第73話

「何をしたんだ?」

「あなたにやったのと同じよ。怪我の回復。あとついでに少し、一時的なパワーアップね」

「そんなことまでできたのか……」


 あらためてすごいな……ヴァンパイアロード……。

 どうあれこれで噂話にしか聞いていなかったはずの俺たちのパーティーのことは少し、理解してもらえたようだ。

 Aランクパーティーのアレンたちとマロンは俺たちのことをもう少し正確に理解している様子はあるみたいだったが。


「お二方はそれぞれAランク冒険者。そしてたった二人のパーティーでありながらSランクパーティーとして活躍される高名な冒険者です」

「俺も同じAランクではあるが、正直まるで二人とも歯が立つ気がしない。次元が違う強さだ。よって、今回の指揮はランド殿に預けることにする。異論がある者がいれば申し出てくれ」


 言い過ぎ……とも言い切れないな。特にミルムは本当に次元が違うだろう。

 そしてそのことは一応この場にいるものたちには伝わったようで、アレンの言葉に反論は出なかった。


「よし。じゃあランドくん、まずは配置を決めてくれ」

「配置……か」


 助けを求めるようにアレンを見る。

 笑いながら続けてくれた。


「まずは周囲の安全を確保する斥候。これは適性がある者たちで構成するが……今回参加してるパーティーで言えばCランクパーティーにシーフが一人、Bランクパーティーが二つあってそれぞれ一人ずつ足が早いやつに出てもらってた」

「なるほど……」


 慣れてる人間に周囲に出てもらえるのは安心だな。


「それについては空から俺たちが見るのと、こいつを出す」


【宵闇の棺】からレイを召喚すると、冒険者たちがざわめいた。


「フェンリルだ!」

「聞いて驚くなよ? ランドさんはあれよりつええんだぞ!?」

「そんな馬鹿な!」


 さっきの戦闘で一緒になったやつらが得意げに何か言っていた。

 こうして噂は広まっていくんだな……。


「元々斥候をしてくれていた三人は、レイと連携してうまく経験を生かしてくれるとありがたい」

「えっ……」


 レイを見上げて固まっているのがおそらく斥候で出ていた三人だな。


「レイ」

『キュウオオン』


 合図をすると甘えるように三人のもとに飛び込んでいき、もふもふの身体を押し付けにいってくれた。


「うおっ!?」

「でか……いや柔らかいな」

「意外と可愛い、のか?」


 舐められたり頭を押し付けられたりしながらも何とか三人は打ち解けてくれていた。


「贅沢な斥候だな……」


 アレンが呟く。


「あとは?」

「ああ……えっと、隊列の前を守る前衛。側面をカバーする遊撃。そして、全体の安全を管理する殿。普通はここにリーダーが立つんだけど……」

「まあ空からカバーするか」


 アレンたちに前衛を担当してもらい、他のパーティーには遊撃を任せた。ここにエースもいてもらうことにする。

 休憩しながら交代でやるものらしいので、俺たちもアールの上で交代で見張りをすることになった。

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