第67話
懐かしさすら感じる名前だった。
今考えればあそこから俺は始まったともいえる場所でもある。
「8階層のボスはドラゴンゾンビだし、そこまでならいけるわよ」
「もうドラゴンゾンビと戦いたくはないんだけどな……」
「考え方を変えたほうがいいわね。次はドラゴンゾンビと戦っても無傷でいられる準備をしておく。そうしないと、あれより強い相手にあたったときになすすべなく死ぬわよ」
「平和に暮らしたい……」
「無理ね」
断言されてしまった。
どうして……。
いやでもまぁ、ミルムと一緒にいればあれ以上の相手との遭遇というのもまあ、なくはないのだろうと思ってしまう部分があるのも事実だった。
「あのダンジョンを8階層までいければ武器には困らないと思うわ」
「じゃあ次の目的地はそこか……」
備えておいて損はない……ということだろう。
5階層でも神具級の装備だったのだから、その先も確かに少し、楽しみな部分もあった。
あそこに行くのはそれなりの覚悟がいるけどな……。
「ダンジョンに行こうと思えば準備も必要だし、いま揃えられるものを揃えたほうがいいわね。というより、あなたのそれって装備というより全部本当にただの布よね……」
「服って全部ただの布じゃないのか……?」
「何のためにあなた達は素材を集めていたのかしら……ほとんどの武器や防具には魔物の素材を組み込むことで魔法的な加護を与えられているの。貴方くらいよ、ギルドでただの布をまとっていたのは」
「ええ……」
そうだったのか。
まあ装備を買い揃えるときは俺だけ荷物番をしていたから、全部フェイドに任せきりだったんだよな……。それでもある程度のものは身につけてると思っていたんだが……。
「まずはそれを整えるところからね」
「防具を揃えるならアレイドの街の方に出たほうがいいか」
ついていっていただけだがフェイドたちがいつも装備系の買い物はそこでやっていたのでそこがいいんだと思う。
「私はその辺りはわからないけれど、いきましょうか」
本来は歩いて三日はかかる場所だが、今の俺たちには安定した移動手段があるからな。
「行けるか? アール」
「きゅっ!」
凛々しく返事をするアールを撫でると気持ちよさそうに目を細める。
そしてレイも同じように撫でろと頭を押し付けてくるので相手をしてやった。
「もうこの状況で遠慮すんなよ」
物欲しそうな顔をしていたエースをポンポンと軽く叩くと満足げな表情になっていた。
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