第144話

「おお……」

「へえ、なかなか優秀じゃない」


 ダンジョンのそばで律儀に待ってくれていたアールに乗って屋敷に戻ってくると、騎士甲冑に身を包んだ軍隊が訓練場で一糸乱れぬ動きを披露していた。

 騎士甲冑の中身は全部アンデッドだけどな……。


『おかえりなさいませ。主人様』


 すぐにロバートがこちらに気付いてやってきた。


「壮観だな」

『ええ、お嬢様が張り切られて……』


 アイルは今もアンデッドの軍にしきりに指示を飛ばしている。

 すごいな。


「あっ! 戻られたのですね、お二方」


 しばらくしてアイルが俺たちを見つけて駆け寄ってくる。


「この短期間によくここまでいけたな」

「いえ……そもそも私がなにかせずとも彼らは強かったので……こうして軍の形をなぞることにどれだけ意味があるかなど……」


 アイルの葛藤はまあ理解できなくもない。

 だがこれは非常に重要な意味を持っている。

 その点はミルムのほうが先に口を出してくれた。


「これから貴方は人が住まう街を作るんでしょう? 騎士甲冑なら中も見えないし、これだけ統率されていれば住人だって安心じゃないかしら」


 その言葉にハッとした様子で顔を上げるアイル。


「それにダンジョン内でも感じていたけど、攻略済みダンジョンの周回もうまくいってるみたいだしな。アイルに任せてよかった」

「それは……その……ありがとう、ございます!」


 感極まった様子で答えるアイルが妙に可愛らしく見えていた。


 ◇


「これがダンジョン報酬ですか……!」


 ダンジョン『奈落』の攻略情報の共有へと話題は移った。

 これをもとにアイルが訓練したアンデッド軍団が周回攻略に臨むことになるのだ。


 その中で最初の話題は、ダークフェンリルが守る最奥の間に置かれた宝箱から産出されたダンジョン報酬。そこにはレイのためといってもいいくらいの装備が置かれていた。


「可愛いわね」

「まあこいつが喜んでるなら良いんだけど」

『キュウウン』


 おいてあったのは首輪だ。

 効果は強力な魔物を従えるものだが、親密度に影響を及ぼす点と、さらにその親密度に応じて力が増すという特徴を持っていた。


「この子がこれをつけて強くなって、また私達も強くなったわね」

「お二人が出発されてからというもの、毎日が成長の連続で……こんなやり方でいいのかと思いつつしっかり使いこなせるよう鍛錬を積んでいたところです」


 それについては俺も確かにと思っていた。

 もうスキルなんていくつ手に入れたか把握しきれていなかった。

 さて、ここからが本題だ。

 話は『奈落』の攻略情報、その詳細にうつっていった。

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