第44話 元パーティー視点
「やります」
「よぉーし! なーに。どうせ何百年も経って大したもんにならねえだろ! いまならランドがヘマして起こしたってことにできる」
「ん……」
「できるか? クエラ」
「はい。起こすことは問題ないです。確かにロイグさんの言うとおり、何年も経っているため大きな問題にはならないとも……」
「そういうこった! でかいだけ! 見掛け倒しだ!」
クエラが神官の設置した装置に手をかざす。
そのまま祈りを捧げるようなポーズをとると、周囲に渦巻いていた瘴気がみるみる吸い込まれるように竜の骸へと流れていく。
「どんくらいで終わるんだ?」
「ドラゴンゾンビになるのに必要な瘴気はすぐにでも……その後目覚めるまでに少しかかるくらいですね」
「そうか。よし、じゃあ戦闘準備と行こうか」
「これでほとんど大丈夫だと思いますが……」
本当に僅かな時間のうちに作業は終わる。
クエラの目で見て、もうドラゴンゾンビ復活には十分な瘴気を与えられたと思ったところだった。
「なっ!?」
突然クエラが表情を歪めて叫んだ。
「どうしたクエラ!?」
「瘴気のコントロールを奪われました! これは……こんな強さって!?」
すでに目的は達成していたが、それでも魔法に干渉される形となったクエラに苦悶の表情が浮かんだ。
「ちっ……邪魔が入ったってことか?」
「いま俺たちの姿を見られるのは……」
「わかってる! おいクエラ! これで復活はするんだろうな!?」
「はぁ……はい……」
「よし。なら良い」
苦しげにうめくクエラをロイグは気にすることはないようだった。
メイルもまた、今の状況に必要なことだけを淡々とこなす。
「四人の姿は見えなくした。気配は自分で絶って。あとはすぐここを離れる」
「だがドラゴンゾンビは!?」
「近くにはランドがいるんだろ? ランドの雑魚がやられたところで行きゃ良いだろ」
ロイグの顔が残忍に歪む。
「そのくらいの強さはあるだろ?」
「え? はい……ランドさんが単体で勝てるとは思えませんが……」
「ならちょうど良いだろ」
何もかも思い通り。
この時の四人はまさか自分たちがドラゴンゾンビに負けるとは思っていないし、ランドに負けるとも思っていなかった。
ランドがミノタウロスを倒した事実など、少なくともロイグの頭には残っていない。いや正確には、はじめから信じていなかった。
メイルとクエラもフェイドより立場が良いと感じて寝返りを打診したものの、ランドの強さについては過去の記憶が強く残る。
「今度は助けます……ランドさん」
そんなことを本気で思うほどに、四人の心は醜く歪んでしまっていた。
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