第132話 元パーティー視点

「少しでも長く、俺と遊んでもらわねえと……」


 もう立つことも出来ない。

 剣も折れた。

 いや、剣を支えるための身体の、骨という骨が折れているのだ。

 自分が助かることはない。むしろたったこれだけの時間稼ぎで全員が助かるだなんて、頭を空っぽにして信じられるほど楽天家ではない。

 そんなことは他の誰よりも、フェイド自身がよくわかっていた。


 それでも……。


「巻き込んで、悪かったな………生きろ。メイル……クエラ……」


 自分の醜い嫉妬心が原因となって、ここまで付き合わせてしまった。

 その責任だけはなんとしても取りたいと、その一心で、ただ静かに近づいてくるデュラハンを待った。


「ロイグ……」


 フェイドの元にたどり着いたのもやはり、パーティーリーダーのフェイドが振り回した犠牲者の一人だったかもしれない。


「やれよ。それが俺の……償いだ」


 デュラハンの、ロイグの大剣が天高く掲げられる。


「フェイドさぁああああん」


 クエラが泣きながら叫ぶ。

 最期の時が静かに、誰もいない森の中で訪れた。


 そう、誰もが思った。


 ──ガンッ


「なっ……」

「大丈夫……ではなさそうだな」

「お前は……」


 目の前に現れたのは、フェイドが最も憧れて、身勝手に、最も憎んだ男だった。


「ランド……」

「あとは……任せろ」

「え……」


 フェイドの目に、あの時の風景が蘇る。

 幼き日、森の中で自分を助けた何者かわからない冒険者。


 そうだ。考えたことはある。

 あの街で、あの森に駆けつける可能性が最も高い人間なんて……。


「お前……だったのか?」


 パーティーに見えたのは錯覚か……いや……。


「使い魔……」


 その瞬間すべてを理解したフェイドは、憎しみでも、嫉妬でもなく……。


「助けてくれ……俺をじゃない! 俺の……パーティーだけは!」

「ああ……」


 ずっと憧れていた男の背を、知らずに守られていたあの日の男の背を、いや、それからだってずっと守られていたことは、ランドを置き去りにしたあのダンジョンで思い知ったはずだ。

 フェイドを、パーティーをいつだって守っていたのは……。


「ランド……」

「強くなったな。フェイド」


 認められた。

 それだけで、理解した。

 フェイドがずっと、自分自身が何を求めていたのかを。


「俺は……お前に認めてもらいたかっただけだったのか……」

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