第22話

「ここか……」

『キュオオオオン』


 長旅の疲れを労るように鳴いてすり寄ってきたレイを撫でて改めて振り返る。

 ギルドに渡された地図を頼りに数日、レイとエースとともに歩いてたどり着いたのは、見るからにアンデッドが潜んでいそうな荒廃した村だった。

 不思議と周囲の空気も黒く濁って見えるほどだ。


『グモォオオオ!』

「なんか感じるのか? 一応同じアンデッドとして」

『キュオオオオン!』

「全然何言ってるかわからないな」


 この道中でいくつかわかったことがあった。

 まず1つはレイとエースとのコミュニケーションについて。


 テイマーのときと同様、ある程度相手の意思はこちらに届く。戦闘時の連携やこちらからの頼み事などはほとんど問題なく理解してもらえる様子だった。

 そして基本的にはこいつらの思いは俺にも届く。喜怒哀楽の簡単な感情表現が主だが、こちらの知らないことでも意思を持って伝えてくればわかることがあった。例えば彼らの死体を持って行って欲しい場所があるという話などだ。

 ただこうして意味もなく鳴いているときや相手からこちらに伝える意思が弱いときはよくわからなくなる状況だった。


「で、この周囲にお前らが行って欲しい場所があるんだったな」

『キュォオオオン!』

『グモォオオオオ!』


 こういうのはよくわかる。

 というよりもうほとんど引っ張られるように連れて行かれていた。テイマーやネクロマンサーじゃなくても分かる範囲だった。


「おいおい止まれ止まれ、なんかいるぞ!?」

『グモォオオオ!』


 ──バコォオオオン


 チラッと見えた骸骨やゾンビが二匹に問答無用で吹き飛ばされていた。

 一応手合わせとこ……。


 ──ネクロマンスに成功しました

 ──能力吸収によりボーンソルジャーのスキル「初級剣術」を取得しました

 ──能力吸収によりボーンソルジャーのスキル「初級槍術」を取得しました

 ──能力吸収によりボーンソルジャーのスキル「状態異常耐性」を取得しました

 ──能力吸収によりゾンビのスキル「体力増強」を取得しました

 ──能力吸収によりゾンビのスキル「食事回復」を取得しました


「えええ……?!」


 手合わせただけだぞ?!

 なんでだ!?


『キュオオオン』


 レイが叫ぶ。

 今回は意思を持った叫びだったらしい。


「ネクロマンスは死んでりゃみんなかかるって……そんなことあるのか?」

『グモォオオオ』


 エースが補足する。


「ああ……確かにそう言われるとそうだな……」


 殺されたばかりだというのにすぐに付き従ったエースを見れば確かに、テイムとは異なる基準があることは確かだった。


「にしても、死んでるのが全部ネクロマンスできるってのは……」

『キュオオオン』

「ああ、もし本当に出来るなら試す価値はあるな」


 レイが提案してきたのはテイマーの頃の常套手段を活かせというものだ。

 俺は周辺一帯、姿が見えていない生き物でも一時的にテイムを行うことができるスキルを持っていた。

 これをネクロマンスでもやろうという話だった。

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