第125話 元パーティー視点
「くっ⁉ これじゃ防ぎきれない……ジリ貧だぞ⁉」
「アンデッドには聖属性……対策をされていたって、効かないことはないはず!」
クエラが祈りを捧げる。
彼女の周囲に光が散りばめられたように輝き始める。
『ぐ……』
「効いた⁉」
姿を隠し、メイルの元へ忍び寄ろうとしていたデュラハンが一度距離を置いた。
「私を狙うなら……私がなんとかする」
メイルの周囲に無数の魔法陣が一瞬にして展開されている。
ミレオロから譲り受けた魔道具は物理主体のデュラハンには使えない。これはあくまで、この試練を乗り越えた上で使えるもの。
そうメイルは考えていた。
「私をあまり……舐めるな」
珍しく感情を露わにして、過剰と思えるほどの魔法を周囲に展開するメイルにフェイドとクエラが驚いていると、再びデュラハンが姿を見せた。
「後ろだ!」
「わかっている! エンシェント……ホーリーファイア」
聖炎魔法。複合魔法にして、火炎系最強の威力を誇る最強の魔法。
メイルはこれまで、相手によって複雑な術式を展開することで最小限の力で相手を圧倒してきた。
そのメイルが、安直ともいえる最上位魔法を選んだことにフェイドとクエラは少なからず驚いていた。
『ぐ……ぅあ……』
「そのまま……燃えて」
対象を燃やし尽くすまで消えない炎。
聖属性が付与されたことで、使える知能がほとんど残っていないアンデッドであるデュラハンへは有効な一撃に見えた。
だが。
「なっ」
『ぐぁあああああああああ』
「メイルさん!?」
いつの間にか、炎に包まれていたはずのデュラハンが無傷でメイルの前に現れ、その巨大な剣を振り下ろさんとしていた。
「舐めないでと……言ったはず」
メイルの周囲を囲い込むように土魔法による防壁が幾重にも展開される。
デュラハンが振り下ろそうとした剣も、逆に突如現れた土壁の展開スピードに負けて弾き飛ばされていた。
「このまま……土壁で囲む!」
火葬でだめなら土葬。
メイルがここまで本気を見せることはなかなかない。
それだけに、フェイドもクエラも油断していた。
みるみるデュラハンの周囲に土壁が幾重にも展開されていく。
完全に周囲を囲み……。
「さよなら」
一気にメイルはその土壁を畳む。
終わったと、確信を持てるだけの感触があった。
だが……。
「瘴気が……」
メイルが畳み掛けた土壁の、その僅かな隙間からは絶え間なく瘴気が流れ続けていた。
「クエラ!」
一瞬対応が遅れたが、ここで仕留めるべきだと判断したフェイドがクエラに聖魔法の指示を出す。
自身はメイルのもとにいつデュラハンが現れてもいいように守りに入る。
油断なく、誰もが襲撃を警戒した。
だが……。
「かっ……なん……で……」
メイルの前には再び、無傷のデュラハンが現れていた。
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