第108話
『では、この話は一旦ここまでとして、食事になさいませんか?』
ロバートの掛け声で俺たちは食堂へと向かうことになった。
良い匂いがする。
『新たな主人様を得たことと、お嬢様の帰還を祝って、盛大に準備させていただいておりますので』
「すごいな……」
いつのまに食材を調達したんだとか、その金はどこから出てるんだとか色々疑問はあるが、ロバートなら全部なんとかしているんだろうというある種の信頼すら芽生えていた。
そしてゴーストである彼らが俺たち生者のための食事をきっちり揃えてくることも、もう疑う必要もないことだった。
『それではお食事をお楽しみください』
「本当に期待通りうまい……」
コースメニューになっていて一品一品シェフのゴーストが出てきてロバートとともに説明してくれている。
一切覚えられない。
ただ美味しい。それだけは確かだった。
「ミルムはほんとにこういう食事、様になるよなぁ」
「そうですね。気品があるというか……」
そういうアイルも生まれがいい。
騎士団って荒っぽいイメージがあったんだがアイルもキレイに食べていた。
というよりいつの間にかメイドシャドーたちに着替えさせられていたらしく、今のアイルはすっかりお姫様のようだった。
「……なにかついていますか……?」
「ああいや、悪い」
とりあえず食事に集中しよう。
それでなくともいまいちよくわからないメニュー名と礼儀作法に苦戦するのだから……。
『主様、食器は外側から一つずつでございます』
「こうか?」
『今回のメニューではナイフは使いません』
「ぐぬぬ……」
「あ……」
『いけません主様。落とした食器は我々が拾いますのでそのままで』
「なんか申し訳ないな……」
『これも今後必要な作法ゆえ、少しずつ覚えてくださいませ』
そんなこんなでロバートの指導を受けながらの食事もまあ、新鮮で良かったかもしれない。
◇
「すごいな……」
ここに来て、いや正確にはロバートと話し始めてから何度これをつぶやいたかわからない。
アイルを寝かしていたのは仮の医務室のようなところだったが、改めて自室、として通された寝室はもう圧巻の装飾品の数々だった。
一つでも普通の人の一生分の稼ぎとか平気で言われそうなものだ。
「気をつけよう……」
落ち着かない気持ちで眠りにつく……はずだったが。
「何してるんだ?」
何故かベッドには先客がいた。
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