!

 うわー、コトリちゃん間違いだけは言わないって信じてるから、それも分かる意見ー!!



「だったら、私はあえて他社製品を推しておこうか」


 そしてまさかのここでクオンさん参戦である!?


「大鳥ホノカ、これはあくまで傭兵スワンとして少し長く戦っている身での戯言だが、


 迷ったら、レイシュトローム製だ。

 レイシュトローム製の内装にハズレはない。

 悔しいが、強気な値段なだけはある。

 競合他社の社長という身分としても、あそこのジェネレーターは素晴らしい。


 買えるなら、それにしろ。

 私も昔は別に自社内装だけ使っていたわけではないし、今もそうすることが多い」


 まさかの、全スワントップのランク1の人からの意見。

 でも、そういうに抜きにすっごい説得力ある。



 まーよーうー!!


 どーしよ、どれが良い!?

 それもある意味で正解だし‪……‬今選ぶならなんだ!?


 うーん‪……‬うーん‪……‬‪……‬‪……‬よし!



「分かった!私とりあえずは、」




 これに決めた!!

 新しいジェネレーターは───────





          ***

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