MISSION 2 :一難さってまた一難。勘弁してください








 ヤバい!ウェアなんとかが、なんか痛そうな拳を振り上げてくる!!



「避けなきゃ‪ダメなヤツじゃん!?」



 私はこの時、慌てすぎてコックピットの中で、本来ブーストってやつを起動するペダルの左と一緒に、右側のペダルを一緒に動かしてしまった。


 瞬間、聞こえた『ドヒャァッ!』って感じの爆音と、真横に向かってすごい衝撃が。


「うわぁぁぁぁなにぃぃぃぃぃ!??!」


 結論から言うと、私の乗ってるロボが真横に向かって、本当に真横にスライドするみたいに凄まじい速度で移動した。


 例えるなら、真横に向かって殴られたみたいに吹き飛ばされた感じ。

 でも殴られてない。ウェアなんだっけは拳を空中に射出していた。

 いやまって、何それ伸びるの?そんな痛そうなの叩き込まれるところだったの?


 そんなこと思ってるけど、さっき叫んだ拍子に肺の空気全部外に出されたみたいでそれどころじゃない!


「何‪……‬今の‪……‬?」


<オペレーター>

『アサルトブーストをもう理解したのですか!?』


「いやまったく理解できてません!!

 何今の!?」


<オペレーター>

『eX-Wが『機動兵器』と呼ばれる所以の一つです。

 左右両肩、脚部ふともも辺りの前を向いているブースターを利用して、瞬間的に2次元方向へ凄まじい速度での移動ができます。


 『強襲用2次元急加速運動アサルトブースト』と呼ばれるこれが、eX-WがMWでは簡単に勝てない存在となる理由の一つです』


 いや長くて分からないし、てか目の前にまたウェアなんだっけさんが来てるし!!


「分かんないけど、わかる努力します!!」


 やり方は知ってる。後は覚えるだけ。数学のテストと同じ、公式覚えたらそこからどう使うか覚えるだけ!!

 両脚のペダルを行きたい方向に同時に!!




 ───私は、この時、


 力みすぎて、敵のウェアなんとかさんの方向へアサルトブーストとかをやっちゃったんです。



 何やってんの私ぃぃぃぃぃぃ!?!?!



 声にならない叫び声、無茶苦茶にペダル踏んじゃったし握ってる腕のコントローラー的なの動かしちゃった。



 そしてら、



 ガギャァァンッ!?



「えっ、蹴った‪……‬!?」


 なんとまさか、その勢いでこのロボの脚がウェアなんとかを蹴り飛ばした!?

 その威力!まさか、相手の上半身もげた!?


<オペレーター>

『ブーストチャージまで‪……‬!

 すごいですよ、当てる方が難しいんです。

 本来一切武装が使用できない状態での緊急近接攻撃手段なので‪』


「ま、まぐれで助かっちゃいましたぁ‪……‬!」


 緊急近接攻撃、って言葉の割になんて威力なんだろう‪……‬

 ‪……‬‪……‬人が乗ってるところ、胸の辺りだよね?

 脚がもろに当たって‪……‬めっちゃへこんでる‪……‬


<オペレーター>

『ウェアウルフ残り2機、来ます!』


 ってヤバい!今更、人殺しに感傷抱いている場合じゃないんだ。

 また2機‪……‬増えてない!?


 しかも、なんか、ワイヤー出してきた!?

 なんかワイヤー張ってこっちにくる!!


<オペレーター>

『いけません!あのワイヤーの素材で低速侵入されるとEシールドは突破されます!

 左腕の武器をはやく!!』


「ちょっとま、うわ!?」


 まってはくれない!

 なんかワイヤーは例のバリア突破してくるし、まずい絡め取られる!!


 左腕の‪……‬ミサイルから切り替えて、引き金引いて!!



 ブゥン!


 左腕に取り付けられた、四角い装置から青い光の筋が伸びる。

 いや、光の筋じゃない。

 円柱状なそれは、触れたワイヤーを赤く染めて熱して切り裂く。

 切れた端にいたウェアウルフ、だっけ?が解き放たれた勢いで、近くの建物に衝突。何かに引火して爆発する。


「これって‪……‬!?」


 思わず動かした左腕でもう一方も切っちゃって、伸びる青白い光を見る。


<オペレーター>

『レーザーブレードです。

 その機体唯一のレーザー兵器。

 そして────バーンズアーマメンツ製品全ての最大の敵です。

 2時方向、斬って!』


 にじほうこうの意味分かんなかったけど、右側からあのウェアウルフがやってきた。

 パンチが当たる前に、こっちも左腕のレーザーブレードとかを構えて、振り下ろす!!


 バシュンッッ!!!


 右腕の銃が効かなかった装甲が、あまりにもあっさり斬れて分かれる。

 豆腐、切る感覚みたい。おばあちゃんと一緒にお鍋作ってた時、包丁を入れた豆腐みたいに、サクッと切れた。


 何度も言うけど、

 弾丸を弾く鋼鉄のロボットが、豆腐みたいに斬れたんだ。


「すご‪……‬!!」


 ブン、とレーザーブレードが消えたのをみながら、やっぱり嫌なぐらい当たりどころが人入ってる位置に切れちゃった機体を見て素直にそう思ってしまった。



 改めて、この機体の武器の選択がどう言うことか分かってきた気がする。

 普通の攻撃は、右腕の銃で。

 遠くだったり少し銃じゃキツい相手には、ミサイルで。

 そして、近づかれたりしたらこのレーザーブレードで。

 まるでと言うか‪……‬まさに、私みたいな用語覚えられないおバカさんでも、初めて戦った時でも普通に扱えるような構成の武器なんだ。


 ‪……‬‪……‬正直、助かった‪……‬





<オペレーター>

『MW群、ほぼ全滅です。

 ‪……‬‪……‬残りは、あのもう一人の方が行ってしまった格納庫ですね』



 と、無線で我に返った。敵は‪……‬いないよね?


「そういえば、さっきその‪……‬死んじゃった方じゃない子は?」


<オペレーター>

『‪……‬‪……‬ああいった状況では、初めての戦場でやる行動は二つに一つです。

 逃げるか戦うか。

 あなたは、戦った。凄いことです。

 でももう一人は逃げてしまった。

 ─────問題は、逃げた場所です』


 逃げるって‪……‬‪……‬


 その手があったか〜!!



 私やっぱりおバカでおマヌケだ‪……‬無駄に真面目って中学の頃いじめてきた子に言われたっけ‪……‬とほほ‪……‬


「‪……‬あれ、逃げた場所が問題って?」


<オペレーター>

『彼女は、強行偵察を成功させてしまいました。

 あの建物の中にいますが‪……‬その、中は、』






<僚機2>

『キャァァァァァァァァァァ!??!』





 あ、この画面の表示は、今話題にした子!!



<僚機2>

『なんなのよこれ!?なんでここにこんなのがいるの!?

 嫌だ、嫌ぁ!!来ないで!!』



 機体のAI的なのが空気を読んだのか、レーダーって書かれた物を大きく映してくる。

 なんとなく味方って分かる緑の点の方向、あの建物中っぽい感じの場所に赤い点‪……‬多分敵が一機増える。


「あの‪……‬レーダーみたいなのだと、一機だけみたいなんですけど、敵が‪……‬?」



<オペレーター>

『敵一機で、この怯え様‪……‬何か不味いかもしれません、その場で様子見をお願いします』


「待って、それって‪……‬見捨てちゃうの!?」


<オペレーター>

『非情と思われるでしょうが‪……‬ごめんなさい。

 何か、今入ってはいけない気がするので、』




<僚機2>

『こっちにくるなァァァァァァァァァァ!!!

 嫌ァァァァァァァァァァ!!!』




 多分私の乗っているのと同じ機体が、凄い勢いで建物から出てくる。


 バシュン!


 その機体を光が貫いた。


「え?」


 まって、私と同じ機体だよね?

 Eシールドは?守ってくれるはずのバリアは??


<僚機2>

『なんで‪……‬逃げたのに‪……‬!』


 バシュゥッ!!バシュゥッ!!バシュゥゥゥゥ!!


 ───守ってくれるはずのバリアが、次々とその光を通してしまう。

 私と同じ機体。そのロボが、助けを求めて伸ばした左腕が光に貫かれて吹き飛ぶ。


 穴だらけだ‪……‬外国のチーズみたいに、光に貫かれたところに穴が開いていく。



 ────助からない。

 見れば分かるよ、あんなの。



 そして、静かにこと切れたあの子の機体の背後から、


 見たことない人型の機体が────凄い異形な、なんだか飛行機のエンジンに手足生えてるみたいな青と白の機体が、出てきた。


 なんだろう、それを見て、変な直感が私に、湧いたんだ‪……‬


 同じだ。


 姿は違うけど、多分、

 私が乗ってるのと、同じやつ。



「え‪……‬eX-Wエクスダブル‪……‬ってやつ‪……‬?」



<オペレーター>

『────『ハードレインフレーム』!?!

 いけない!!

 AI社の「PLeX-Wプレックスダブル」!!


 最強の自立型無人エクシードウォーリアです!!!』



 なに、それ?



 ねぇ、これって、


 逃げた方が、良いやつ???





          ***



《ターゲット撃破。

 PL-1、レーダーにさらに反応確認。

 光学情報分析。中量2脚型、バーンズアーマメンツ製1001Bフレーム》


 複合カメラセンサーが動き、破壊した機体からまだ動く同型の機体を捉える。


<管制室オペレーター>

『PL-1。追加指令だ。

 残りのスワン1匹を殺せ。乗っている機体ごと完全に排除しろ』




《PL-1、追加指令了解。


 ターゲット確認、排除開始》



 ブゥン、と赤く光るセンサーと共に、両腕に装備したレーザーライフルを構え、撃つ。



          ***


 バシュン!


 撃ってきた!?多分Eシールドの意味がないやつを!?



<オペレーター>

『いけません!ハードレインフレームは低エネルギー負荷の特性で、レーザーライフルをはじめとしたエネルギー兵器を多用することに特化したフレームです!

 ジェネレーターが低出力型でも、雨あられと機体名通りレーザーを撃ってきます!』


「まって!レーザーってこの機体弱いんじゃ!?」


<オペレーター>

『その通りです!

 バーンズアーマメンツ社製『1001Bフレーム』のレーザー耐性は、ほぼゼロです!!』


 ダメじゃん!!

 当たったら死ぬじゃんか、そんなの!!


<オペレーター>

『‪……‬ユニオンは、主力級の自立型兵器を配備していた‪……‬?ああ、これはまた生きて帰っても、政治的に面倒になるお話です‪……‬!』


「生きて帰ったらの話でしょ!?」


<オペレーター>

『‪……‬大鳥ホノカさん。聞いてください。

 恐らく、あのPLeX-Wから逃げることは不可能です。

 今ここであれを倒すしか、生き残る術はありません』


「‪……‬生きて帰れるの、これ‪……‬?」


 最悪だ。

 何が最悪って、避けて、なんとか今避けてるから分かる。

 後ろ向いてダッシュしても、撃ち抜かれる。

 あの子みたいに、あの子乗ってた機体みたいにチーズみたいな穴だらけのスッカスカになっちゃう!!



 私は、人間だから!!

 穴だらけでスッカスカになったら死んじゃう!!




「でもどうやって倒せば良いのさ、これぇぇぇぇっっ!?!」




 正直、またあのエネルギーのゲージが減ってるほど動き回っている中、私は叫ぶしか今はできなかった。



 私、1秒後生きていられるかな?



           ***

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