第154話
結局ダンジョン『栄光』の攻略は非常にあっさり終わった。
四階層は仕掛けは単純だが力押しが必要なところだったのに対し、その先はどこも謎解きがメインのような仕掛けになっていたため、冒険者たちのゴーストとアイルたちが張り切ってくれたおかげで俺とミルムはほとんど何もせずに付いていくだけで攻略が完了した。
「これは……?」
ダンジョンの最奥。
アイルが恐る恐る開いた宝箱に納められていたのは、一本の短杖だった。
「へえ。なかなか良い品質……神具クラスかしら?」
ミルムがそう評するくらいには強いオーラを放つ杖だった。
「そうだな……多分これ、ゴーレムを作り出すことに特化した杖だ」
「あら。いつの間に鑑定を覚えたのかしら……?」
「セラと盟約を結んだ時に【目利き】ってスキルを取得したからそれか」
「少なくともエクストラスキルね、神具クラスの鑑定が出来ているのだから」
「何でもありですね、ランド殿」
アイルのつぶやきに返す言葉がなかった。
「にしてもゴーレムを作り出す、か」
「錬金術師でも入ればこのダンジョンの再現ができるんじゃないかしら? 貴方使えないの?」
「無茶言うな……ネクロマンスしてきた中に錬金術師はいなかったな」
「そう」
ただセラあたりは使いこなせる気がしないでもない。
鑑定のレベルももっと高まるだろうし、持っていってやるか。
「アイルが使えそうなものがあればよかったんだけどな」
「そうですね……神具でもあればもう少しお役に立てるかもしれません……」
表情を暗くするアイル。
何か勘違いさせてしまったようだった。
「そういう目的じゃないぞ?」
「では、一体……」
「今回のダンジョンで一番頑張ってくれたのはアイルだから、それだけだよ」
目を見開くアイル。
本当に自己評価が低い……いやミルムを見ていれば自信を失うのも無理はないか。
「まあ、少なくとも貴方がいなければ私達は倍以上攻略に時間がかかったでしょうね」
「そのとおりだな」
どうしても力押しに頼りがちなのだ。
ミルムは知的なオーラもあるんだが意外とそのあたりは脳筋だった。というかそれでも十分ゴリ押せるのが問題なんだが……。四階層も順番など気にせず破壊の限りを尽くしていただけで二組は粉砕していたわけだしな。
「アイルの装備はセラに頼めばいいか」
「そうね。このダンジョンは鉱石は有り余っているようだし」
ダンジョン『栄光』はゴーレムが無限湧きできる程度には鉱石が豊富だった。
そのためにツアーを組んでいいと思えるほどには。
「と、いうわけで、アイルはまたここの周回メンバーを考えてもらわないといけないし、それが安定すればその素材でセラに改めて依頼もできる」
そう言うとアイルは少し緊張した面持ちでこう答えてくれた。
「はい! 精一杯がんばります!」
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