第164話 王都ギルド

「そんな落ち込まなくても……」

「ですが、ほとんど引退したと言っても良いほどの御老体に手も足も出ませんでしたから……」


 騎士団での模擬戦を終えて王都を歩く。

 アイルは終始こんな調子だった。

 その様子を見かねたミルムが声をかける。


「貴方に求められる役割はそこじゃないわ」

「役割……?」

「単体戦闘能力が必要なら貴方より領地のアンデッド上位種でも連れてきたほうが早いでしょう。貴方はその指揮を学ぶ必要がある」


 ミルムはなんだかんだアイルに優しい。


「今日は色々見られて良かったんじゃない? 貴方が訓練をよく観察していたのは見ていたわよ」

「ありがとう……ございます」


 ミルムの言葉に俯くアイル。

 その様子を眺めていたのに気付いたミルムが顔をそらしながらこう言った。


「この子は境遇が似てるのよ。一人になってから拾われた同士。私は最初から一人でも問題ない能力を持っていたけれど、この子はまだ迷ってる。それだけよ」

「そうか」


 それっきり喋らなくなったミルムだが、頬に差した朱い色がその感情を雄弁に語っていた。


 ◇


「ここか……」

「流石に王都のギルドは大きいですね」


 翌日、俺たちは王都ギルドまでやってきた。

 これはセシルム卿の指示だ。

 王都でその名を知れ渡らせることが味方づくりのために重要らしい。そして俺たちが名を知らしめるのに一番いいのが王都ギルドのクエストというわけだ。

 セシルム領のギルドも規模でいえば負けていないのだが、いかんせん見た目が質素だ。

 それに比べ王都ギルドは入り口の扉から装飾に凝った様子が垣間見れる。王都の外観を損ねないような意図もあるだろうが、それにしたって周囲の建物と比べても豪華な見た目をしていた。


「行きましょう」


 ミルムはこういう建物に似合うなと思いながらアイルと一緒に後を追った。


「お、新人じゃ……いや待て、なんだあいつら……?」

「見たことないけど信じられない魔力だぞ……」

「装備も見ろ、マントも剣も神具だぞありゃ」


 入った途端ギルドにいた冒険者たちがざわついた。


「ここも酒場がセットなのは同じか」

「ですが辺境と比べると装備が良いですね皆さん」


 アイルの言うとおり装備が皆綺麗で見栄えするものだった。

 ミッドガルドシリーズはここでも人気だ。

 だがそれだけ。むしろ辺境は戦闘なれしている分装備の見た目は悪くなっていると言える。

 レベルで言えばセシルム領のほうが高そうな印象すら受けた。

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