第176話 神域ダンジョン【久遠】①
「確認できたようで何より。で、本題だけれど……寿命の概念がほとんどないエルフでも、このダンジョンでは死ぬのよ」
「危険生物やトラップが原因、ってわけでもなさそうだな」
「ええ。ダンジョン【久遠】は、時を奪うダンジョン。入れば時間が加速され、永遠を生きたような錯覚に襲われ、そのまま死ぬ」
「そんなことが……」
エルフの寿命すら奪うダンジョン。
これが神域ダンジョンかと愕然とする。
「まあ、死なない私達にとってはただの古いダンジョンでしかないのだけど」
「すごいな……」
「さすがに封印されている竜にまでこの効果が反映されてしまうとまずいから、最後の階層だけは時間も通常の流れになるわ。私がそこまで行ったら呼び出すから応じてくれるかしら」
「わかった」
事情が事情だ。
エルフが寿命で死ぬということは俺が入ったら一瞬だろう。
「自分が召喚されるのは新鮮だな。というかそんなことできたんだな」
「私の宵闇の棺ならできるわ」
「さすがだ……。わかったよ。しばらく待ってる」
ミルムが行くなら心配はない。
むしろこの森で長く過ごす俺のほうが気を配る必要があるくらいだろうな。
「これは試したことがないから確証はないけれど、貴方が呼ばれるまでの体感時間は、私が入ってほとんどすぐになると思うわ」
「そうなのか?」
「ええ。ここはそういう場所だから」
そう言いながら準備を整えたミルム。
レイとエースと……アールも行けるか?
「場所さえあればだけど、その子は私が中で呼ぶわ」
『きゅるー!』
アールには入り口は狭いからな。
だが今日は活躍の機会がありそうということで嬉しそうに鳴いていた。
しばらくここで一緒に待機組だな。
「ミルムを頼むぞ」
『キュオオオオン』
『グモォオオオオ』
やる気十分のレイとエースを引き連れてミルムがダンジョンへと進んでいく。
「しばらくお別れね……貴方にとってはそうではないんでしょうけど」
一瞬、寂しそうな顔をしたミルムだが、すぐに切り替えた。
だがあんな顔を見せられてそのまま送り出すわけにも行かないな……。
「じゃあ、行ってくるわ」
「待った。これを渡しておくよ」
「これは……?」
「髪飾りだ。こないだマロンが来た時に面白そうなものを見せてもらったから改めて頼んでおいたんだよ」
ドーナツ状の布にゴムを通した髪留め。ブレスレットとしても使えるということで、王都ではちょっとした流行り物になっているらしい。
ミルムの反応は……。
「貴方、こんな気を使える男だったのね」
目を丸くしていた。
思っていた反応とは違うがまあ、新鮮な表情を見れたのは良かったと思っておこう。
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