[変更済]MISSION 12 :大変やばい任務へのお誘い
私、大鳥ホノカちゃん15歳。色々あって
そうそう、辞めたい理由っていうのの一つがさ、この仕事お稼ぎは大変良いけど、大変いいお稼ぎのお仕事は大抵やばいからなんだ。
それでこそ、死んでもおかしくないような。
私はねーできれば頭も悪いのでなーんも考えず普通に生きたいんですよ。
普通に会社勤めして、普通に結婚して、良い旦那さんと幸せに過ごすようなヤツ。
まぁ、無理だったから傭兵になっちゃったけど。
だからさ、
「無礼を承知の上で、止めなかった私にも責任がある。
だが……こちらのアンネリーゼ殿相手にあそこまで立ち回ることができたお前に、どうしても頼みたい依頼がある」
……こういう高評価は、嬉しくないんだよねー!
場所は、いつものマッコイ商店。
の、入り組んだ奥にあるパーツ保管用コンテナの中。
内緒話には最適だね。マッコイさん達めっちゃ聞き耳立ててるけど。
相手は、いつかのインペリアル正規軍の人。
フィリアさんだっけ??
「…………前の『誰でもいいから』の『誰でも』から出世したもんですねー、私??」
「あの戦い、最後の謎の自立兵器を相手取ったお前が、すぐにAランクになったのは驚かなかったよ。
その前に、ユニオンに雇われた時は、やはりというかしまったとも思ったな……
そうなるわけにも行かないほどの、こちらに取って大切な作戦が近々ある。
せめて聞いてほしい……もう話しても良いか?」
「…………そういうのって後戻り出来ないのに気になるんですよねー。
んで?なんなんですか??」
と、一度あの私を襲った4脚に乗ってた赤毛の美人さんと目を見合わせて、そして、マッコイさん達も何故か手で招いてこっちに来させる。
今この場にはいつもの面々、
私、私が抱えてるサポートAIな3頭身おチビロボのコトリちゃん、頼れるオペレーターのカモメちゃん、この店のやばい主人のマッコイさんに良心的整備士のユナさん、そしてフィリアさん達インペリアルの二人。片方は同じ
この面々で、まるで円陣を組むように立たせて、なるべく聞き耳を立てられる距離まで近づかせて……話し始める。
「…………信じられないかもしれないが、もう間も無くこの火星に、地球製の宇宙船が降下する」
「え?」
《……地球製の宇宙船?》
なにそれ?どういうこと?
「ここ火星の人類の祖先の星、地球はもう……汚染されて人が住めないのは小学校で習うんじゃ?」
「詳しくは、これ以上は分からない。
300年以上宇宙を漂っていたのか、あるいは……という事ですら上から『まだ聞くな』と言われている。
重要なのはその宇宙船……名前を『ギフト2』は、
我々の知らない技術や、場合によっては特殊な素材の宝庫であり、
どの陣営が手に入れるかによっては火星の歴史が変わるレベルの代物だ、という事だ」
なにそれ……!
「……企業複合体トラストは、この宇宙船『ギフト2』から得られる技術を公平に分配する名目で確保すべく、
我々インペリアルへ、『ギフト2』の情報開示優先と財政破綻時に追った借金の減額とを引き換えに、最初に確保する権利と義務を買わせてきた。
元より、我らが皇帝陛下共々バリアの外の開拓を歴史的に行ってきたのは我々だ。
空から落ちてくる得体の知れない宝を有する権利はあると言っても過言ではない。
……ただ、当然だがそんなものを欲しがる相手は我々インペリアル意外にもいる」
なるほど……そりゃそうか。
「ユニオンとオーダーってこと?」
「ああ。トラストは完全にインペリアルの味方ではない……というより、全ての陣営の味方だ。
オーダーは、どこか信用できないが今回動きは緩慢だ。
問題は、やはりユニオン。
先日からの戦いで、『ギフト2』降下地点への足がかりとして、海に面した港を奪われている」
《……ちょっと待って。
降下地点への足がかりが港?
もしかして、その宇宙船の降下する場所って、そこのクリュセ海の中?》
コトリちゃん、この短言回しでそんなこと分かるとか天才か!?
「……違う。
「!?」
え……海の向こう!?
海の向こうって今言った!?
「そ、それって……ガチの未開拓な、自立兵器の本拠地って事っすか……?」
ユナさんのいう通りになるよね、そこって!?
「それ……マジでやばい場所なんじゃ?
ここもバリアの外だけど……ここまで栄えているから平気ってだけで、すんごい敵だらけの場所なんじゃ……!?」
「────だったら、良かったがな」
良かった!?何が!?!
私の脳みそじゃ何が言いたいかわっかりませーんって言葉に続いて、フィリアさんなんと懐から今時珍しい紙の地図を出して広げた。
地図を……そう、この火星の地図を……!
「この円が、ご存じ人類生存圏。
その外周の点在しているのが我々インペリアルの領土……ここがヨークタウンだ」
海に向かって点在する、赤く塗られた場所、そしていくつかの街の名前を超えて出る、ここ巨大歩行要塞ヨークタウンのある同名の地域。
「そして、この海の向こうの、ほんの三日で到達できる場所が、目的の場所だ。
火星の地形の都合上陸路も存在するが、陸側の森林地帯、砂漠地帯共に遠回りのルートになる」
海を越えて、対岸の陸地に指が伸びる。
「あれ、名前が書いてある?」
その大陸は、既にいくつか線とか、山とか川とかの線も詳細に書かれてるんだよね。
区画整理されたみたいな感じに、色付けされてる。
「我々を見くびるなよ。すでに、何度か上陸と探査は行なっている上に、かなりの距離までの探査は終えている。
ここの全貌……自立兵器の巨大プラントの大まかな位置を、少なくない犠牲と財政破綻を経て手に入れた。
いつか、我々が取り戻すために」
「あれでも……こんな海の近くなのに、真っ黒な場所あるんですね」
何気なしに、私は黒く塗りつぶされている場所……何かうっすら文字が書いてある場所を見つけちゃった。
「ここは……英語?
しれ、んと……あれ?」
《『
うわ!ヒナちゃんどうしたのそんなに驚いた声出して!?
《久々に見たなこの文字……生前以来だよ》
「なにその……さいれんとえりあ、って?」
「ここは────自立兵器ですら立ち寄らない、誰も調査をできなかった場所、
人類未踏査領域。
誰も立ち入って帰ってこなかった場所だ」
「だれも……帰ってこなかった場所……!?」
なにそれ……怖い……!
「そう。誰も。
本当に誰もね」
と、今まで黙っていた、名前なんだっけ?赤い髪の傭兵さんが口を開いた。
「私の名前、アンネリーゼの元となった、私の祖母……二つ前の同じく傭兵伯と呼ばれ、私を育て上げた厳しく強い母よりも遥かに強かったと言われたお
私は顔を肖像画や写真でしか知らない、母がその武勇伝を幼い私に語って聞かせたお祖母様ですら……」
仰々しい言い方だし、結構主観混じりな事だけど、まさか帰ってこなかった人の家族がこうやっているだなんて……!
嘘ではないよ、アンネリーゼさんだっけ?間違いない。
「ここは、侵してはならない『領域』。
そんなことを言う人間もいるわね。
でも、まさかそのどう言うわけか帰ってこれない場所へと、地球からの『
まるでコメディのような話ね?」
「まさかそれって……!」
アンネリーゼさんの言葉で、何が起こるのか分かってきた気がした。
目の前で、フィリアさんは固唾を飲むって感じにこっちを見て、やや溜めてから言いづらそうな『依頼内容』を……本題を話し始める。
「……既に信頼出来る幾人かのスワンにも、今から言う依頼をかけている。
依頼内容は、
敵は、後ろからくるユニオン、横からくる自立兵器群。
そして────前に全く未知の何かだ」
……なんてこったい。
教科書に載るレベルのインペリアルの大偉業に、あるいは二度と帰ってこれない宝探しに、随伴しろってこと!?
「……今のところ、無茶苦茶すぎて、受ける理由がないんですけど」
「あは!分かっているじゃない!
そう言う危機管理意識、それが私相手に善戦できた一因かしらね?」
《は?こっちは勝ってたが??》
「やめなって、良くても相打ち、殺しきれなかったでしょきっと」
「ふふふ、次生きてお互い敵だったら続きをしましょう?
でも……まぁ、今回は味方だと嬉しいわね。
フィリアさん?ちゃんと報酬と条件を教えてあげなきゃ」
なんて悪戯っぽく笑うアンネリーゼさんを横目にため息をして、すぐにこっちへ視線を向けるフィリアさん。
「……遠征の都合上、弾薬費や修理費はこちらで持つ。
その上で…………これほどの未知数しかない任務だ。
前払いで8万cnだ。
成功は──────その10倍、80万cnを約束する。
……追加報酬も、場合によっては出す。
…………マジ?
《Aランク帯の平均報酬、いくらだいカモメちゃん?》
「平均で、4万cn。
20倍です」
「20倍かぁ……!
生きて帰れば、一気にお金が手に入るわけだーすごーい。
『生きて帰れれば』って言う点を除けば是非受けたいなー……!」
無理ぃ。
絶ッッッッ対死の危険が隣で肩組んでジュース奢ってくるレベルの近さにあるってぐらい、これやばいミッションじゃん……!
よしんばこの条件でも即答は無理だよね!?
「気持ちが分かるがあえて言わせてもらう。
お前の実力が必要なんだ。
お前は強い。私の栄えあるインペリアル
それどころか、お前たち
それほどの実力が欲しい……依頼料を釣り上げてもいい」
「あー……っと、」
「言っておくけどまさか、私が本気じゃなかっただけなんて言う逃げ方はしないわよね?
酷いわ、私……お遊びは何より真面目に、全力でやるタイプなのに……
全力でやって、あんなギリギリ。
あなた────運が良ければ今日、『ランク2』になってたかもしれないのよ?まぁ、させないつもりだったけど」
「いやいや、まだAランクなったばっかりじゃないですか。
そんな簡単にランク2だなんて……」
「なれますよホノカさん。
先程、あなたはランカースワンになる条件を満たしかけていました」
え、マジ?
カモメちゃんどう言うこと??
「何言ってんのカモメちゃん?」
「そういえば、お教えしておりませんでしたね。
ホノカさん、Aランクからランカースワンに昇格する方法、実は二つの方法しか存在しません」
「二つ?」
「一つは、『ランカーの空きが出た時に自分の評価を高くしておくこと』です。
言わば、準ランカーと判断される戦果をトラストが認め、引退や死亡などで消えたランカースワンの穴埋めとして、最低ランクである50〜40までの順位に繰り上がる形になります」
「へー……なんか、運が良ければと言うか、そもそも
「ホノカさんの言う通りです。
ただそうなるので、本当にランカーになりたい方は二つ目の方法をみなさんとりますね。
そちらなら確実にランカーになれるので」
「…………まって、もしかして……それって……!」
なんか、おバカな私でも分かっちゃった。
もう一つの方法が確実、ってことは……!
「ご想像の通り、
もう一つは『既存ランカースワンを殺して空きを作り、順位を奪う』と言う方法です」
「…………」
怖……なにその治安悪い方法……!!
「あらら、案外欲がない反応。
この方法なら、殺した相手の順位をそのまま奪えるのよ?なにせ、負けたんだから当然相手より格上なんでしょう?」
と、言いながらアンネリーゼさんが楽しそうにステップしながら隣に来た。
ぽんと肩に手を置いて、その綺麗なお顔がすぐ真横までやってくる。
「───あなた、惜しかったわね。
運が良ければ、今日ランク2になれたかも?」
蠱惑的な声で、そんなことを言われる。
「いや、無理でしょ。
よくて相打ちなんじゃないですかね?」
そりゃそうだ。
明らかに、差し違える形だったもん。死んでたよきっと。
「あら。
ちゃんと分かってるのね。やっぱり、強いわアナタ」
ご冗談キツいですー。
そう思っている間にポンポンと肩を叩いて離れるアンネリーゼさん。
ずっとこっち見てる目が───なんというか、ロックオン警報聞こえてきそうなぐらい怖い感じする。
「…………改めて頼めないだろうか、大鳥ホノカ?
お前の力が必要なんだ」
「…………」
莫大な金、莫大な危険。
ハイリスクでハイリターン。まさに博打。いやですねーマジで。
…………これまでとはなんか違う感じの危険を感じる。
魅力的なお金が、余計にそう感じさせるんだ……
「…………ちょっと、考えさせてくれないですかね?」
だからか、どうしてもそう言う以外に答えは今なかった。
やばい匂いだから……考えたい。
「そう言うならまだ可能性はあるか。
出港は、明日の夜20時になる。
詳しいルートの内容は、その時に教える。
…………来ると決めたのなら、機体をこの情報記録装置の中の地図の場所に運んでくれ」
す、と渡される、うわめっちゃ古いタイプのちっちゃいカード型のメモリだー。
これどうやってみるんだ……いやだから安全ってやつ??
「今日は失礼する。
ああそうだ、ついでなんだがここのショップの主人と整備士。この前は既知の人間が世話になった。
それでなんだが、今回の遠征にもし良ければ整備の補佐として同行できないか?
理由は来れば分かるが、人員が足りないんだ。
それも考えておいてくれ……報酬は出す。
では失礼する」
そう言って、フィリアさんとアンネリーゼさんは帰って行った。
「…………どうするっすかこれ?」
「どーしようかユナさん?」
うん、迷う!
やりたい気持ちもやりたくない気持ちもある!!
………………傭兵系美少女、大鳥ホノカちゃん最大の選択が迫ってる……!!
***
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