第172話 竜狩り
「さてと、竜ってどこらへんにいるんだろうな」
「はぁ……まあ何も考えていないとは思っていたけれど……」
領地を飛び出したは良いものの行く宛すら定まっていなかった。
ふらふらとアールを飛ばしてその上で二人のんびり話をしている。
そもそも竜なんて出てきたら災厄なんだ。こちらから探しに行くようなのは頭のおかしなやつしかいない。
だから普通に冒険者をしていても竜が普段どこにいるかなんて話は聞くことがないのだ。
「竜はおもに山岳地帯で暮らしている。群れをはぐれた竜が人間に手を出すようになるわ」
「はぐれた竜、か」
「基本的には野生の竜にとって見覚えのない人間は恐怖の対象。それが実は人間が大したことがないとわかってしまったり、食料を持っていることを学んだ個体が人里に降りてくるようになるわ」
「それ、こちらからつつくのってかわいそうだな……」
「まあそっとしておけば住み分けはできてるものね。そもそも竜の住処に人間が侵食するケースの方が圧倒的に多いわけだし」
「その話を聞くと余計に手を出しにくいな……」
それでなくても今回は人間のわがままでの討伐だとわかっているのだ。
被害をもたらす前に対処するといった大義名分もないとなると……。
考え込んでいるとミルムが一つ提案をくれた。
「貴方ならそう言うだろうとは思っていたわ……だからターゲットは老竜に絞りましょう」
「老竜……?」
「ええ。竜種にも寿命はある。どれだけ長くても万を超えることは出来ない」
「途方も無い数字だけどな……」
「まあいるのよ。動けなくなった老竜というのが。その生命をもらう代わりに、貴方ならあげられるものがあるでしょう?」
「あげられるもの……?」
「死後の自由。貴方のその力は死後の魂を固定してこの場に留める力を持っている。竜の寿命からすればつかの間の自由とはいえ、それでももう死を待つだけだった老竜にとってはメリットのある話だわ」
なるほどな。
たしかにそれならお互いにメリットがあるかもしれない。
だが問題は……そんな都合の良い相手が三体もいるのかという話だ。
「心当たりはあるのか?」
俺の疑問にミルムは不敵に笑って答える。
「いるじゃない。この国には三体の伝説の竜が」
「伝説……え?」
まさか……。
「昔々、三体の竜が力をぶつけ合い、大地が隆起し海の水が蒸発して大陸を生んだ」
「いや……神話の話じゃ……」
「いるわよ。神竜は」
思ったよりとんでもない相手が飛び出してきたことに戸惑いを隠しきれなかった。
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