第151話

 俺の回答に一応納得した表情を見せるマロン。


「かしこまりました。ではそちらはそれで構いませんが……ぜひお役に立てていただけると幸いです」

「善処するよ……」

「では本題へ。まずは我々ミッドランド商会は、ランド様のこの領地での商売の許可をいただきたい」

「売る相手がいないぞ?」

「これから間違いなく増えるでしょう。私からすればこの誰もライバルがいない状況で準備を進められることは大きな武器になる。そしてこれはランドさんにとっても悪い話ではないはずです」


 マロンさんの意図はわかる。

 ミッドランド商会は非常に大きな商会だ。その直営の店がある上に、公表するかは置いておくとしてミッドランドシリーズの製作者までいるとなればそれを求めて人はやってくるだろう。

 人が来れば金が回る、それはそのまま領地を支える税につながるのだ。


「この地での利益の三割ほどを納めさせていただく、という形ではいかがでしょう」

「三割もか?」

「ええ。そして今後セラが生み出した商品についてはその売上を折半いたしましょう」


 よし。もうややこしい話はロバートに任せよう。

 もはや俺にはぼられていても優遇されていてもわからなくなってきた。


「頼んだ」

『かしこまりました。ではマロン様、よろしくお願いいたします』


 ミルムも一応横にはいるんだが入ってくる気配はなかった。

 ということはまあ、マロンさんはこちらにある程度有利な話をしてくれているんだろうとは思っていたが、もう細かい話になるとわけがわからない。

 とりあえず二人の会話を聞いていると……。


 セラの工房はこちら、個人的な装備作成は素材さえ渡せばいつでもやってくれる状況になるとのこと。

 これは非常に大きなメリットだった。


 そしてセラは放っておいても素材さえあればどんどん新作を作るという。

 むしろ素材の提供が遅れると住居を壊して素材を回収し始めるという恐ろしい話も聞いた。これは切らさないようにロバートに頼んでおくとして……マロンさんも定期的に持ち込むという話になったようだ。

 そして生まれた新作はミッドガルド商会で販売、その売上を半分ずつにするとか。


 またセラが生み出したもののレプリカ品については利益の半分を貰う形にするらしい。

 半分も良いのかと思ったが口は挟まないでおいた。


 他のものは当初言っていたように三割程度。だがこのあたりは随時様子を見て調整ということになったそうだ。

 むしろ最初は税なんかいらないから人に来てもらったほうがありがたいしな。


「ふむ……ではこれで」

『ええ。ああそれから、従業員についてですが』

「お願いしようと思っておりました。見たところ人前に出しても全く問題が無さそうなアンデッドも多くいるようですしな」


 ん?


「もしかしてミッドガルド商会の店で働かせるのか?」

「ええ。もちろんその分の給与も納めさせていただきますよ。私としても労働力が安定して確保できるのは非常に大きいですからな」


 ということだった。


「とりあえず、これからもよろしく……ということでいいのか?」

「ええ。まずは旧工房からものを数日以内には運ばせましょう。お預かりしていた金額を含めてセラの遺産はその際こちらに運び込ませていただきます」

「まあ、どう使うかは置いておくとしてそれで良いか」

「ええ。では今後ともぜひ、ご贔屓に」


 にこやかに微笑むマロンさんと握手をして、ロバートに投げっぱなしの商談が終わった。

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