第76話
「ふむ……もしランド様がその予算を使って装備をお求めになるということでしたら、私から最高の腕を持つ職人へ声をかけます」
最高の腕を持つ職人……か。
「我が商会の武具はご覧になられたことはございますでしょうか?」
「ああ、もちろん」
ミッドガルド商会の武具の最大の特徴は、安価ながら品質の統一されたいわゆる量産品が並ぶことだ。
普通、例えば剣を選ぶにしても、その良し悪しは一本一本、材料、作り手、工程、そして保存状態などで大きく変わる。そのため道具の目利きを求められるものだった。
だがミッドガルド商会は、統一した規格に基づいて武具を量産しており、値段に比例してしっかりと品質が保証されている。
──ミッドガルドシリーズ
ミッドガルド商会を大きく躍進させた要因の一つだ。
「ありがとうございます。御存知の通り我が商会はいわゆる規格品を中心に取り揃えておりますが……そのオリジナルの製作者がおります」
「オリジナル……」
「今、世に万の単位で売れたその武具のオリジナル。量産は魔法で行いますがオリジナルはもちろん職人の手で作られております。そのオリジナルを作った者に、ランド様、ミルム様の装備を整えさせましょう」
「おお……」
それはなんというか、すごいな?
だが……。
「さすがにこの予算全部はなぁ……」
「もちろん。我々もそれを扱い切れはしません。ですが、希少な素材をふんだんに使い、ランド様とミルム様に合わせた最高の品質のものをご用意するとお約束いたします」
「なるほど……ミルム? どうする?」
「ふぇ? んっ……ごく……えっと……」
「もしかして……話すら聞いてなかった?」
「聞いてたわよっ! でも人間の職人にダンジョンの神器級の装備を作れるのかしら?」
そういえばミルムはもともと今使っているものよりいいものを探すならダンジョンに行く必要があると言っていたな。
ミルムの問いにマロンは自信満々にこう答えた。
「人間には無理でしょう……ですが、私の知る職人であれば、神器へ到達し得るかと」
「そこまでなのか……」
マロンがそこまで言うのであれば、乗る価値もある話かもしれない。
──神器
ダンジョンで稀に産出される、文字通り人智を超えた名品を指す言葉だった。
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