第124話 元パーティー視点

「きゃあああああああ」

「どうしたクエラ!」


 声をかけたフェイドの前には……。


「あれは……ロイグ!」


 首のない、それでも見間違いようのない、元仲間の変わり果てた姿があった。

 もともと大柄だったロイグが、また大きくなっていた。そのサイズは首がないのに見上げるほどにまで達している。


 だがもうこれをロイグと呼ぶのは、フェイドだけだったらしい。


「違う……もう……あれは」


 メイルは息を切らしながらフェイドたちの後ろに入る。


「メイル……?」


 フェイドたちには見えていなかったが、メイルはすでにロイグ、いやデュラハンに、その巨体が誇る拳の一撃を腹に入れられていた。


「死に招かれる者……」


 クエラがつぶやく。

 フェイドがその意味を確認しようとした瞬間、信じられない光景が広がった。


「なっ!?」

「かはっ……」

「メイル……!」


 一瞬で、まるで最初からそこにいたかのように、巨体のデュラハンがメイルの目の前に現れ、その拳を再度振るったのだ。


「見えなかった……」

「がはっ……げほ……」

「メイルさん! ヒール!」


 クエラが必死に回復をかけると、デュラハンの姿がまたすっと消える。


「あれは一体……」


 フェイドの疑問にメイルが答える。そのダメージは深い。


「デュラハンは……死の匂いに反応……する」

「死の匂いって……」

「だめです! 喋っていてはいつまでも──」


 クエラがメイルに回復に専念するように促そうとした矢先、再びデュラハンが姿を現した。


「やっぱりこれ! 瞬間移動かなにかか!?」


 メイルにとって3度目の襲撃は、かろうじてパーティーリーダーのフェイドが防いでいた。


「デュラハンは死に近づくものの元へ訪れ、自ら引導を渡す。デュラハンに目をつけられれば、どこに逃げたってもう……死ぬまで! 追い回されると!」

「なんでメイルが狙われてるんだ⁉」


 デュラハンの特性はクエラの説明したとおり、死の匂いを嗅ぎつけ、どこにいても必ず、その対象に引導を渡す、そういったものだ。

 そしてデュラハンはその見た目に反してゴーストと同じ性質も持つ。

 姿を隠し、物体を透過し、突然対象の目の前に現れることができる。


 いままさに、メイルにそうしているように。


『こロす……ころ……許さなイ……コろス……殺す』


 フェイドはここにきてようやく、目の前にいる存在がもう、かつての仲間ではないことを悟った。

 目の前にいるのはデュラハン。

 アンデッドで最も厄介な魔物の一つ。

 その討伐難度は……Sランクパーティー三つを用意して当たるべき化け物だった。

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