第2話 パーティーの評価
「よーし! いよいよ神滅のダンジョンか」
「これまで誰も踏破者のいないダンジョン。気合を入れよう」
「皆さんに神の加護があらんことを……」
「……ん。でもその神、生きてる?」
「神は皆さんの心にいるのです」
それぞれ自由に話す輪の中に俺はいない。
なぜなら……。
「ぼさっとしてんじゃねえぞ! おめえはその荷物持ちすらできなくなったらいよいよ居場所なんざねえんだからな!」
「ランド……悪いが急いでくれ。俺たちはもうランドのスピードには合わせられないんだ」
荷物を全部押し付けておいて好き勝手言ってくれるものだった。
まあいい。レイの頭を撫でて気合を入れる。半分以上レイが持ってるからな……。
「では、参りましょう」
「遅れんじゃねえぞ!」
どやされながらもなんとかついていく。
神滅のダンジョン。Sランクパーティーがこれまでも挑んで敗れてきた謎のダンジョンだ。
五階層の時点で単体生物として無類の強さを誇るミノタウロスがフロアボスとして現れたという噂もあり、その先は不明。今のフェイドたちを以ってしても余裕はないだろう。
その予想は大方あたっていた。
実際攻撃開始直後から苦戦を強いられる場面が続出していた。
「くそっ! なんでこんなとこから魔物が!?」
索敵を兼ねて俺が先頭に出たわけだが、魔物や罠は俺が通り過ぎてからもパーティーに襲いかかっていた。
「おいランド! てめえサボってんじゃねえぞ!」
「今はそんなこと言っている場合じゃありません!」
「……んっ……もう、鬱陶しい」
3人が戦う中でフェイドと目が合う。
「ランド……倒せとは言わない。せめて発見をして報告をしてくれればいいんだ。だから……」
「ああ、悪かったよ」
それだけ言ってレイと先に行く。
俺もサボっているわけではもちろんないし、そもそも普通に考えれば先頭を行く俺たちが無事で、後ろの人間が苦戦することなんてありえないことはわかる。
要するにこのダンジョンが360度に渡って危険が潜むものとして認識する必要のある事態だが、俺へのストレスが溜まっているフェイドはそれを認めないわけだ。ならその罠も含めて集中して探すことにしたほうがいいだろう。
「くそ……! こんだけ使えねえならいっそ……」
「落ち着けロイグ。だが……確かに少し考えないといけないな……」
二人の声を背に、なんとかダンジョンを進んだ。
その後もやはり俺の後ろで魔物や罠が出現するケースは複数あったが、かなりの数を先んじて潰せたと思う。
この努力が後ろにいるパーティーメンバーに伝わることはなかったが……。
「最後まで使えねえ! くそっ!」
「まあまあ……ランドさんも精一杯やってくれていましたから……」
悲しいことにパーティーの良心と言っていいクエラですらこれだった。
まあいい。いよいよボス戦だ。
「よし。ここからはフォーメーションを変える」
フェイドの声で俺は後ろに下がる。
パーティーの前衛は戦闘時はロイグ。そして俺はターゲットがロイグに集中しすぎないようにヘイトコントロールをすることになる。
「ロイグはいつもどおり、メイルの攻撃の溜めを作ってくれ」
「あいよ! 任せとけ! 俺が前衛ってのがどういうもんか見せてやらあ」
あからさまに俺の方を見て挑発するようにロイグが叫んだ。
「俺は遊撃に回る! クエラは俺とロイグのフォローを頼む!」
「わかりました!」
「よし、行くぞ!」
俺には声をかけることもなく、フロアボスの間にフェイドたちは踏み込んでいった。
「行くか。レイ」
「ワオォオオオオオオオオオオオオオオオオオン」
「だぁっ! うるせえ!」
俺たちには気合をいれることすら許されていないようだった。
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