追放されたお荷物テイマー、世界唯一のネクロマンサーに覚醒する 〜ありあまるその力で自由を謳歌していたらいつの間にか最強に〜

第134話

　もちろんフェイドへも、クエラやメイルへも恨みはあった。

　どうしてという思いも、ずっと持っていた。

　だがこいつらへの恨みは、レイが還ってきたときにはもう、俺の中で終わっていたのかもしれない。

　レイ自身、あの姿になってからのほうが活躍の場が増えて喜んでいることがその気持ちに拍車をかけていた。

「だけどまあ……こいつらはなんとかしないとな」

　すでにロイグとフェイド、この二人は助からない。

　だがフェイドがつないだ命はまだ、二人分残されている。どうするかは一旦置いておくとして、見殺しにできるような気持ちは芽生えなかった。

『グルゥアアアアアア』

　デュラハンとなったロイグの大剣が俺を襲う。

　だが幸い物理攻撃ではもう、【黒の霧】を発動する俺に攻撃は届かない。そのおかげでできた隙をつくことで、こちらの攻撃だけが一方的にロイグに叩き込まれる。

「そんなもんか！　ロイグ！」

『グラァアアアアアアアアアアアアアアア』

　風に乗ってクエラが驚愕する声が聞こえてくる。

「あれが……ランドさん？　あのデュラハンを……圧倒するほどの力を……」

　デュラハンの単調な攻撃は俺に全く届かない。

　デュラハンの脅威はそのパワーと、そして何より、どこにでも現れる執着力だ。デュラハンに狙われたものは、先に精神をやられる。

　いつも、どこにいても狙われる恐怖と、その驚異的な耐久力が対象の絶望を誘う。

　反面、正面から戦えば攻撃は単調。

　一度狙いを定めた相手が自分から近づいてくれば、姿を隠した奇襲すら仕掛けてこなくなる。

「お前が生きたままのロイグなら、こうも簡単には行かなかっただろうけどな！」

　何度も剣を叩き込む。

　鎧がひしゃげる。

　大剣に亀裂がはしる。

　デュラハンが誇る耐久力を持ってしても無限というわけではない。

　このまま剣を叩き込めばいつかその活動を終える。

『グアアアアアア』

「【黒の霧】」

　再びロイグが剣を振るうがもう俺はそこにはいない。

「消えた⁉」

　下から今度はアイルの声が聞こえる。

　こう驚かれると、なんか俺も人間離れしてきてしまった感じがすごいな……。

　いや集中しないと。

　いくら【黒の霧】で物理攻撃が効かないとはいえ、デュラハンならそれだけで終わらないはずだ。

　いやむしろ、そのためにこうして誘ったのだ。

『グルゥラアアア』

「きた！」

　狙い通り、デュラハンがその身から紫がかった黒い瘴気を放出させる。

　物理が効かないから死に誘うことを諦めるような魔物ではない。

　ドラゴンゾンビのときと同じ。これで大幅に相手の力は削り取れるはずだ。

　もっともそのためには、この攻撃にしっかり対応できないといけないのだが……。

　来る攻撃に備え、改めて剣を構え直した。