追放されたお荷物テイマー、世界唯一のネクロマンサーに覚醒する 〜ありあまるその力で自由を謳歌していたらいつの間にか最強に〜

すかいふぁーむ

第1話 Sランクパーティーのお荷物

 攻守に優れ、またそのカリスマによりパーティーを束ねるリーダー、剣士のフェイド。

 国内最高峰の魔法学園を歴代最高成績で卒業した天才魔道士、メイル。

 王国の盾とも評された元最強騎士団長、重騎士ロイグ。

 最年少ながら奇跡の聖女と名高い最高神官、クエラ。

 そして、パーティーのお荷物、テイマーの俺、ランド。


 確かに才能ある4人と比較すれば俺は残念ながら凡人もいいところだった。

 フェイドの幼馴染というだけでパーティーにいるような形になっているし、それももう限界も近いことは自分でもよくわかっていた。


「フェイド! いつまであいつを甘やかしておくんだ!」


 隣の部屋からロイグの荒々しい声が響いてくる。

 宿屋はいつも3部屋。男部屋にフェイドとロイグ。女部屋にメイルとクエラ。そしてもう一つは厩舎や物置小屋であり、俺の部屋だ。

 テイマーという性質上使い魔が常に付きまとう。最初のうちは俺もベッドが用意されたが、いつの間にか俺の扱いは使い魔と同じになった。


「まあそれは良いけど、こうして4人とも一部屋に集まってるときまで呼ばれなくなったのはこう、寂しいよなぁ」

「くぅん」


 一角狼のレイが慰めるようにペロペロ俺を舐めてくれていた。

 普段はパーティーメンバーの荷物を、戦闘時は俺を乗せて壁役を買って出る最高のパートナーだ。

 今も周囲の警戒を怠らず、近くにいた狼系の魔物たちに指示を飛ばしているくらいだった。


「ワォオオオオオオオオオオオオオン」

「ほれ見ろ! あの犬っころがうるさくて俺たちはおちおち寝てもいられねえじゃねえか!」


 ロイグには全くこの意味は伝わっていないようだが。


「俺だってなんとかしたいと思ってるが……」


 続いて聞こえて来たのはフェイドの声。

 フェイドも俺のことをもうよく思っていないことはわかりきっていた。

 それでも俺をパーティーから追い出さないのはパーティーの女子二人の意見が大きい。


「ランドさんも精一杯活躍してくれています。一方的に追い出すのはやはり……」

「……ランドは、いいやつ。ご飯をくれる」


 クエラとメイルがそれぞれ言う。

 メイルに関してはこう、動物みたいなところがあるので食べ物をくれる人はいい人という少しあれな評価だったが。

 要するに今俺がいられるのはクエラの慈悲の心によるところが大きかった。


「ったく……まあいい。今日は寝るぞ」

「ああ、明日はいよいよ神滅のダンジョンだ」

「神をも滅ぼすダンジョン……ですからね。気合を入れましょう!」

「……楽しみ」


 隣で人の動く音が聞こえる。


「おい! ランド! 聞こえてんだろ! てめえ次その犬っころを鳴かせたらただじゃおかねえぞ!」


 ロイグがこちらへ叫んできていた。


「だってさ。レイ」

「くぅん……」


 今夜の警戒は仲間無しでこなす必要がありそうだった。


 いつからこうなったのか。

 パーティーのお荷物、と言われて暫く経つが、自分で言うのも何だがそれなりの仕事はこなしてきたと思う。索敵、警戒、荷物運び、斥候……。テイムのおかげで俺はできることが多い。

 その分便利屋として貢献してきたつもりだったが、どうしてもその分、純粋な戦闘能力では4人についていけなくなっていた。取得できる経験値が違うのだからそうなるのも仕方ないことだろうと、そう思っていたのは俺だけだったようだ。


「まあ仕方ないか」

「くぅん」


 唯一心を許すレイだけが慰めるように俺の頬を舐めていた。

 次のダンジョンが終わればもう、このパーティーにいられないことはなんとなくわかっていた。

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