　別室に入って事の顛末を話した。

　いくつか質問を受けながらだが、おおよそこれまでの扱いと今回フロアボスの間で囮にされた経緯を話しきったところで、ニィナさんがため息をつきながらこう漏らした。

「それにしても、バカなことをしましたね。彼らは」

「そうですね」

「いえ、この件ではなく、ランドさんを手放したこと自体が、ですよ」

「え？」

　ニィナさんの言葉は想定外な視点だった。

「確かにレイが死んだことでなぜか強くなりましたが……」

「いえ、テイマーだったランドさんのときのことを言っています」

　最初は冗談かと思ったが割と真剣な目をして告げられた。ニィナさん、基本的にクールだからわかりにくいんだけどな……。

　とにかく、外から、とりわけギルドから見ていればあのパーティーを支えていたのは俺だというのだ。そんなことあるか……？

「テイマーのときの俺はほとんど役に立たないから荷物持ちをさせられてたんですよ……？」

「逆です。荷物持ちをしながらパーティーに足りない要素を補っていたことがまさに、テイマーというもうひとりの相棒を使えるからこそできた裏技なんです。こうした補助スキル持ちの方でなおかつ、Ａランク以上のクエストに同行して自分の身を守れるというのはかなり貴重なんですよ？」

「そうなんですか……？」

　いまいちピンとこないなと思っているとニィナさんが言葉を続けた。

「でなければ運び屋なんて職種もいなくなります」

ああ……。

運び屋は文字通り何かを運ぶことをさすが、人間を移動させる能力の他、ダンジョン内へものを運ぶ、いわゆる荷物持ちを担当する職種だった。

「ランドさんは本来パーティーメンバーが分担して行う荷物持ちや索敵、警戒その他をほとんどを使い魔を使役することで一人で引き受けていましたから、そうでなければ彼らはまだＳランクにはなっていませんよ。私達が止めていました」

「そこまで……？」

　ランクを決めるのはもちろんギルドだ。

　特にＳランクともなれば国家の顔とも言える看板。確かにそういえばそれぞれのパーティーメンバーがＳランクとして認定されるんじゃなく、パーティーとしてＳランクって言われてたな。

「ロイグさんはちょこちょこ問題行動を起こしていましたので気にとめる余裕はなかったですが、もしフェイドさんまでランドさんを外すように動き始めたときにはこの話をするつもりでした。ですが……まさかこんなことになるとは……」

　ニィナさんが頭を抱えていた。

「一応確認しますが、クエラさんとメイルさんだけ引き取ってランドさんがパーティーリーダーをするのは……」

「ないです」

「ですよね……」

　あの様子を見ていたニィナさんはあっさり引き下がった。

　ただまあ、あの様子を見ていたニィナさんがダメ元で確認したくなる程度には切実な問題であることを意識させられた。

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