第121話 元パーティー視点

「馬鹿ねアンタたち。知能のあるアンデッドで、聖属性の対策をしてない馬鹿なんているはずないじゃァない」


 フェイド、クエラ、メイルの三人は、アンデッド最強種であるヴァンパイアを生け捕りにするため、不死殺し《アンデッドキラー》のミレオロにその極意を尋ねていた。


「ですがアンデッドには聖属性……! 聖女である私の力であれば……」


 真っ向から否定されたところに、おそるおそるだがクエラが食い下がる。

 彼女にとって、自分が活躍できる唯一の場がそこなのだ。ここは譲れない思いがあった。


「あァ?」

「ひっ……」


 ひと睨みで身をすくめるしかなくなるクエラだったが、なんとか目線だけはそらさずにいた。


「あんた、なんか勘違いしてるんじゃァないかぃ?」

「勘違い……?」

「アンデッドなんて言ったって、所詮生物はエネルギーの塊。自身が持つエネルギーがゼロになれば、不死でも死ぬわ」

「はぁ……」


 キョトンとするクエラ。

 だがフェイドはなにか察したようだった。


「対策があろうがなかろうが……それを超えるエネルギーをぶつければいいということか」

「少しは頭が回るようになったかしらァ? 使えない勇者候補ちゃんだけど」


 ミレオロを前にすれば元Sランクパーティーもその実力差を前に何も口が出せなくなる。

 二人がギリギリミレオロに相手をしてもらえるのはひとえに、ミレオロの後ろに控えるメイルのおかげだった。


「アンデッドを超えるエネルギーをぶつければいい……人間にとってそのエネルギーが無限に見えるから、不死と呼ばれているだけ。実際には有限」

「そうそう。メイルはよくわかってルわァ」


 楽しそうにメイルを撫でるミレオロと、鬱陶しそうにそれを受け止めるメイル。


「……これ、本当に役に立つ?」


 メイルが手にしていたのは中身が空洞になった棒状の魔道具だ。

 短杖程度のサイズで、そのままでも魔法使いの杖のようには見える。実際ミレオロがつくっているだけあり、魔法効率が非常に高い杖としても使える一品ではあったが、それだけならこんな構造にはしない。


「あら。私を信じてないのかァしら? メイル」

「信頼はしていない」


 きっぱり宣言するメイル。


「でも、その技術は信用する。だから聞いてる」


 その言葉に楽しそうに口元を歪ませてミレオロがこう答えていた。


「ふゥん。いいわ。その魔道具の制作過程はそっちに転がしてるわ。あなたなら見ればわかるでしょう?」

「ん……」


 二人の間にある不思議な空気を、フェイドは何故か懐かしそうに眺めていた。

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