第27話

「仲間……仲間……」

「だめか?」

「だ、ダメじゃないわっ! ただ……人間、よね? ちょっと雰囲気が違うけど」

「え? そうなのか?」


 なんの雰囲気が違うのか気になったが話は逸らさない方がいいだろう。


「あの……ね。うーん……」

「なんだ……?」


 何やら唸り始めたミルム。

 しばらく静かに待つか……。


「私は人間が怖い」

「怖い……?」


 意外な言葉だった。

 人間がヴァンパイアを恐れることはあっても、逆のことは考えていなかった。


「私たちは確かに人間と相容れない生き物であることも自覚はある。だけど、人間に干渉しなかったものまで根こそぎ刈り取られてきた。私の周りで犠牲になったのはいないわ。だから恨みはないけれど……怖いものだとは、意識に刷り込まれてる」

「そうだったのか……」


 弱気に語るヴァンパイアの少女。

 確かに一時、ヴァンパイアハンターが隆盛を極めた時代がある。もう百年以上前のことだが、人間とは時間の捉え方が異なる部分もあるだろうな。


「人間は信用できないか?」

「そう……ね。眷属なら裏切らない。眷属は部下であり、仲間であり……子どもね」


 ポツポツと漏らすミルムの目に、俺がどう映っているかはわからない。

 ただ怖がっているはずの人間に対するものとは少し違うと感じることは、自惚れではないはずだ。


「ならこうしよう。俺はネクロマンサー。不死の魔物を仲間にする力がある」

「ネクロマンサー……なるほど。道理でこちら側に近いわけね」


 その話も気になるが今は我慢だ。


「ミルムは俺を眷属にしてくれ。そして、俺はミルムとネクロマンスで契約する」

「契約するとどうなるのかしら?」

「さぁ……? どうなるんだろうな?」

「ちょっと!?」


 仕方ないだろう。お互い初めてなのだから。


「むむむむ……まぁ……そうね。そこまで言うならしてあげてもいいわ!」

「おお」


 命の危機を逃れただけでなく味方に引き込めた。

 強力な仲間だ。


「それと……眷属にするのは少し待ってあげるわ」

「え?」


 どういうことだ?


「その……眷属って、二度と引き返せない契約。破棄は死を意味するわ。だったらお互い、少し軽いところから入ったほうがいいでしょう?」

「なるほど」

「それに、私の知る限りネクロマンスによる契約で一方的に不死側が従えられるものじゃないはずだし、その……仲間と言うなら、そっちの方が……いいわ」


 なんだろう。

 顔を赤くして目をそらしながらそう告げるミルムは、すごく守りたくなるオーラを放っていた。

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