第122話 元パーティー視点

 メイルが動く。

 部屋には無数の、見る人によってはガラクタにしか見えないものが所狭しと並んでいるせいでメイルも困惑していた。

 尤も見る人がみればそのガラクタのように積み上げられたもの一つとっても、国が動くような代物まで含まれているのだが……。


「あァ……もっと右よ」

「汚すぎる……」

「あらァ。あなたに言われたくはないのだけど?」

「あった……これ……」


 目的のものを見つけてメイルがしゃがみ込み、そして……。


「これ……は……」

「気がついたかァしら?」


 普段物静かで表情に変化のない彼女が、驚愕に顔を染めていた。


「どうしたんだメイル?」

「ちょうどいいじゃァない。馬鹿にもわかるように説明してあげたらどうかしら?」


 ミレオロに促され、魔道具を持って立ち上がったメイルが話を始めた。


「ん……。簡単に言えば、この筒状の魔道具に放たれた魔力はすべて、どんな属性でも、内部でエネルギーに変換される」

「どういうことだ……?」


 メイルの説明に戸惑うフェイド。

 メイルは淡々と説明を続けた。


「火の魔法が放たれれば、中で微量の雷のエネルギーとぶつかり爆発を起こす。水のエネルギーなら熱による気化で爆発的なエネルギーを生む。土や風でも、内部でより強力なエネルギーを生み出すために勝手に使われる」


 メイルの追加説明でもピンと来ていないフェイドたちに向けて、ミレオロが補足する。


「最強種ってのはねェ、どいつもこいつも馬鹿みたいにエネルギーを持ってる。私もそれなりだが、そもそものスペックが違う。龍なんて生まれたときからいまの私よりエネルギー量は多いんだ。そいつらに対抗するには何をすればいい?」


 ミレオロの問いに考え込む二人。

 先に顔を上げたのはクエラだった。


「相手のエネルギーを利用する……でしょうか」

「さすがのあんたも理解したァようだね」


 ホッと息をつくクエラの横でフェイドが叫ぶ。


「待て! そんなこと本当に可能なのか……!? さっきは確かに相性は対策で消せることを知ったが、エネルギーは外に出た時点で別物になるのだろう?! だったらそんな万物から相手のエネルギーを回収することなんて……」

「へェ。あんた、賢くなったじゃァない」


 初めて感心した表情でフェイドを見たミレオロ。


「もちろん純粋なエネルギーとしてみた時、回収したものは相手が放つものよりも少なくなるさね」


 ミレオロが得意げに、楽しそうに続ける。


「だからメイルが言ったように中でエネルギーを膨らませるのサ」

「本来なら、何をしたってエネルギーが増えることはない。使えばすり減る」

「そう。だから私は少しばァかり研究をしたのサ」

「研究……?」


 得意げに笑うだけで答える気のないミレオロ。

 そんな様子をみてイラつくフェイドはメイルのもとへ視線を送った。


「エネルギーを生み出すのは、いつだって生物……」

「まさか……」


 先に気づいたのはクエラだった。


「最高級品をいレてやッたからねェ。あんたらがしっかりやるってんなら、それはメイル、あんたにあげるわ」

「最高級品って……」


 遅れて気づいたフェイドが固まる。

 メイルが震えながら口を開いた。


「エルフが……何人ものエルフが、この魔道具に封じられている」


 3人がついに、ミレオロの狂気に触れた瞬間だった。

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