第13話

 クエラの突然の宣言にフェイドなどもう声も出なくなっていた。

 そこにメイルが追い討ちをかける。


「ん……。ロイグは使えない。それにさっきまでの発言、もうギルドも目を瞑らない」

「はぁ!? 何言ってやがる!」


 ロイグが暴れるがメイルは止まらなかった。


「元々騎士団で問題を起こして冒険者やってるような状態。こっちで問題があったらもう、Sランクパーティーなんて居られないはず」


 淡々と告げるメイル。


「フェイドとランド、今はもうランドの方がいい」

「くっ……」


 何も言えずうつむくフェイド。

 こちらをじっと見つめてそう告げるメイルは、何も考えずに見れば小動物のようで可愛らしい見た目をしていた。

 だが今その見た目だけの可愛らしさは、俺にはもう響かない。


 クエラもメイルも、よくもまあこの状況でこんなことを言い出せたなとある意味感心した。

 そもそも俺を犠牲にする案は、メイルが提案したものだったはずだ。それも、はっきりと俺を殺す意思を持って提案した。

 天才とうたわれた才能を持っているものの、コミュニケーションに難があるという魔術師のお決まりは押さえてしまっているらしかった。


「勝手なことを言うな。俺はもうお前らとパーティーを組むつもりはない」


 はっきり告げた。


 考えてみるとこれまで彼らがまとまって来れたのは、フェイドの持つ次期勇者候補という肩書によるところが大きい気がする。

 すでに元王国の盾として実績のあるロイグ。

 次期賢者候補のメイル。

 そしてすでに指名の上がる聖女候補、クエラ。


 これらをまとめられるのは国内で最も強く、最も名誉ある勇者以外ありえなかったんだろう。

 一見チームワークがあるように見えていたが、それぞれのパフォーマンスが高いおかげでかろうじて成り立っていただけということが今になるとよくわかった。


 ニィナさんの反応を見ていればロイグが何かしらの処分を受けるのはもう、間違いない。

 パーティーの責任はリーダーに課される。

 そうなればもう、フェイドの勇者候補という話も一度なかったことになるだろう。


 よく言えば判断が早いと言えるんだが……ここにきて当たり前のように俺に声をかけられる神経を疑ってしまう。もう二人の中で俺の立ち位置が固定されていることがよくわかる発言とも言えた。


「パーティーを組んでやるのだからありがたく思え」


 言外にそんな思いを受け取らざるを得なかった。


「私もだめ、ですか?」

「もちろん」


 クエラに即答する。


 クエラもあの時、俺を殺すことに同意したはずだった。

 ましてやこんな形で簡単に仲間を見捨てることがわかって快く引き受けるはずもない。


 それにしてもまさか目の前でパーティーが崩壊するとは思わなかったな……。


「そう……ですか……」


 二人が渋々ながらも引き下がったところでロイグが再び吠えた。


「てめえふざけんなよ!? なんでこんなことできるなら先にやっておかねえんだ! てめえが報酬欲しさにもったいぶったせいでこっちはけが人まで出したんだぞ!」


 この言葉は流石に看過できなかった。

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