第33話
改めて頭を下げたギレンと向き合う。
「いや……それより大丈夫か? 管轄下のSランクパーティーで……」
「お前は怒りこそすれ心配する立場ではなかろうに……。だがまあ……セシルム卿のおかげで国を挙げての問題にはなっておらん。先に勇者認定を出していたらと思うとゾッとする……」
セシルム卿。
この地域を治める辺境伯だな。
「フェイドたちはどうなるんだ?」
「ん? ああ。あれでもSランクパーティーだからな。悪いが追放はできん」
「いやいやそんなことは求めてないけど……」
「ひとまず謹慎。パーティーは維持。だがロイグだけはもう看過できんかった。近いうちにあれには処分を下す」
「処分、か」
思い返すと確かに、前回のギルドでのロイグの言動は問題になるのも頷ける話だった。
「ライセンスを剥奪する。当然騎士団にも戻れん。もうこうなってくるとあいつがいて良かったとすら思えるな」
「どういうことだ?」
「身もふたもねえ言い方をするならまぁ……しっぽ切りだ」
「おいおい……」
良いのだろうか。そんな言い方してしまって……。
「お前には悪いがあんまり大事にはできねえ。そしてこいつに関しては俺らに押し付けた国にも負い目がある。良いように使わせてもらうぜ」
「なるほど」
ロイグについては仕方ないだろうな。
むしろロイグの過失を目立たせる形で収められてよかったというわけだ。
特にクエラは教会の顔だしな……。メンツを潰しにくいのだろう。
「他の3人はまあ、Aランクパーティーへ格下げだろうな。それだけだ」
申し訳なさそうにこちらをみるギレン。
別に気にしてないんだけどな。
「ですが、あの三人がこれまで通り活躍するのは難しいでしょうね」
ニィナさんがお茶を出してくれながら口を挟んだ。
ふと隣を見ると頬をリスのように膨らませたミルムと目があった。意外にもずっとおとなしく待っていたかと思ったがなるほど。そういうことか。
「ふぁ、ふぁって! ごくん。これは違うわ? 違うのよ?」
何が違うのかわからないがまあ本人が違うというのなら違うんだろう。
見なかったことにして話に戻った。
「三人じゃ活躍できないか?」
「うーむ……まあ並みの冒険者たちよりゃ、個々人がつええ。フェイドは単体でAランク相当の剣士だ。他の二人に至っては各組織のトップポテンシャルだ。次期Sランク……まあ本来なら賢者と聖女の筆頭候補だったからな」
そうだよな。
だがニィナさんがそれをぶった切った。
「三人がそれぞれベストなパフォーマンスを発揮できれば良いですが、そうならないことは間違い無いです」
断言する。
そしてギレンも同意を示していた。
「ま、だろうよ。まともな前衛と、パーティーの補助役。自分らでこなせねえ仕事が多すぎる。そして今こいつらに手を貸す上位の冒険者はまあ、いねえな」
「ランドさんを置き去りにした件はもはや公然の秘密ですからね。彼らより強い人間は彼らを選びませんし、彼らより弱い人間はその噂を恐れて近づきません」
「なるほどなぁ……」
「まあ本人たちが足りないもんに気づくのに期待するしかねえな。で、そろそろ本題に入ろうか」
ギレンが居住まいを正した。
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