第37話 元パーティー視点

「聞いたか!? 竜の墓場だ」




 ロイグが叫ぶ。




「竜の墓場……?」


 フェイドが顔を上げて、宿に戻ってきたロイグを見上げた。


「ランドのクソ野郎が次に向かう場所だ! 俺たちも行くぞ!」

「私達は実質謹慎中の身ですよ!?」

「ん……でも、活躍すれば汚名返上、できる」


 フェイドたちパーティーは処分待ち。

 慣例に従えばいま勝手な真似はできないはずだった。


「竜の墓場の調査って話だったが、どうも最近の様子を考えりゃそれだけじゃねえのはわかる」


 竜の墓場はSランクパーティーにとって注目すべき場所の一つだ。

 ロイグを含め、全員がその様子くらいは把握している。

 ギルドマスターギレンは口止めしたが、あれは情報に信憑性を持たせるためのフリでしかない。


「どうも最近様子がおかしいだろう? あそこは」

「そうだな……」

「噂じゃドラゴンゾンビの復活まで言われてるくらいだ」

「だがそれは毎年のことだろう?」


 竜の墓場、ドラゴンゾンビの噂は刺激を求める人々にとって格好の話のネタだ。

 フェイドの言うように、毎年のように話に上がることではある。


「でも……ロイグがわざわざ持ってきたってことは……」

「ああ。今回は噂レベルじゃねえぞ。もしだ。ドラゴンゾンビが復活なんかしたら、聖女クエラの力が必要だろうよ」

「私ですか?!」


 最高神官、聖女としての活躍を期待されるクエラであればドラゴンゾンビの討伐にはうってつけの存在であった。

 現に問題を起こしていなければこの調査依頼はクエラのいるパーティーに降ってきたはずの仕事だったのだから。


「フェイド。お前はこのままでいいのか?」

「……」


 フェイドの頭を駆け巡るのは幼少期の屈辱。

 ランドに勝てなかった数々の思い出が頭をよぎる。

 払拭したと思ってなお、いまの両者の姿を思えばその差は残酷なほどに明白だった。


「万が一ドラゴンゾンビが復活したとなれば、クエラの力は必要だろうな」

「ん……ランドだけで勝てるはずがない」

「ですが一緒にいたという少女も相当に……」

「だぁっ! お前が弱気でどうすんだ!? ドラゴンゾンビだぞ!? ほっといたら国も大変なことになるんだ。名誉なことだろうよ?」


 クエラは渋るがもはや一人だけで変えられる流れではない。


「……みんなが、困る」


 メイルが追い打ちをかけるように告げた。


「みんな……ですか」

「ドラゴンゾンビを倒せるとすりゃお前しかいねえだろう!?」


 ロイグが念を押す。

 クエラもしばらく悩んだ後、覚悟を決めた。


「……わかりました。やります」

「よし……行こう」


 フェイドが立ち上がる。


「ん……」

「よーし! これで俺たちの必要性をギルドに理解させるぞ」


 フェイドたちパーティーの方針が決まった。


 ロイグの処分が決まり、ライセンス剥奪を伝える使者がやってきたのは、すでに4人が発ったあとだった。

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