第107話
「【ネクロマンス】」
──シャドーのネクロマンスに成功しました
──シャドーのネクロマンスに成功しました
──シャドーのネクロマンスに…………
『いやはや……本当にすごい方を連れてこられたのですな。お嬢様』
屋敷に残るメイドや召使たちのシャドーもみんなネクロマンスで安定化させた。
一部料理長や庭師といった特殊なゴーストもいたんだがもう一緒くただ。
おかげで俺のスキルはいますぐどっかの屋敷で使用人として活躍できそうなラインナップになっていた。
「まさか……屋敷中のお化け……えっと、アンデッドたちを?」
「一応な。形が保てなくなって成仏するのはまだいいとして、悪霊化されたら困るしな」
「すごい……やはり貴方はすごい方だ」
アイルもすっかり従順になっていた。
「あら。上手く任務ができたら戦いたいんじゃなかったかしら?」
「すみませんでした! 忘れてください……そもそもドラゴンを操って空を飛んでいる時点で……」
まあ普通はドラゴンには騎士一人で勝つもんじゃない。
アイルはうつむいたまま何かを思い出すように話しはじめた。
「魔物のスタンピード……私は当時まだろくに動けない幼子でした」
「何歳くらいだったんだ?」
『3歳の頃でしたな』
なるほど。
「気を失った私は何もできなかった。だから今度こそ、その時何もできなかった自分が変わるためにも、竜の巣の任務は重要でした」
「まあ、騎士団にいる人たちはそれなりの理由があるんだろうとは思ってたけどな……」
とはいえじゃあ譲った方が良かったかといえばそうではない。
だからといって、そこまで準備してきたものをぶつける先がないのでは、モヤモヤするという気持ちも理解はできた。
「アイルが良ければだけど、俺たちと一緒に来るか?」
「え?」
「そうね。ついて来れば竜の巣なんかより大物にその力、ぶつける機会もあるんじゃないかしら? 通用するかは置いておいて」
ミルムの挑発は照れ隠しにも見えるな。
とりあえずミルムも前向きなようでよかった。
「私は……私は何より、この家を、この土地を復興したい。そのためには騎士団で……」
「騎士団で活躍して、その功績で嫡子に相続させる権利を得る。そういう事例も確かにあるようだけれど……果たして現実的かしら?」
ドラゴンゾンビ討伐の第一功労者であれば……いやそれでも、そんな例外的な措置が取られるかはわからないな……確かに。
「一緒に来れば、この男はそのうち爵位を得るわ。しかもこのままいけば、この土地を引き継ぐことになる」
「え? そうなのか?」
拒否権とかないのか。
嫌だぞ面倒事は……と思ってロバートと目が合う。
なるほど……確かにロバートがいるなら俺は何もしなくて良いかもしれない。場合によってはそういう人たちをネクロマンスで叩き起こせば……いややめようなんか危ない思考になってる。
「あなたの目的に合う選択がどちらかなんて、考えるまでもないんじゃないかしら」
「それは……」
なんか俺が知らないうちに話がどんどん進む気がするこのままだと。
だめだ止めないと。
「えーと」
「あの! すみません……一晩、考えさせてもらってもいいでしょうか」
「良いんじゃない? あなたは? いいわよね?」
「えーと……いいよ」
拒否権はなかった。
「決まりね」
そのまま決まってしまったようだった。
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