第155話

『お疲れ様でございます。主人様。早速で申し訳ありませんがお耳に入れたいことが』


 ダンジョン攻略から帰ってくるなりロバートに捕まった。

 わざわざこのタイミングでロバートが呼び止めるのだからそれなりのようなのだろうな……。


「何があったのか?」

『マロン様より言伝がございます』

「マロンが? 帰ったばかりだろう?」


 ダンジョン攻略に向かう直前まで街に滞在していた。いやむしろそれからもしばらくいたんじゃなかったか?

 街に一般人を入れるに当たってアンデッドたちの身なりについてアドバイスをもらっていたはずだ。そしてそのままアドバイス通りに商品を発注しているから、しばらくすれば人前に出られるアンデッドたちが街を作り始める計画だが……。

 まあいい。そちらはもう任せきりだしな。


「で、何があったんだ?」

『情報収集を頼んでいた件でございます』

「あー」


 マロンには商談の他にも依頼をしていた。

 俺たち、特にヴァンパイアであるミルムやアンデッドに敵対することになりそうな相手に関する情報だ。

 特に今注意を払うべき魔法協会については念を押して頼んでいたんだった。


『魔法協会、会長ミレオロの動向は現在、関係の深い者たちであっても追えないような状況だそうです』

「行方不明ってことか?」

『ええ。どこかに身を潜めているとのことですが、何せ研究施設は無数に存在するそうでして……行方がわからない時は決まって何か公にできないことを行うときだとか』

「わかりやすいというかなんというか……」


 一度正面からやりあってミルムの実力を感じ取ったからこその準備期間だろう。

 入念な相手だった。ただでさえ俺は勝てなかったというのに……。


『マロン様からの言伝の内容はこうです……あの女ならば必ず勝てる準備を整え襲ってきます、相手の想定を超えた準備を、と』

「なるほど……」


 気になるのはミレオロだけでもないしな。

 メイルとクエラもいるのだ。二人とも敵対するとなれば強敵になるはずだった。


『セラの作る武器はそのための一つの武器になります、ともおっしゃられていました。とはいえこのアンデッドタウンの仕組みを考えれば、相手がいかに準備しようとも数で対抗できそうなものですが』

「数も揃えて、その上でミルム対策をしてくる、ってわけか」

『どこから揃えてくるかはわかりませんが……』

「ありがとう。まあ最悪王都騎士団にも貸しがあるようなもんだし、数はこちらも考えよう」

『そうですな。いざとなればそのあたりの死体を集めてくればよろしいかと』

「冗談……だよな?」


 微笑むだけのロバートに深入りするのが怖くなったのでそれ以上話を続けるのをやめておいた。

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