第39話
「何はともあれ竜は死んだわけだ。というより、死んだ竜と帝国があったこと、あとは勇者と呼ばれる人間がいたことだけは分かってて、後のことはわからん」
「適当なのね」
「そんなもんだろ?」
「私たちは始祖が自分で喋って伝えたから……って言っても確かに、なにがほんとかなんてわからないわね」
寿命の問題で違いはあっても結果は同じというわけか。
「で、竜の墓場についてだな」
どこから説明していいものか……。
俺も一応情報収集はしていたから、ギレンが言うまでもなく異変が起きていることはわかっていた。
さすがにドラゴンゾンビ発生の危機とまでは考えていなかったが、噂自体は例年通りよく聞いていた。
「ずっと瘴気が溢れる危険な土地として認識され続けている。だがここでしか現れない魔物とか、竜の骨から得られる薬とかを求めてたまに冒険者が行くことはある場所だな」
それこそSランクパーティーでもなければ来ることもない土地だが。
瘴気が濃すぎてダンジョン深部と同じくらい体力を削られるからな。
「まあ、結局どんなところかは行かないとわからないわけね」
「そういうことだ」
そんな話をしながら、なんだかんだ楽しく竜の墓場までの道のりを歩いていた。
道中で飛ぶ練習をしたりレイを移動手段として使えないかも色々試しながら来たのでフルスピードというわけではなかったが、それでもレイに乗っていたわずかな時間だけでかなりの距離を稼げたこともありあっという間の道中になった。
「ここね」
「うわ……思ったよりひどいな……」
「そうなの?」
「ああ。一回見にきたことはあったけど、あの時はこんなひどくなかった」
前に来た時は薄紫のオーラが辺りを包むくらいで、景色も向こうまで見渡せていた。
いまはもはや、どす黒いと言っていいほどの瘴気が辺りを覆い、ここからではドラゴンの骸すら確認できない状況だった。
「瘴気が増すのって、なんか理由があるのか?」
「ん? んー……そもそも魔力を持った生物の死体をこんな形で放置しておくとだいたいアンデッドになるけど、この子は無理やりそれを押さえつけられてたのよね」
「まあ……そういうことになるのか?」
押さえつけていたという発想はなかったが。
ということは押さえつけていたものが溢れ出しているということか……わざわざギルドが調査依頼を出した理由がなんとなくわかってきたな。
「元々持っていた魔力が強すぎたからだと思うけれど、まだ溢れるわね。これ」
「流石に放置はできないな……」
瘴気が濃くなればその力をもとに強力なアンデッドが生まれる。
リッチとか生まれたらそれこそ、魔王クラスになりかねないしな……。
気を引き締めよう。
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