第12話
凄まじいな……。
当然だがSランクパーティーの稼ぎは法外だ。神官や下級貴族はおろか、下手な上級貴族よりも稼いでいるものも多い。それが五年分。
誇張なしに国家予算相当と言える金額だった。
「こんなにか……?」
「はい。まずこれらの品は我々が責任を持ってお預かりします」
「はぁ……」
取り上げられた形になってロイグだけは喚いていたがもう誰も相手にもしなかった。
ロイグもエースとレイに睨まれて騒ぐしかできなくなっているので無害だしな。うるさい以外は。
「必要であればパーティーメンバーの皆さんは買取という形でギルドを通じて回収していただきます」
「待て。それならランドと俺たちが直接やりとりした方が良いんじゃないのか?」
話を割り込ませたフェイドへの回答はシンプルなものだった。
「払えますか?」
「は?」
面をくらった様子のフェイドに畳み掛けるようにニィナさんの声が飛んだ。
「あなた方のパーティーでの稼ぎの総額のおよそ五年分です。今それだけの貯蓄があるとは思えませんが……」
「ふっざけんなよ!? なんで俺たちが払わなきゃいけねえんだ!?」
「払えないな……」
ロイグの言葉はもはやフェイドにも無視されていた。
「ギルドを介せば金銭は後からでも構いませんが、ランドさんと直接やる場合は即金が必要です」
「わかった」
「だぁっ! なんで引き下がるんだよフェイド!? 目の前にこんなもんが……」
未だ興奮冷めやまぬロイグだが、ニィナさんは淡々と言葉を続けた。
「というわけで、これらの品は一度ギルド預かりとします。ランドさん、細かい金額の話は後ほど」
「ああ……」
「ちなみに取得の優先権もランドさんにあります。もし剣が必要ならランドさんがお持ちください。鎧や杖やローブも、もちろんですが」
「いや、いいよ」
ネクロマンサーの標準の装備が分からないが、少なくともここにあるものでしっくりくるものはなかった。
俺がこれらの品を受け取りたくない理由はもう一つある。
「多分さ、これ、パーティーメンバーに合わせてるせいで、あんまいい気がしないんだよ」
「あー……」
殺そうとした相手に合わせた装備を使いたいとも、持っていたいとも思えないわけだ。
「かしこまりました」
「待ってください!」
話がまとまろうかというところで、クエラが叫んだ。
「ランドさん! パーティーを抜けるなら私も連れていってください!」
「は……?」
突然の宣言だった。
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