第168話 新装備

「それにしてもここまで改造できるものなのか……」

『ん? あ、ランドたち。良いところに来た』


 セラがこちらに気付いて手を止めた。


『ん。サイズは大丈夫。微調整も……良い。はい』


 何やらカチャカチャとやっていたなと思うとおもむろにアイルの方に何かを差し出した。


「これは……」

「チェインメイル……ってこんな精巧な作り初めてみました……」

「使ってる素材……これ、新金属?」

『ん。私が作った。軽くて魔法はほとんど無効化できる。打撃もかなり吸収する。着けてれば少なくとも一撃でやられることはない』

「すごい……」


 アイルが感嘆する。


『アイルは全身の鎧まで全部作ってある。あとで試して』

「本当ですかっ!?」

『ん。あとミルム……これ』

「私? これは……ピアス?」

『ん。闇魔法の効果を増強する。あとそのピアスには悪魔一体分くらいは封印できる。魔力を循環する先を増やすことで今までとは全く違う動きができる』

「すごいわね。ありがとう。使うわ」


 どれも破格の性能だな……。

 ミルムがすぐに受け入れるあたりもそれを物語っていた。


『で、ランド。これ』

「これは……剣の……柄か?」

『正解。詰め込めるだけの素材を詰め込んだ。普段は短杖の代わりになる。魔力を込めれば魔法剣になる。持ってるだけで死の力……宵闇の魔力を高める。ネクロマンサーのための装備』

「ネクロマンサーのための装備……」


 全く情報がないと言っても良いところからよく作り上げたな……。

 それに魔法剣なんて……。


「理論上可能とは聞くけれど……魔法剣なんてここ何十年もダンジョンからも産出していないんじゃないかしら?」

『頑張った』


 それだけで済ませてしまうセラ。

 だがミルムの言葉がそのままその功績を物語っていた。


『あとはレイ、鉤爪をつくった。これでかなり早く動けるはず。エースは大鎚、有り余った魔力を乗せれば威力にも速度にも変換できる。アールは鐙だけど、軽くてストレスのない形。あと攻撃を受けても吸収する防具になってる』


 次から次へと飛び出す神具級の武具に必死に頭を追いつかせる。


「とりあえず喜んでるからいいか」

『キュオオオオオン』

『グモォオオオオオ』

『きゅー!』


 というかいつの間にかこいつらを出しても問題ないスペースをゴーレムたちが気を利かせて作っていたのも驚いた。


『あとはアンデッド軍のために汎用装備も作ってある。これはもしかしたらマロンが喜ぶかも? 今度来たら見せて』


 そう言って何本も剣や槍、盾や鎧を見せてもらう。


「これは……」

『オリジナルは私が作った。あとはゴーレムと……この前から来てる他の鍛冶師がやってる』

「なるほどな」

『もうそれなりに出したはず。どこにあるかは知らないけど』

「ロバートに聞いてみるよ」

『ん』


 おそらくすでに実戦投入されているのだろう。

 そしてこれが新ミッドガルドシリーズになっていく可能性も大いにあった。


『試作で作ったのは使ってる素材が良すぎて他に作れなかったやつ。後で持っていって』

「わかった」


 ゴーレムが持ってきたその剣たちは、一旦アイルが預かって上位種に配ることになった。

 当然のように神具級の武具に仕上がっている。


『じゃ……』

「ありがとな」

『ん……』


 それだけ言うと作業に戻るセラ。

 俺たちはしばらく工場見学のようなことをしてから帰った。

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