第174話 神域への許可
セシルム領のギルドに足を踏み入れるのは久しぶりな気がする。
実際にはそんなに日にちは経っていないと思うが、最近は色々と密度が濃い生活をしているからな……。
「あれ? ランドたちだぞ」
「ん? 引退したんじゃなかったのか? 地方領主やってるんだろ?」
「俺は王都に拠点移したって聞いてたけど……」
「つい最近も王都で色々してたって聞いたな確かに」
徐々に慣れてきたもののこうも注目を集めるのは落ち着かないな……。
フェイドたちと一緒にいたときよりも見られることが多くなったのは間違いない。
「ランドさん! お久しぶりです!」
「ニィナさん、久しぶり。ギレンがいたらお願いしたいんだけど……」
「マスターですね! かしこまりましたー。それにしても、一段と頼もしくなりましたね」
「レイか?」
ミノタウロスのエースは人目につくと騒ぎになることが多いので宵闇の棺で隠しておくことが多いが、レイは今までの癖もあって割と自由にうろついている。
生きてた頃より二回りほど身体が大きくなったしな。頼もしく見えるのもわかる。
「ふふ。レイちゃんだけじゃありませんよ」
そう言い残して奥に向かうニィナさん。
「貴方もそれなりに成長しているということよ」
ミルムがそう言って微笑んでくれていた。
◇
「なぁランド、ミルムの嬢ちゃんはお前より強いか?」
ギレンが出てきたと思うと、すぐさまこんなことを聞いてきた。
軽い挨拶と用件である神域ダンジョンへの攻略許可をもらいに来たことを伝えたら、なんの脈絡もなく、あえて周りに聞こえるようにこんなことを言い出したのだ。
まあわざと聞こえるように言ったということはこちらもそうしたほうがいいということだろう。
「間違いなく強い」
「そうか。なら……ランド、およびミルムの単独でのSランク認定、および、神域ダンジョンへの挑戦の許可を出す!」
そういうことか。
「おい! 聞いたか!? 単独Sランクだぞ!」
「すげえ。しかも同時に二人!?」
「ランドのやつは前々から決まってたって話があったよな?」
「単独Sランクなんて暴風のルミナスが最後にここに顔出して以来見てないな」
「そう! そん時だよ、ランドが認定受けたって噂が流れたの」
ルミナス……懐かしい。試験官をやってくれたあの時は手も足も出なかったが……いまはどうだろうか。
周りで騒がれるだけあり、単独Sランクは大陸でも数える程度しかいない。
ミレオロを含め、出会えば勝てない相手もまだまだいるんだなと思わされる。
神竜ももちろんそういう相手だろうな……。こちらについては本調子であれば、だが。
「にしてもついに神域にまで手ぇ出すのか。俺ですら場所までは知らねえぞ」
「そうなのか?」
「ああ。一応ギルドが管理してるってことにはなってるが、あんなもん形式上で実態は知らん。いやいくつかは公開だけはしてはいるが……そういうところはそもそも入ったら死ぬから誰も近づかん」
そういえば神域に指定されていて場所が公開されているのって、火山の中とか海の底とかそんなレベルだったな……。
ギルドマスターでも把握していないということはもう組織として管理している人間はいないということか。
それでも入場に制限をかけているのは……。
「ま、上位の冒険者が勝手に行って死なれるのはギルドにとっちゃ痛い損失だからな。言っても聞かねえやつらにだけ許可が出るってわけだ」
「それが単独Sランクというわけね」
「そういうこった。というわけで、死ぬなよ?」
「ああ」
もちろん死ぬつもりはない。
だがそれだけの危険が伴うことは理解して臨むとしよう。
「そういや攻略にかかる日数ってどのくらいなんだ?」
難易度が高いダンジョンはそれだけ時間がかかることも多い。
神域ダンジョン【久遠】ともなれば相当な時間を覚悟しないといけないと考えたが、ミルムはこう言った。
「その日のうちに出られるわ」
「本気か……?」
まあ他でもないミルムがそう言うのなら信じよう。
再びアールに乗り、珍しく道案内のためにミルムが前に乗って出発となった。
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