第10話
思い通りにならなかったことが気に食わなかったロイグが叫ぶ。
「調子に乗るんじゃねえぞてめぇええええ!」
「やめろロイグ」
フェイドが止めに入るがロイグは止まらなかった。
「てめえがしっかり荷物だけでも守ってりゃあんな苦戦なんざしなかったんだぞ!? ぁあっ!?」
「苦戦……?」
「ちっ……」
ロイグの口から出たのは意外な言葉だった。あのダンジョンからの帰り道で、四人が苦戦することなど考えても見なかったからだ。
「ロイグが前衛が下手なせいで、クエラが怪我をした」
「おい! メイルてめえ!」
「クエラが?」
見ると確かにクエラのローブには血がこびりついていた。返り血ではなかったらしい。
「あはは……もう大丈夫ですが……」
回復士は基本的に自分に術をかけるのを苦手としている。少なくともダンジョン内でそんな余裕はなかっただろう。
なるほど……。でもまさかそこまで追い込まれるとはな……。
「もう容態は良いなら、ローブの換えはちょうどあるぞ」
「え?」
エースに合図して宝箱から持ってきたローブを机に置いてもらった。
「今の……一体どうやって……」
宙に浮かぶ荷物を見て不思議そうにフェイドが尋ねたが、クエラがそれをかき消すように叫んだ。
「これ……! 私のローブと同じ……いやもっと性能がいいですよ!?」
「なっ!? クエラが着ていたローブは教会の保有していた神器の一つじゃないのか!?」
「てめえどこでこんなもん……」
俺が答える前にメイルが喋ってくれた。
「ん……。フロアボスを倒した報酬」
「はぁっ!? ミノタウロス五体だぞ!?」
ロイグが声を荒げる。
「他のもあるから少し待ってくれ」
準備を始めるとロイグがにやりと笑った。
「ほー。たまには使えるところもあるじゃねえか。これだけのもんが他にもあるっていうなら時間の無駄でもなさそうだ。おい! わかってんだろうな? 全部置いてけよ?」
「全部……?」
「そりゃそうだろうが! 今回はてめえが雑魚のせいで命からがら逃げ帰る羽目になったんだぞ! てめえみてえな使えねえやつにやるもんは何一つねえよ! そもそもいつも通りだろうが! おめえに報酬がいかねえのは」
「おい馬鹿!」
フェイドが止めるが後の祭りだった。
パーティーの報酬が行き渡っていないことをギルドの中で自ら公にしてしまったのだから。
「その話もランドさんから詳しく聞きましょう」
「はっ……! おいてめえ、わかってんだろう……へ?」
ロイグがまた腕を掴もうとしたがエースにそれを止めさせた。
「なんだこれ……」
見えない何かに手を掴まれた形だからな。これ、戦闘で便利かもしれない。
指輪の力でエースの姿を見せることにした。
「なっ……」
「ひっ……」
「……」
「これは……」
4人がそれぞれ声を漏らした。
「殺したミノタウロスが仲間になってくれたんだよ」
「なっ……お前はテイマーだったはずだろ!? 死んだやつが従うなんて……」
「レイも死んだと言ったじゃないか」
「だが……」
信じられないものを見たフェイドはなぜか、焦ったように表情を歪ませていた。
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