第198話 中途半端
「へェ。お前はメイルが壊れちマってもいイんだねぇ?」
「違う……私はっ!」
二発目の魔法。
それは森へと降り注ぐことなく、奇跡の聖女――その候補だったものによって食い止められていた。
“天才”メイル、それもミレオロの改造によって力を高められたその一撃は、当然クエラを持ってしてもノーダメージで食い止められるものではない。
だが不思議なことに、攻撃したメイルのほうが消耗を見せていた。
「はぁ……はァ……」
「いけない……メイルさん、回復を」
「無駄なんだァよ。こいツはもう壊れちまってんのサ。治す方法なんテありゃしナい。換えを持ってコないといけないんダよ!」
「ですがっ!」
食い下がるクエラ。
その様子を見てミレオロは一言、こう言った。
「中途半端なヤつだね」
「――っ」
その一言が、クエラに突き刺さる。
わかっていたのだ。
流されるままにパーティーに参加し、流されるままにランドを見殺しにしようとした。
その後もそうだ。
メイルについていき、ミレオロに出会った。
ランドたちへの接触後も、どっちつかずのままずるずるとここまできた。
何もかも、人任せで、自分で決めたことなど何一つなく、それで何かを得続けたいと願い、何も失いたくないと夢見ていたのだ。
「あんタ一人が抵抗したとこロで、助カる命の数は変わりゃシないのサ」
聖女候補として、目の前の命なら全てを救えると信じてやまなかったクエラ。
そのくせ自分の身を守るためであれば、目の前の命などあっさり見放せたのだ。その事実にずっと目を背け続けてきただけだ。
「……」
その聖女が、ようやく自分と向き合い始めた。
だがそれは、彼女のこれまでを思えば遅すぎる話であり、誰も彼女を待ってくれなどしないのだ。
「やりナ。メイル」
聖女が自分を捨ててでも、友を捨ててでも、見知らぬエルフを救う決断をするには、時間が足りなかった。
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