第142話 自動経験値システム

「攻略情報が残されているのはここまでだったかしら」


 未攻略ダンジョン『奈落』

 王都騎士団が67階層までは到達したらしいが、65階層を超えてからはもはや雑魚でも低層のフロアボスレベルとなり撤退

 想定される最下層はよくて70、悪ければ100まであると考えられる。

 そしては狼系を中心に魔獣たちが支配している様子から、想定ボスはダークフェンリル、というのが騎士団の残した情報だった。


「そうだな。この先は情報がない」

「とはいえここまではっきり傾向が見えてるとわかりやすいわね」


 攻略済みダンジョンと未攻略のダンジョンの差は様々だが、最大の問題はその先に何が現れるか分かっているかどうかの差だ。

 攻略済みダンジョンは準備を整えていけば適正ランクも示されており、安全マージンを取って活動が可能だ。

 だが未攻略の場合、次の階層で突然レベルが様変わりするような事故や、予期せぬトラップ、そして想定外のボスなどがピンチを招くことがある。

 フェイドたちとはいった神滅のダンジョンはまさにそのパターンだった。


 だがまあ、67階層も進めば自ずとその傾向は見えてくるというものだった。


「露骨に狼系ばかりだもんな」

「それにこれ、現れる魔物のレベルが高くなっていくシンプルなタイプだから、変な罠も少ないわね」

「ああ。でも油断はしないでおこう」

『キュオオオオン』

『グモォオオオオ』


 俺の掛け声に呼応してレイとエースが答えてくれた。

 残念ながらダンジョンにはアールは入れない。不満そうにしていたが街の周囲の警戒に当たってもらっている。

 何か手土産でも持っていかないとだな……。


「それにしても……」

「ええ……」


 ダンジョンに入って数日になるが、昨日あたりから何もしなくても自分が強くなるのを感じるのだ。

 これはきっとアイルがうまくやっているおかげだろう。


 攻略済みダンジョンの情報を整理し、必要なアンデッド部隊を編成してダンジョンを周回する。

 ダンジョンから産出するアイテムを集めながら、領地のアンデッドたちが経験値を貯めていく。

 そしてその経験値が俺に戻り、俺からまた使い魔であるアンデッドたちに還元されているのだ。


「貴方、いくつスキルが増えたかしら?」

「自分で倒してきた魔獣たちのはほとんどステータス系だったから統合されたみたいだけど、エクストラスキルが4つ増えてる」

「化け物加減に拍車がかかるわね」

「失礼な……」


 だがまあ、ミルムのいうことも一理ある。

 アイルの頑張りのおかげでほとんど勝手に強くなっていくのだから……。


「この子たちも心なしか大きくなった気がするわね」

「レイはともかくエースはこれ以上大きくなるのか?」


 ──存在進化によりレイがフェンリルからユニークモンスター『レイ』となりました

 ──能力吸収によりステータスが向上しました

 ──使い魔強化により使い魔たちのステータスが向上しました


「なんかもうとんでもないな……」

「ようやく自覚ができたようでなによりよ」

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