第139話 一斉強化

『領民の【ネクロマンス】は一通りお済みでしたかな?』

「いや……全部とは思えないけど……」


 一度見て回ったときにアンデッドに出会うたびにネクロマンスをして回るという状況にはなっていたが、さすがに全員ではないだろう。


「貴方は広域に出来たんじゃなかったかしら?」

「そういえばそうだ」


 取り急ぎ領地開拓にあたっては【ネクロマンス】で繋がったアンデッドたちに頑張ってもらう、ということでロバートとも話がついている。

 そのためにもまず領地にいるアンデッドたちすべての【ネクロマンス】が必要だったのでアールに乗って空から領地全体に【ネクロマンス】を放つことになった。


『きゅるるー!』


 ご機嫌なアールに乗って飛び立つ。

 空から見るとよくわかるが、四つのダンジョンを中心にいくつかの集落があったことがわかった。

 街道もある程度整備されており、山々に囲まれながらも山道が辺境伯邸のある城下町まで伸びているのもわかる。


「やるか……【ネクロマンス】」


 ──シャドーのネクロマンスに成功しました

 ──シャドーのネクロマンスに成功しました

 ──シャドーのネクロマンスに成功しました

 ──シャドーのネクロマンスに成功しました

 ──ゴーストのネクロマンスに成功しました

 ──ゴーストのネクロマンスに成功しました

 ──ゴーストのネクロマンスに……


「うお……」


 一瞬目眩がするくらいの無数の声が俺の頭に入ってくる。

 前回やりそびれてたのがこんなにいたのか……。

 というかこれ……。


 ──ゴースト(ワーベアー)のネクロマンスに成功しました

 ──シャドー(フクロネズミ)のネクロマンスに成功しました

 ──スケルトンのネクロマンスに成功しました


「魔物も混じってる……」


 結局千を越えるアンデッドの【ネクロマンス】に成功し……。


 ──能力吸収によりステータスが向上しました

 ──使い魔強化によりアンデッドたちの能力が向上します

 ──ゴースト(ロバート)がスペクターに進化しました

 ──ゴーストがレイスに進化しました

 ──スケルトンがスケルトンナイトに進化しました

 ──ゾンビがグールに進化しました

 ──ゾンビがドラウグルに進化しました

 ──ゴーストがレヴァナントに進化しました

 ──シャドーがゴーストに……


「無限ループだ……」


【ネクロマンス】したアンデッドたちによって俺と使い魔の能力が強化される。

 能力が強化されたことで存在進化が起こる。

 存在進化によって能力が強化され、それが俺と他のアンデッドたちにまた分配される……というのを何度も繰り返していくうちに、領地は瞬く間に前代未聞の上位種のアンデッドたちが跋扈するゴーストタウンになっていた。


「ま、降りるか……」

『きゅるー』


 少し物足りなそうなアールを撫でてやりながら地上に戻ると、ミルムはジト目で、アイルは口を開けて出迎えてくれた。

 ロバートは一見いつもどおりだが、よく見ると冷や汗をかいているようだった。ゴーストって汗かくんだな……いやもういまはスペクターだっけか。


「やりすぎよ……」

「いや俺にコントロールできる話じゃないからな?」


 ミルムにも呆れられる始末だった。

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