第11話 正当な報酬
「報酬は山分け。それでいいな?」
改めてスタンスを確認したところ、今度はクエラが反対した。ロイグとは対称的な理由で。
「待ってください。我々は逃げてきただけ。フロアボスを倒したのはランドさんだけですから……」
「馬鹿野郎! 全部俺らのもんだろうがよ!」
「ロイグ、もう黙って」
「だぁっ! くそ! 離しやがれ!」
暴れるロイグだがエースの腕を振り解けない。どうしたものか困ってる様子だったのでエースに離していいと伝える。
「ぐぇっ!? くそってめぇ……!?」
突然離したせいでロイグが派手に尻餅をつく。すぐ俺に突っかかろうとしてきたがレイとエースがそれをさせなかった。
「くっ……なんだよ……やんのか!? ぁあ?!」
もうロイグの相手は誰もしない。話を続けた。
「見つけた宝箱は5つ。俺はこの指輪をもらった。他のもそれぞれ、多分メンバーに合わせたものだ」
「これは……」
剣、鎧、杖を出して並べる。
「どれももはや神器の領域……やはりあのダンジョンは五階層にして他のダンジョンの深奥に匹敵するようですね……」
受付嬢ニィナさんが分析していた。
「いいのですか?」
「何が?」
「これは誰がどう見てもランドさんの戦利品ですから」
「いや、これで手切れにしたい」
「なるほど……そういう話ならこの件はギルドが預かりましょう」
「預かる?」
ニィナさんはいくつか書類を確認して改めてこちらに向き直った。
「これ以外にこの方々にお渡しする予定のものはありますか?」
「ああ……えっと……」
あとはミノタウロスの死体と、元々持たされていた荷物か。
荷物はエースに持たせていただけなのでその場に置く。
続けてミノタウロスを出すことにした。
「【死霊の棺】」
突如ギルドの床に四体のミノタウロスの死体が現れる。
「え?!」
「ミノタウロスは全部で五体だったから。これもきっちり山分けだ」
エースの骸以外を選んでいる。
「ほんとに……ミノタウロス……」
クエラが愕然とした表情で見つめていた。
「なるほど……大きく分けると、元々の荷物、ミノタウロスの素材、そしてフロアボス報酬ですか」
「そうなりますね」
「一つ一つ整理しますが、まず荷物については先ほどパーティーの皆さんが権利を放棄しているんですよ」
「そうなのか」
聞けばあの場所に調査を出したり荷物の回収は難しいというのがギルドの判断であり、フェイドたちとしても調査も回収も希望しないと宣言したとのことだった。
「おいおいふざけんな! 戻ってきたなら話が別だろうが!?」
「続いてミノタウロスの死体ですが」
「無視してんじゃねえぞ!?」
ロイグをチラリと睨み付けるニィナさん。
「おぉ……なんだよ?!」
思わぬ反撃だったのかロイグがたじろいだの見てニィナさんは言葉を続けた。
「この死体については間違いなくランドさんに権利があります。倒した時にはすでにパーティーメンバーではなくソロの状態でしたし、パーティーがダメージを与えていた記録も形跡もありませんから」
「ああっ!? ふざけんなよ!?」
「ロイグ……」
フェイドは俯いたままロイグを嗜めた。
ニィナさんは相手にしない。
「そして最後に、報酬についてですが。ソロでミノタウロスを倒し切ったランドさんに権利が発生します」
「なるほど……」
「ランドさんがどうしてもというなら譲ることは出来ますが、ギルドからの提案としては、ランドさんに必要なものは回収していただき、他はギルドを挟んで取引にした方が良いです」
「取引……?」
「今確認していたのが査定額だったのですが、ざっくりとした計算でもこれだけの価値があります」
見せられた数字はSランクパーティーとして活動してきた俺の、いや、パーティーの年間の稼ぎで五年分くらいになっていた。
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