第110話
『おお。ご決断なされたのですね。これでアルバル領も安泰ですな』
次の日、この地域の現状を聞くためにロバートを捕まえていた。
ロバートが危うく成仏しそうになるくらい喜んでいたので必死に食い止めた。危ない。ロバート抜きには貴族なんてやるつもりはないからな……。
「いいのか? 本来は誰かしらゆかりのある人間がやってこそとか、そういうのは……」
『あのときの出来事でほとんどが亡くなっております。血筋と呼べる範囲にいるのはお嬢様くらいですから……』
となると自然と自分で継ぐより、誰かが継いだ上で子どもに託すことが唯一血を残す手段なんだな。
「私たちの願いは、ここがまた活気ある領地の姿に戻って欲しい。ただそれだけです」
なるほど。
アイルがそう言うならそれでいい。
『しかしこのまま行くと活気は戻るかもしれませんがほとんどがアンデッドという異例の領地になりかねませんな』
「アイルには悪いけどしばらくはそうなるな」
アイルはまた「お化け……」と怯えているがロバートたちと同じようなものだと説明して宥める。
そのうち人が増えるとしたら、眠らないでいい優秀な護衛としてゴーストたちが街を守るだろう。幸いゾンビのような見た目が心臓に悪いタイプがいたとしても、俺の【ネクロマンス】なら存在進化で屍人のような見た目に問題がないラインまではもっていけるだろう。その点は安心だった。
問題は……。
「人が安心して暮らすためには、封印に綻びが見えるダンジョン二つの攻略が必要か」
『そうですな……我々であれば問題はないのですが、ダンジョンから溢れ出る魔物の強さは並みの人間ではかなり厳しい相手でしょう』
ロバートの口から出る特徴だけで判断するなら、ランクBくらいの冒険者がパーティーで臨むような相手もちらほら出現しているそうだ。
この領地自体が上位冒険者向けの狩場と言ってもいいかもしれなかった。
セシルム卿の図らいで人の出入りがなかっただけで、広まればいい狩場かもしれない。実際アルバル家の統治下では冒険者たちのための施設を各村々が用意していたらしいからな。
流石にいまほど無法地帯ではなかったようだけど……。
「といっても、人が住むことを考えれば整備したほうがいいよな」
「いずれにしてもアンデッドは残すんでしょう? そもそも人が来るのかしら……」
アイルの様子を見るとやはりアンデッドへの抵抗は強い。
だがまあ、なんとかなる気もしていた。
「そのへんはちょっと、このあたりを回ってみて考えるか」
見た目に抵抗がない相手なら大丈夫……だと思いたい。
幸いこの地にいて、かつ俺が【ネクロマンス】で使役状態になる相手なら特段問題はないはず……。
「万が一問題になりそうならこの屋敷の周囲だけアンデッドタウンをつくろう」
「ひっ!」
アイルが小さい悲鳴を上げていたが、慣れてもらうしかないだろう。
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