第70話
「やっと追いついた……!」
「俺たちも手伝わせてくれ!」
俺がゴブリンキングと対峙したタイミングで三人の冒険者たちが森の中に入ってきた。
「って……なんだこれ……」
入ってきた冒険者たちが戦慄して固まった。
その原因がゴブリンキングなのか、俺の使い魔たちなのかがなんとも言えないところではあるんだが……。
「安心しなさい。全部彼の使い魔よ」
「ええ?!」
やっぱり使い魔の方だったんだろうか……。
さっきアールは見せたがレイとエースは見てなかっただろう。そもそもこの冒険者たちがアールを見せたときにいたのかどうかも少し怪しいところではある……。正直冒険者の数が多くて顔を覚えきれてはいなかった。
「私も彼の使い魔ね」
「それはちょっと違うだろ……」
戸惑う冒険者たちだが相手は待ってくれない。
隊列の奥に構えたゴブリンキングが動き出した。
「グルァアアアアアアアアア」
ゴブリンキングの咆哮が森に響く。
周囲にいたゴブリンたちへも無差別に襲いかかる咆哮による威圧。近くにいたゴブリンたちは意識を手放すほどの威力だ。
「なっ……」
「くっ……立ってられない……」
「なんであの人たち平然としてるんだ……」
近くにいた冒険者たちにも威圧が効いたらしく跪かされていた。
対して涼しい顔のミルムと、俺もドラゴンゾンビの咆哮に比べればそこまでではなかったので特に影響を受けていなかった。
経験は身を助けるな。
「レイ、エース、アール。三人を守っててくれ」
『キュウウウン!』
『グモォオオオ』
『きゅるるー!』
三匹の使い魔がそれぞれ動けなくなった冒険者の周りに向かった。
「うおっ!? これまさか……フェンリル!?」
「こっちはミノタウロスだぞ!? ゴブリンキングなんかより断然強い……」
「待て待てこっちもドラゴンだぞ……一体どうなってんだ!?」
三者三様それぞれに驚きを見せる。
やっぱり一度も見ていなかったようだ。もしかするとずっと森の中で戦ってくれていたのかもしれない。
「いや待て……これだけの使い魔がいるのに自分一人で戦うのか!?」
「普通魔物使いって魔物頼みで本人は……え?」
冒険者たちがあまり盛り上げてハードルを上げる前に終わらせることにした。
「【白炎】」
「「「えええぇぇぇえええええ」」」
【竜の加護】のおかげでコントロールしやすくなったので森を焼かずに済むくらいには扱えるようになった。
ゴブリンキングの素材に用はないし、燃やし尽くしても良いだろう。
──ゴブリンキングのネクロマンスに成功しました
──ステータスに反映しました
──【王のカリスマ】を取得しました
──【成長促進】を取得しました
──使い魔が強化されました
「結果は?」
「王のカリスマと成長促進らしい」
「またエクストラスキルじゃない! 【王のカリスマ】は使い魔のステータスを上げる効果みたいだし、私にも恩恵があるわね」
「【成長促進】も使い魔の成長を促進するらしいぞ」
『きゅるるー!』
「この子があまり大きくなるのは……まあいいわね。周りのゴブリンもこれで片がついたわ」
ミルムの言葉通り周囲にいたゴブリンたちは根こそぎ命を刈り取られていた。
最後に全部ネクロマンスで能力吸収を無駄なく使って終わりだ。流石に不可視化できる指輪があるとはいえ、ゴブリンの軍を率いるのは少しイメージとして難しいだろう。それになんとなく、王への忠誠で固められたこのゴブリンたちを使役するのは難しいと感じていた。
「俺たちが身動きすら取れなかった相手をあんなあっさり……」
「いや、そもそも相手はゴブリンキングだぞ?!」
「まあこれだけ強い魔物を率いているんだから、当然っちゃ当然なんだが……」
冒険者たちの視線が集まるのを感じた。
「とりあえず戻ろうか。怪我人はいるか?」
「いや、本格的な戦闘になる前に来てもらえたから……」
「ああ。本当に助かった……!」
「よかった」
ひとまず無事守れたようで一安心だった。
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