第5話

「一体何が……」


 その時だった。

 激しい頭痛とともに頭の中になにかの声がなだれ込んできた。


 ──ネクロマンスの習得条件を満たしました。ネクロマンサーの力を開放します

 ──力の開放によりレイ(一角狼)が使役可能になりました

 ──テイマーの能力、使い魔能力吸収(微)がネクロマンサーの能力、使い魔能力吸収(全)へグレードアップします

 ──レイ(一角狼)の能力を吸収しました

 ──ミノタウロスの能力を吸収しました

 ──ミノタウロスの能力を吸収しました

 ──ミノタウロスの能力を吸収しました

 ──ミノタウロスの能力を吸収しました

 ──ミノタウロスの能力を吸収しました

 ──ステータスが大幅に上昇しました

 ──テイマーの能力、使い魔強化によりレイ(一角狼)のステータスが大幅に上昇しました


「ぐぁ……なんだこれ?!」

『くぅん』


 ぺろぺろと心配そうにレイが舐めてくれていた。


「レイ? レイだよな? お前」

『わぉおおおおん!』


 元気に返事をするレイをよく見ると、俺が抱いていたレイと違い、その身体が透けていた。


「これは……」

『わおん! わおん!』


 だが嬉しそうにしっぽを振りながら俺の周りではしゃぐ姿は、生前のレイそのものだった。

 体が透けていることと、よく見れば浮いていることを除けば。


「待てよ……ミノタウロスって声があったな……」

『グモォオオオオオ』

「うぉっ!? びっくりした……」


 呼びかけに応じるようにミノタウロスの死体から透けた身体が浮かび上がってきていた。


「もしかして、お前らもレイみたいになるってことか……?」

『グモォオオ』


 だがミノタウロスたちの透けた体は、なぜかそのまま光の塊のようなものになり俺の体に溶け込んでいった。


「これは……能力吸収か」


 テイマーは使役する使い魔の力に応じてある程度ステータスが上昇する特性があった。

 おそらくこれが能力吸収(微)というやつだろう。


「てことは……」


 試しに近くにあった壁を思い切り蹴ってみた。


 ──ドゴン


「え……」


 ダンジョンの壁に綺麗な足形の穴が開いていた。


「まさかここまでとは……いやまぁミノタウロス五体分ならこうなるのか……?」


 能力吸収とは言っていたがレイの力が全くなくなるわけではないらしい。吸収というよりは共有のようだな。


『くぅん!』

「ミノタウロスがいなくなったのはあれか。使役するのはまた別の条件でもあるのか?」


 何はともあれとにかく、このダンジョンのフロアボスだったミノタウロスを倒したわけだ。

 生きてる。

 それだけではない。

 大幅に力をつけた感触もある。


 レイを失ってしまったことはショックではあったが、こうしてネクロマンサー? として使役できていることと、この姿になったレイ自身を見ている限りあまり気にしないで良いような気もしてくる。

 今も尻尾を振ってまとわりつくようにじゃれてるからな。


「となると……これならあのパーティーでもお荷物ではなくなるか」


 頭に浮かぶのはあのメンバーの顔だった。

 罵られ、犠牲にされ、殺されかけた……。


「いや、冷静に考えてあのパーティーなんてこっちから願い下げだろう」


 ミノタウロスの居ないダンジョンならあっさり抜けきるだろうし、今頃ギルドの酒場で俺の死を悼むフリをしてあることないことを喋ってるんだろう。


「よし。あいつらにはこの荷物、全部きっちり返した上でこっちから願い下げだと伝えよう」


 ついでにギルドに真実を伝える必要もある。

 パーティーを抜けてソロで活動するならランクはC辺りからになるだろうか。

 それも良いかもしれない。


「自由に生きてみるか」

『ワォン!』


 返事をくれたレイを撫でて次の方針を決めた。

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