第21話
「さて、今回ネクロマンサーに関連する情報を集めていましたが、そんな状況ですのでなかなか有益なものは集められず……」
仕方ないだろう。
「ですが、ランドさんの行動指針になりそうな情報は用意しました」
おっ……。
流石ニィナさんだ。昨日の今日だというのにすごい。
「先ほどのユニーク種族の話につながりますが、ヴァンパイアの里はご存知ですか?」
「ヴァンパイア……?」
アンデット系の頂点に君臨する魔物であり、上位の存在は人間とほとんど変わらずに生活できると言われたことから、龍と並ぶ都市伝説となった存在だ。
だが種族としてはほとんどが人を襲う。そのため敵性の魔物として討伐対象となるケースが多い存在だ。
「里、と言ってももはやほとんど滅んだ廃村ではありますが、今も多くのアンデッド系モンスターの巣窟になっています」
「なるほど……」
里を作るほどの上位のヴァンパイアなどもう何十年も現れていないはずだ。
今いるのはただ人を襲う魔物。そしてその数も少ない。
廃村になるのも仕方ないだろう。
「ネクロマンサーの能力を考えると、そこに何かヒントがあると思います」
「ありがたい情報だ」
「そこでランドさんにギルドより特別クエストを出すことにしました」
「特別クエスト!?」
特別クエストはBランク以上専用の、いわば裏ルートの依頼だ。
ギルドが直々の依頼を出すのはよほど目をかけた冒険者だけと言われ、これを受けた冒険者は出世コースに乗ったと言われる貴重な体験だ。
いや待て、出世も何ももうこれ以上いくところがないな?
「今更ランドさんにとっては大したことではないですよ」
「まあ……ユニークだもんなぁ……」
クエラの聖女の称号はまだ確定ではなかったことを考えると本当になんというか、現実味がない。
「ギルドとしてはなるべくランドさんを手元に置いておきたいという狙いもあります」
「なるほど……」
ストレートに言われると意外と悪い気はしなかった。
「ヴァンパイアの里の調査依頼になります。現地は強力なアンデッドの巣窟となり、並の冒険者ではたどり着くことすら困難な状況。その中で、ヴァンパイアの王、始祖の館と思われるものが、ほとんど遺跡と化して残っています」
「始祖の館……」
「はい。真祖。今いるヴァンパイアたちの生みの親であり、最強のアンデッド。もしまだ現存しており、それが人間に牙を向くなら、我々も準備が必要です」
「なるほど……」
最強種と呼ばれる存在。
龍種や鬼神、獣人族の中のテトラ族などが挙げられるが、アンデッドの最強種がヴァンパイアだ。
そしてその始祖。真祖と呼ばれる幻の存在は、もはや歴史に名を刻む神話級の怪物。
「わかりました。調査してきます」
もちろんギルドとしてもそんな存在がいるとは考えていないはずだ。
そしてもし本気でいると考えたなら、俺ではなく本当に力のあるパーティーをいくつもあたらせる。
要するにこれは俺に対する特別クエストというボーナスのようなものであり、諸々の対応に迫られている間のギルドにとっての時間稼ぎだろう。
「協力に感謝します」
ニィナさんにはお世話になっていることだし、しっかり乗ることにした。
俺も確かめたいことも多いし、アンデッドの巣窟はそれにぴったりだろう。
お互いメリットのある話だった。
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