[変更済]MISSION 21 : eX-W, ASSEMBLE STNDBY.READY?







 ────ギフト2、中央大型格納庫。


 傭兵系美少女大鳥ホノカちゃんこと私とそれ以外のみんなを迎える巨大な暗い色の巨人。



「おぉ‪……‬!」



 そのどこか海賊っぽい帽子みたいな頭部パーツは、額に4つ、顔に縦二つのカメラアイ。


 前後に長いのが多いeX-Wエクスダブルのコアには珍しい、シュッとした印象のあるやや逆三角形の形のコア。


 肩は大きく腕の細い腕部パーツ。


 前後のスカートアーマーと、ヒールが高いちょっとオシャレな2脚型、



 見たことのない、それでこそ色々とヒナちゃんにシミュレーターで乗せれた機体には無いパーツがそこにはあった。



《これは‪……‬?

 見たところ‪……‬大和重工っぽいけど、見たことないフレームだ‪……‬何持ってきたんだソラちゃん?》



「これは、『零式信濃』。

 大和重工製、出来立ての新型さ!

 しかもあそこにしちゃ珍しい前衛型。

 運動性能と防御形式に優れてて、装甲の厚さは中2の中じゃ平均だけど、エネルギー武器も実弾もそこそこ弾く。ま、油断は禁物だけど、大和重工のわりき機敏な方だよ」



 新型!

 凄そう‪……‬!!



「ちょうどフレームまとめて運んでたヤツでさ。

 ここの内装間に合わせで積んで武器持たせりゃ戦えるよ。

 じゃ‪……‬よいしょっと!!」


 近くの重そうなケースをソラさんは引っ張ってくる。


「手伝って!!

 ブースターとか装備すんだ!」


「オッケーです!」


 ケースの電子ロックを外して、中のブースターとご対面。


《わぁ!!02A P-longiceps!!》


「コトリちゃんが喜ぶってことは、O.W.S.製だ!」


「分かってんねぇ!

 これが、O.W.S.製のアサルトブースターパーツ最速反応型。

 出力で言えばアヤナミ製に負けてないけど、一番やばいのは荷電粒子噴射時間だ!

 アヤナミ製が0.2秒の所、これは0.02秒!

 同じ出力分噴射するのに1/10しか使ってないから、トブよ、この『プテラノドン』は!」


「プテラノドン!?あー!シミュレーターで、何度もガクガク言わせたヤツだ‪……‬買わなくて正解!」


《なら使い方は覚えているねホノカちゃん?

 でもさ、無茶なアセンはしない主義のソラちゃんがコレを選ぶって、ひょっとして信濃は見た目より重いフレームか、あるいはアレ対応か?》


 え、何、アレって?


「両方だよ。乗ればわかるよ?」


 えー、アレって何ー?

 なんて思っているうちに、ソラさんは真上のクレーンを見る。

 突然、勝手に動いて下がってくる。


「まだいくつかあるから運んでホノカちゃん?

 取り付けはやるよ」


「今の、どうやったんです?」


「お姉ちゃんから聞いてない?

 私達火星人は、機械なら何でも命令できるのさ」


 なんか聞いたような聞かないような。

 ま、すごいのは分かったから考えるのやーめた!

 とにかく、プテラノドンスゴイヤバイブースター (私命名)をどんどん持っていかなきゃ!強化人間プラスアルファのパワーでえっさほいさ、どっこいしょ!




「よし、4つ目!!

 こっちは全部はめ終わったし、次はメインブースターか」


《ソラちゃん、『ノーイースター』あるかい?》


「珍しいねパイセン!私のところのか!!」


《アレがいいや。別にアサルト時の反応も悪く無いし性能いいでしょ?AI社のでも、私は使うよ》


「何、ノーイースターって?」


「そこの箱!『AIB-07』って書いてあるヤツ!」


 おぉ、あったあった!

 ソラさんの指差した先のでかい箱を持ってくる。


 結構大きな箱の中、ちょっと長いし大きな変な形のブースターが出てきた。



《『AIB-07 ノーイースター』。

 AI社ブースターらしく、いい出力の割に低燃費な持続型だね。

 多分、君には一番合うとは思ってたブースターだと思う》


「それでも勧めなかったあたり、買ったら高いヤツかな?」


《そのとーり》


 ならば、すぐに持っていくしかないね。

 多分重いんだろうけど、強化済み、しかもさっきアップグレードされた身体じゃ楽々だ。

 階段も梯子も簡単!


「ソラさん、私つけちゃいますね!」


「経験あるんだ?」


「腕のいい整備士のお友達に教えてもらって!」


 実際、ブースターの装着はすっごく簡単。

 抵抗がなくなるまで、装着する場所に差し込んで、かちゃんと音がしたら、周りの固定用の円形の部分を回して、はい。


「簡単でよかった‪……‬ユナさん曰く『それだけ完成されたシステム』って事だけど」


 2個目も同じく。て早くね。



「いい感じじゃん!傭兵やめたら整備屋やれば?」


「それもいいかも!高校出てないんです!」


「じゃ、ちょっとアサルトブースター取り付けは数多いしさ、そこのストライクブースター一式、着けるまではしなくていいからお願い、持ってきて!」


「どれですか!?」


「エクレールメカニクスのロゴと、『CYCLONE BUSTER-09』の文字のあるヤツ!」


 おぉ、みっけた!

 正方形なケースだ!

 中身もいかにもブースターって感じのお椀みたいなヤツ!


《エクレールメカニクス、最高出力ストライクブースターか。

 消費がでかいけど、エクレールメカニクスらしくブラストアーマーも搭載されてる。

 それもかなり火力が高い》


「へー‪……‬強そうだね」


 ヨイショと二つとも持ち上げて、フレーム後ろのタラップを登ってコアの後ろへ。


《ぶっちゃけね、カタログスペック通りならある部分抜けば傭兵業なら一択パーツかもとか思うよ。

 今の君ならまさにそうだけど‪……‬》


 コア後ろのカバーを外して、穴にブースターの端子をまずは差し込む。


「コトリちゃん的に引っかかるところあるんだ」


 なんて言いながら、付属の金属ボルトのぶっといのを接続した場所に刺して、回す。

 ここの固定は大事。って頼れる整備士のユナさんが言ってた。


《エネルギー消費がね。

 エクレールメカニクスの出力に振ったパラメーターのジェネレーター前提な感じ。

 動かすには、それだけ強力な『人権』がいる》



「はいはい!

 今その人権持ってくよ!」


 台車と一緒に登って来たソラさんと、何やらクレーンで吊り下げられた鎖の先の重そうな物体。


《何、そのジェネレーター?

 見たことないな‪……‬》


「驚かないでね?

 これ、地球のO.W.S.本社の先行量産品」


 わあ、と楽しげなコトリちゃんの声と一緒に、台車に載せ替えたそのジェネレーターがやってくる。



「O.W.S.純正ジェネレーター、最高級型の、

 『G04-Laramie』!


 こいつスゴイよ!?エクレールメカニクス製みたいな出力!それでいて容量もある!


 しかも、私のAI社製と同じくリミッター解除も前提だし、欠点は重さぐらいかな?」


《ララミー!アメリカコロラド州は、トリケラトプスにティラノサウルスも出てる地層の名前!!

 いい名前だなぁ‪……‬きっとコレもいいジェネレーターなんだろうなぁ‪……‬♪》


 コトリちゃん、O.W.S.だとベタ褒めだよね。

 今も頬擦りしてるし。


「じゃ、さっそくだけど、ホノカちゃんだったね?」


「はい」


「‪……‬重すぎるから、お願い」






「ふんにぃぃぃぃぃ、ヨイショぉ!!」


 強化済みでこの重さか!!

 背中のジェネレーター入れる場所に入れるのも一苦労だ!


《あー、確かにコレ喜んでられないところかも。

 頑丈に作りすぎだ‪……‬AI社最高級のタイフーンの方が遥かに軽いや》


「出力と容量も、ちょっとまだ誤差の範囲内かなー?

 いやでも、地球でも改良は進んでるって妹社長さんがムキになってたし、これでも試作型より軽くなったんだよ?」


《妹‪……‬苦労かけるな今も‪……‬

 ま、大きさもそこそこだし。

 でも、アヤナミちゃんとこのかすみよりは軽いんじゃないかな?》


「霞も今は昔のエクレール並みの出力だし、容量はやばい事になってるよ」


《そりゃアップデート版が楽しみだ》


「ぜーはー‪……‬あのー、重労働させておいておはなしっすか二人ともー?」


「ごめんて。

 じゃ、悪いんだけど、武器はフレームをここから一歩外に出ないとつけられない。

 乗ってもらえる?」


「うへぇ」


 人使い荒いなぁ‪……‬




 という訳で、コア正面を開いて潜り込む。

 コトリちゃんを座席の後ろにセット。

 再び閉まるハッチ。立ち膝みたいな乗り方のここの中、神経接続プラグを背中の端子に刺して‪……ヨシ!



<OPERATING SYSTEM : START>

 カカカカカ‪……‬プゥゥン‪……‬

<2‪……‬45‪……‬78、100%>

<起動開始>

<パイロットデータ認証:認証確認>

<人工知能システム:セッティング>

<神経接続:良好>

<網膜投影開始>



 モニターに浮かぶ文字、そして視界はコックピットから直接カメラの映像に切り替わる


 ピッピッピッピッピッピッ♪


<各部チェック開始>

<関節制御:異常なし>ピッ

<FCSトレース:誤差修正中>ピッ

<動力伝達:正常>ピッ

<推進装置:アイドリング中>ピッ

<無線システム:チェック終了 以後会話相手表示>

<オールチェッククリアー>



<eX-W通常モード>ピピン♪




<コトリ>

《メインシステム、通常モード起動するよ》



 私と機体が一つになった。



<カモメ>

『───ホノカさん、緊急事態です!

 聞こえますか!?』


 と、聞こえて来たのはカモメちゃんの声だ。


「カモメちゃん、外の様子はどう?」


<カモメ>

『既に、ハロウィンスコードロンの4機が、

 ほぼ無傷の個体がギフト2の周りを包囲しています』


 マジか‪……‬アイツらが‪……‬!


「早いところ出ないとね‪……‬!」


<カモメ>

『‪……‬それが‪……‬ハロウィンスコードロン、ランク9のジェーン・ドゥから直接の通信の要請が入っています。

 受けますか?』


 あら、何かな?


「聞こうか。ね、話すぐらいはさ」


<カモメ>

『分かりました。

 ‪……‬通信繋げます』


 という訳で、何を話すか聞いておこうか。


<ジェーン・ドゥ>

『───聞こえるか、大鳥ホノカ』


「聞こえるよ。降伏でもしろって?」


<ジェーン・ドゥ>

『本来はそういうべきだろうが‪……‬すまないが逆だ。

 我々と戦ってくれ。半分以上、私という個体の私情だが』


 あらまぁ、嫌なお誘い。


「嫌な話だね。私は金にならないことはしたくないんだ、酷い人間だしさ」


<ジェーン・ドゥ>

『生きてなければ金も意味がないだろう?

 脅しで悪いが、その船が外のダメージからして、我々が本気を出せばすぐ破壊できることぐらいは分かる。

 お前も分かるだろう?

 この『決闘』に応じる以外、道はない』


「『集団リンチ』の間違いじゃない?

 1対4は卑怯でしょ」


<ジェーン・ドゥ>

『やれるはずだ、『イレギュラー』。

 お前は一度、我々から逃げ切っている。

 あの時共にいたオルトリンデ以上の実力が、あるはずだ。

 そうでなければどのみち死ぬ。

 選択肢も時間もない。分かるか?』



「私が馬鹿なの認めるけど、いちいち『分かるか』って聞かれるのは癪に触るね。

 そこで待ってなよ。速攻でぶっ殺してやるからさ!!」



 はい通信終わり。ガチャ切り!!



<ソラ>

『ぶっ殺すだなんて、大きく出たねぇ?

 1対4だけど、経験ある?』


 ソラさん、脚元でニヤニヤしながらそんなこと聞いてくる。

 へへ、確かに大口叩いちゃったかも?


「逃げきれたことしか。でもやるしかない。ですよね?」


<ソラ>

『その通りさ、傭兵スワン

 さ、武器を積もう!』


 ソラさんが脚元で指示する通り、一歩前へ。


<ソラ>

『オーライ!ストップ!!

 よし、良い子だ‪……‬これから武装を装着する!

 ヒナちゃんにもうこの倉庫の使える武器のリストは渡してあるから、


 じゃさっそくで悪いけど、オーダーを聞かせて!?』



<コトリ>

『オーダーは決まってる!

 必要なのは、『確定力』、『火力』、そして『搦手からめて』。

 この単語でそうアセンする?傭兵以上に地球じゃあ天才機体構築屋アーキテクトの名で通ってた新美ソラ!?』


<ソラ>

『おっけー!!

 任せなて‪……‬まずは左の67番ラックのアサルトライフルだ!』



 67番って書かれた所の固定されたライフルが、天井を移動するマニピュレーターに掴まれてやってくる。


 これは‪……‬ペラゴルニスの腕があった頃使ってたライフル!


<ヒナ>

04AR B. feinbergiバンビラプトルちゃん!

 なるほど、単発火力より対Eシールド貫通性能と精度か。

 でも、総火力は良いとして単発火力が低いぞ?』


 不穏なコトリちゃんの解説を聞きながら、左腕のマニピュレーターでアサルトライフルのバンビちゃんを掴む私。



<ソラ>

『そっちはこれで補う。

 3番のラックに良いのがあった』



 船の天井のマニピュレーターが次に選んだのは、何やらケーブルが貼られた円柱な筒のライフルだった。



<コトリ>

『『ゲイルドリヴル HLS-6』!?

 レイシュトロームのハイレーザースナイパーライフルか‪……‬しかも70年の間に型番変わってるな!』


 ハイレーザースナイパーライフル!?

 なんか強そう!

 さっそく右腕でキャッチ!



<ソラ>

『ちょっとエネルギー喰うけど、Eシールド貫通性能と大半の装甲は撃ち抜けるよ。

 確実な削りはコレさ』


<コトリ>

『ホノカちゃんには会うけれど、まだ総火力不安だ』


<ソラ>

『じゃ、うちの社の自慢をば』


 と、今度は後ろへ。

 何か壁の30番って書かれた札のラックからミサイルポッドみたいなのを持ってくる。


<ソラ>

『AI社製新型プラズマミサイル、『AIM-08 ソーラーフレア』だ!』


<コトリ>

『あの威力と引き換えに弾代高いやつか。

 弾代がインペリアル持ちで良かった』


 コトリちゃんがわざわざいうレベルに高いんだなさては??


<ソラ>

『確かにそれはよかったじゃん!

 しかもこれ、VTFだし余計高いんだ』


<コトリ>

『VTFプラズマミサイル!?地獄だ‪……‬高くなけりゃ一択武器だよ、それ』


「ねー、ぶいてぃーえふって何ー?」


<コトリ>

『近接信管、Variable Time Fuseの略だよ。

 普通は接触して爆発するのが主流のミサイル弾頭だけど、これは近づいただけで爆発する。

 だからギリギリ回避みたいな芸当が出来ないし、プラズマだと高熱エネルギーの太陽みたいなのが発生して弱い装甲なら一瞬で蒸発するよ』


「やばいな、それ」


 でもお高いんでしょう?って感じにたがわないやつだ。


<ソラ>

『武器はこれで充分だけど、オマケで格納にダガーと適当なハンドガン入れとくね』


 と後ろに回ってマニピュレーター付きの作業用の車で、コトリちゃん大好き、私が苦手だったブレード訓練でお世話になった『03PB T-cheloniformis』ことダガーと、ハンドガンが脚部の後ろスカートアーマーの内側の格納部分に入れられる。


<コトリ>

《意外と積載量余裕あるな‪……‬》


<ソラ>

『でしょ?

 ここでじゃあ、搦手の為のものを積んじゃおう』


 と、上のクレーンでやって来たのは、レーダーと‪……‬何やら盾みたいな物二つ左右に、と細いレーダーだ。


<コトリ>

《一個は『三式加賀』か。

 軽量の割にいい距離のレーダーと、強力な対ECM性能のあるやつだけど‪……‬もう二つの肩用は何?》


<ソラ>

『それはね、『試製型平沼』っていうの』


「ヒラヌマ‪……‬??」


<ソラ>

『強いて、装備のカテゴリを言うなら‪……‬『ステルス』かな」


 ステルス‪……‬?


<ソラ>

『ある一定時間、相手はロックオンもされずレーダーにも映らないし、ブレードホーミングも効かなくなる。

 姿以外は隠せるのさ。ただ、いいレーダーないと自分も見えなくなっちゃうデメリット付き』


「なるほど‪……‬!」


 両肩にそのステルスとかいうのが、余った左背部にレーダーが付く。


<コトリ>

《これで用意ができたか。

 じゃ、後やることは一つだけだね》


「一つだけ?」


<コトリ>

《模様替えだよ。

 カラーシフト塗料、変更。プリセット01》


 途端、カメラに見える腕とかにビリリと静電気みたいな電流が走って、

 暗い色だった装甲とかが、見慣れた明るいグレーと黒、ちょっと入った黄色のアクセントがある色に変わる。


「いつもの私の機体の色!」


<コトリ>

《ちょっと電気を流すと色が自在に変えられる塗料って便利だね。


 これで、この機体は『アルゲンタヴィス』だ》



 わーお!

 脚パーツに腕パーツ、いつものが大破した上に、残りはティタニスとペラゴルニスのパーツに使われた、私の最初の愛機の名前!


 そっか‪……‬戻ってきた!


「久しぶり、アルゲンタヴィス。

 またお願いね」



 アルゲンタヴィス、いつでも出撃可能だ!



<ソラ>

『さて、ハッチ開ける前に一応説明ね。

 零式信濃フレームは、見た目こそ細い印象だけど、大和重工の2機1組ツーマンセル運用の中で、五式大和と同じく前衛を務める機体だよ。


 見た目以上に、重いし機動力は軽量機という感じはしない。

 内装だけマシな1001Bフルフレームに近いかも』


<コトリ>

《だから助かる。

 この子もそれで鍛えた身だしね!》


「1001B懐かしいな‪……‬でもそれだと変わったところって少ない感じですかソラさん?」


<ソラ>

『まぁでも結構違うところもあるよ。

 まず腕の射撃安定性と精度は1001B腕より上だね。その上、レールガン使用前提だからエネルギー武器適性も高い。気持ちハイレーザーの威力が上がるよ。O.W.S.ライフルも問題なく当たる。


 そして、このフレームは大和重工初の『UFO』前提フレームだ』



 UFO!

 あの、ハロウィンのとこの白い機体がやってたやつ!


<ソラ>

『コトリちゃんパイセンならよくわかってると思うけど、いざって時は攻撃より逃げに使って。

 70年経ってもUFOは速すぎる。慣れてないと扱いきれない』


<コトリ>

《アレに慣れる化け物なんてそうそういないよ。

 イレギュラーでもね‪……‬君も昔から振り回されてた。

 一個聞きたいけど、なんでそんなeX-Wに積むもんじゃない物が乗ってんのさ?》


<ソラ>

『色々あるの、宇宙開発時代の地球はさ。

 ま、9割の理由は『自前で宇宙船飛ばすため』って事で察して!』


<コトリ>

《パクられてんじゃん、君のやった事》


<ソラ>

《完全にパクられてないからこうなってるの!

 難しい話終わり!!


 続きだけど、零式信濃フレームの脚は蹴りが強いよ。

 等々、構え撃ち時の安定性の為のバンカーの『よく使う間違った方法』に対応している》


「どゆこと?」


<コトリ>

《地面に固定するための脚のパイルバンカーを敵機に蹴りでブッ刺せば強いって事》


「こっちの方が私には分かりやすいね!」


<ソラ>

《でも間違っても地面に撃ち込んで急旋回しないでよ?

 整備屋がガチで泣いちゃうから!》



「オッケー!って言いたいけどやっちゃうかも!!

 後は、出るだけかな!」


<ソラ>

『長くなったけど、今までに話頭に叩き込んで挑んでよね!

 データ送信、踏まないよう気をつけて、エレベーターまで指定ルートで進んで!』


 ソラさんがアルゲンタヴィスの脚元である1箇所を───この格納倉庫の入り口であるエレベーターを指差すと同時に、視界に映る指定ルート。


「色々ありがとうソラさん。

 機体まで貰っちゃって」


<ソラ>

『もちろん、請求書は後で送るよ?』


「うへぇ。この任務割に合わないなやっぱ!」


 金取るんかーい!いや金かかるけどさ。


<ソラ>

『‪……‬じゃあ、なんで割に合わない戦いに行くのさ?

 アイツら、なんていうか面倒そうな強さだし。


 このまま逃げたほうが、良いんじゃない?』


「‪……‬言ってなかったけ?

 一回逃げてるんですよねー、私。

 それもそれでだいぶ割に合わなかった結果でしたけど」


 エレベーターにたどり着くアルゲンタヴィス。

 これでよし。



「だったら、今度は全員の命ぐらい貰わないと。

 マジで割に合わない任務になるんで。

 今まで消し飛んだパーツ代分は命で払ってもらいますんで」


<ソラ>

『‪……‬なるほど、傭兵スワンなんだな君は』


「辞めるために金稼いでますけどね!」



 ははははは!

 全くもって矛盾した感じで笑える!



<ソラ>

『‪……‬どのみち、この船動かすにも敵を引きつけてもらわないと困るしね。


 分かった。無事私達が飛び立てたら、アイツら全員倒せたら、機体の請求額タダにしてあげる』


「マジですか!?」


<コトリ>

《あらま、守銭奴の新美ソラちゃんどこ行ったんだい?》


<ソラ>

『86になって身体は若いままだけど、それ以外は丸くなるんだよね、自覚するほどには。


 頼んだよ、傭兵スワン

 撃ち落とされたら、タダ働きどころかマイナスだ!』



「そう言われちゃ、やる気出すしかないね!!」




 エレベーターが上がり始める。

 天井のハッチがゆっくりと開いていく。


 ───すっとろすぎて、待ってられないね。




「行ってきます。

 4人のオバケ退治に」



<ソラ>

『言ってきな!期待してるからさ?』



 ソラさんが親指を立ててウィンク。

 見えてないかもだけど、ウィンクで返しておく。


「コトリちゃん!」



<コトリ>

《メインシステム、戦闘モード起動する。

 さぁ、見せてみな!君の実力ってやつを!》



 神経接続を通して、機体へ私の意志が流れる。

 アルゲンタヴィスが跳躍して、ブースターの出力増大と共に、エレベーターから外へ飛び出す!





「言われなくても、戦闘開始だ!!」






          ***

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