第34話

 それに合わせるようにミルムも食べるのをやめて背筋を伸ばす。いやまだ食ってたのか。よくそんなにお茶菓子あったな……。


「さてと。お初にお目にかかる。見たところ相当高位の魔族。話から察するに……ヴァンパイア、それも王族だろう?」

「見る目があるわね。その通り。ヴァンパイアロードよ」

「とんでもねえもん連れてきたな……」


 ギレンが頭を抱えていた。


「なんだおめえ、可愛さにやられて眷属になったか?」

「眷属ならこの銀のスプーンも持てないだろ」


 ティースプーンを持ちながら告げる。


「それもそうだな」

「私と彼は仲間よ」

「ほう……」


 仲間を強調するミルム。


「眷属でなくても契約で結ばれているわ」

「お前、この子に何したんだ?」


 ギレンの疑問はもっともで、俺も思っているところだった。

 なんで懐かれたのかよくわからない。


「まあいいか……ちょっとお前らには申し訳ねえことばかりになるが、悪いが素性は伏せてくれると助かる」

「だってさ? ミルム」

「まあ、構わないけれど」


 一般的なヴァンパイアとしての弱点はないわけだし、問題があるとすれば羽根くらいだ。まあこれは俺も取得したしうまく言えばごまかせるだろう。


「やっぱり、人間にとってヴァンパイアは……」

「まあ、気にするやつもいる。特に国の上の奴らはうるせえのが多いからな……」


 複雑だな……。

 ミルムにとっては怖いとまでいう人間に囲まれてるし、俺はミルム側で考えないとだな。


「で、戻ってきたらランドに頼みてえことがあった。これが多分、ちょうど良い話だ」

「ちょうど良い?」

「なに。ヴァンパイアが怖い人間たちに見せてやりゃ良いだろ。いかにヴァンパイアを敵に回しちゃなんねえか、味方でいることがどれだけ心強えことかをな」

「嫌な予感がするな……」


 それだけ厄介な依頼だということになる。


「セシルム卿直々の依頼だ」

「それは……」


 辺境伯直々となれば名誉なことだが、その分厄介であることは間違いない。

 予想に違わず、その依頼内容はとんでもないものだった。


「ドラゴンの墓場の調査、および問題があればその対処だ」

「ドラゴンの墓場……か」

「ドラゴンの墓場……?」


 ミルムには馴染みがないらしかった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る