第64話元パーティー視点

「魔術協会も、馬鹿にできない、はず」

「魔術協会……」

「ん……私なら、繋がりもある」

「メイルのつながりというだけで口添えできるのか?」

「違う。魔術協会は異種族に対してかなり排他的。中でも今のトップは、ヴァンパイアハンターで名を馳せた賞金稼ぎ、ミレオロ」

「あまりいい噂は聞きませんが相当強かったと存じています」

「ん……未だに魔術協会はヴァンパイアを敵視している。情報だけでも手土産になる。あの戦い、ランドと一緒にいたのは、間違いなくヴァンパイアだった」

「なるほど……」


 フェイドたちはようやくメイルの言っている意味が理解できた。

 そしてもちろん、この状況が情報だけの提供で生き残れるほど甘いものではないこともしっかりと、認識している。


「つまり、俺たちはランドの連れのヴァンパイアを殺して、騎士団と魔術協会の後ろ盾をもって復帰を果たす、か」

「ん……それにヴァンパイアに良い顔をしないのは、教会も同じはず」

「それは……そうですが……」


 アンデッドキラーである聖属性の本拠とアンデッドの王の相性が悪いことはもはや、わかり切ったことだった。


「私たちはもう、そうするしかない」

「……」

「それで戻れるのか? 俺たちは」

「わからない。でも、このままのこのこ帰っても、下手すれば死罪」

「死……」


 ドラゴンゾンビをいたずらに刺激し復活させたことはそれだけのことだった。

 そして、誰がそうしたかも直にバレることは明確だった。


「わかった……それでいこう」

「あの……ランドさんは……」

「ん……ランドは吸血鬼に騙された。私たちが助ける」

「わかりました!」


 クエラの行動動機はもう、聖女である自分を守るためだけのものになっている。

 だがそれが自分自身のためではなく、クエラに聖女としての期待をかける者たちのためであることを、メイルもよくわかっていた。


「ランド……」


 フェイドが複雑な表情を浮かべてはいたが、それでも三人はもう、運命を共にする者たち。異論を挟むものはもういなかった。


 ロイグの亡骸から首だけを確保し、三人になったパーティーは最後の望みに向けて動き出した。


 ヴァンパイアハンター。

 弱点の多いヴァンパイアであれば、たとえ格上の相手でも戦えるはず。そして何より、不死族へのジョーカーとも言えるカード、聖女もいる。

 失うものももう、なにもない。


 三人はそれぞれの思いを胸に歩き出した。







『首……俺の……首……』


 竜の墓場に立ち込めていた瘴気はドラゴンゾンビ誕生後も充満していたはずだった。

 だが不思議なことに、ドラゴンゾンビが消えて数日のうちに綺麗に収まっていた。

 竜の墓場に残された瘴気の量は本来、数日のうちに消えるようなものではなかったというのに、だ。

 まるで何かに吸い取られるようにして、竜の墓場に立ち込めていた瘴気は消え去っていた。


『首……』

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