第74話

 夜、食事のために隊列を止めて休むということでアレンたちパーティーと共に食事を取ることになった。

 準備のなかった俺たちの分はマロンがご馳走してくれるとのことで、野宿の割にはかなり豪華な食事をもらっている。


「それにしても、本当に運が良かった。流石にゴブリンキングは想定外だった」

「それはそうだろうな……」


 普通はこのルートの護衛任務ならCランクパーティーでやる内容だ。

 Bランクパーティーは契約している冒険者ならともかく、護衛に使うには高額すぎる。

 AランクやSランクなんて雇っていたら普通の商人ならいくら稼いでも足りないからな。


「それでも流石に相手が相手だからと俺たちが呼ばれたんだけど……」

「面目ない……」


 アレンのパーティーは全員が剣士の男四人という構成だった。

 剣士は一人でバランスよく役割をこなせるのでこういう形でAランクまでくるのも珍しくないわけだ。


「助かったから良かったんだけどな」

「違いない」


 アレンたちが笑い合う。


「あんたたちならあそこもなんとかできるかも知れねえな」

「あそこ?」

「ああ……この依頼の前に幻獣の森に行っててな」

「幻獣の森か……」


 推奨がAランクの上位という場所だ。


「で、迷ってな」

「迷った!?」


 あそこは迷ったら出てこられないんじゃなかったか!?


「化け狐が出てな。助けてもらったんだ」


 なるほど。

 幻獣の森は稀少な素材の宝庫であると同時に、文字通り幻獣と呼ばれる超常の魔物たちが蔓延る場所だ。

 だがその全てが敵というわけではなく、むしろ神聖視され奉られるようなものもいる。フェニックスやフェンリルがそれに当たるが、基本手出しをしなければ敵ではない。

 この辺りはなんとなくヴァンパイアとの関係に近いかもしれない。


「妖狐っていうと幻獣の森の中でもかなりの大物なんじゃないのか?」


 それこそ敵対することがあればSランクパーティーでことに当たる相手。

 単体でSランク。神獣とも呼ばれる相手だ。


「ああ、俺らが会ったのはまだ子どもだったからな」

「親に敵だと思われたらここにはいられなかったしな」

「笑い話になって良かったなほんと……」


 やっぱりAランクパーティーは修羅場続きだな。

 まあその直後の比較的安全なはずの護衛任務でゴブリンキングを引き当てるあたり悪い方向にもってるのか……俺たちが来たことを考えると良い方の引きなのか……。


 しばらく他愛のない話をしながら食事を楽しんだ。


「ふあ……ふぁによ!」


 途中からミルムが黙っていたのは口いっぱいに食べ物を詰め込んでいたからに他ならなかった。

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